岩崎仁弥さんの労働時間制度の解説とてもよかったです

2022年09月27日 | 社労士
ビジネスガイド10月号の、岩崎仁弥(いわさききみや)さんの、「労働時間制度の「原則」と「例外」を考える」はすごく勉強になった。
我が国の労働時間制度はなぜわかりにくいのか?という問いを立てて、それに答える解説という形である。
問いの答えは、複数の原則と例外、特例が混在して入れ子状態になっているからです。
例えが秀逸です。
カルデラ火山の外輪山の中に複数の噴火口があるようなもので、これを様々な角度から紐解いていかないと理解できないとして、図入りで説明してます。
労働基準法の立法担当者である寺本廣作さんの「労働基準法解説」を参考にされています。
実務の上ではこういった本はすぐに役立つものでもなく、読む必要もないように思います。
でも実務というのはいつも難題に直面します。テキスト通りに行ってくれないものです。
そうなると、立法の趣旨、法改正の背景などを読み解かないと、どう進んでいいかわからなくなります。経験豊富な方や、そういった方のアドバイスを受けることができれば、その場はなんとかいきますが、実務一点張りで基本を理解していない方の戦法は破綻するのも早いのです。
寺本廣作さんは、労働時間の上限を決めるにあたって、8時間9時間など二転三転して決められず、紛糾していたときに、法は実態と乖離したものであってはならない、しかし、さればとて実態に拘泥していては進歩はならぬとして、女性こどもだけではなく、成年男子も含む全労働者を対象とした労働基準法に規定する労働時間を8時間にすることを強く主張した人です。実態は9時間労働も多く、労働者は時短など望んでいなかったし、むしろ長時間労働で賃金を稼ぎたいと思っていた時代です。敗戦直後で、働いても働いても復興に追いつかないという時代です。
苦しい時代はしかし、朝鮮戦争による特需をきっかけに好転し、高度経済成長時代に突入します。そして、オイルショック、バブル崩壊を経て、失われた10年やがて20年となり、人口減少時代を迎えました。労基法は多くの小さな改正、数回の大きな改正を経て今の複雑な形になっています。つじつまわせ、経過措置、建前主義、そういったものがないまぜになっています。
岩崎さんの解説からは、そういう点も読み取れます。
今はどこの事業所も原則の労働時間でいくなどということはまずありえず、変形労働時間制が多いです。単なる時間合わせのために変形を使っていると、窮屈でめんどうくさいだけの制度になります。
弁護士の解説ほどややこしく難解ではなく、しかし、法律の特徴をしっかりつかんでいて、社労士向けのいい解説だと思いました。

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