世界から飢餓と貧困をなくすという理念にまい進したためにすき家はこけたのか…

2015年02月13日 | 日記
昨年の夏に出された「「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会」の報告書がとても面白かった。

ブラック企業とは、労働者(特に若者)をその生活が成り立たないほど長時間労働させ、使い捨てるとんでもない会社のことを言うらしいが、労基署などの取り締まり機関を強化させるといったやり方だけでは限界があること、勧善懲悪といった単純な話ではないのだということがこの報告書を読むとわかる。

すき家は結果的にブラック企業なのだけれども、倫理観の欠如した悪徳経営者が儲けのために従業員を使い捨てにしていたとも言えない。

すき家の理念は、「世界から飢餓と貧困を撲滅」である。

カモフラージュや皮肉ではないからこそ、CEO自らがこのような委員会を立ち上げる事態なったのだと思う。

報告書の中でも、(幹部経営陣は)単に営利のみを追求しているわけではなく、24時間、365日営業の社会インフラ提供という、強い使命感をもって働いているのは紛れもない事実、としている。

そのうえで、

「業界・社内の常識」が「社会の非常識」であることについての認識が欠如(人手不足が法令違反を引き起こしているにもかかわらず、危機意識が欠如)

売り上げにつながらない業務については、各自がそれぞれの立場から正論を言うだけで、 具体的なアクションにつながらない

数値に基づく収益追求と、精神論に基づく労働力投入

経営幹部に共通する意識・行動パターン(自らの成功体験にとらわれた意識・行動パターン)

と分析している。

経営幹部へのインタビューでも

今のやつらは弱い。出店の危機は今までもあった。その都度乗り越えてきた。仕事にすべてを捧げてきた、そして今がある。

といった声が多かった。

報告書を読んでいて、元ユニクロ社員が書いた本を思い出した。内容が非常に重なっている。

すき家では、過重労働で事故を複数回起こす従業員や精神を病んで辞めていく従業員が多かったそうだが、ユニクロもまさにそうだ。

すき家、ユニクロだけではなく、大手ファーストフードチェーンやファミレスなども同じようなかんじではないか。

非正規の従業員にいろんな種類の「マネジャー」という役職と責任を与えて「意欲」を引き出す方法、労働効率により休憩を取らされたり(取ったことになっていたり)労働時間をカットされたり(カットしたことになっていたり)といった賃金カットの方法…

ところで、すき家では社員の住所を正確に把握しておらず、調査に必要なアンケートを郵送したところ、367人の社員のうち、70人から住所不明で返却されたらしい。

社会的な地位が高く、清廉高潔で通っている人物が家庭では暴君で、家族みんながその人のせいで不幸である、ということがあるが、すき家も従業員がどれほど悲鳴をあげていようが、世界のインフラ整備という理念の前では、そんなもの取るに足りないものだったというのだろうか。

私はこの報告書を濱口桂一郎さんのEU労働法政策雑記帳(hamachanブログ)から行き着いたのですが、濱口さんは、ブラック企業大賞に嫌味を言っています。

すき家がこんな絶好のネタを投入してくれているのに、東京都議会なんかをぶっちぎりの第1位にして、この世の中の読めなさは何だろな~

とか言ってます。

確かに、なんで○○は入ってないんやろ~とか思う。

ところですき家ですが、私は以前、中高年のおじさんにどんぶりの中も外もつゆだくの牛丼を出されて以来、人手不足に恐れをなして、すき家どころか外食自体を控えています。インフルエンザやノロでも「這ってでも来い!」とか言われて、仕事してるかもしれないもの…
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