1923年「女教員会」の全国的拡大 (読書メモー「労働年鑑」第5集/1924年版 大原社研編)
昨年女性教員の間にできた「女教員会」は、いよいよ全国に普及した。「日本女教員会」は昨年1922年に創立され、会員は2万5千の各小学校にわたり会員を有していたが、今では全国6万の小学校に及ぼす勢いである。
(女性差別への怒り)
①某新聞の虚報記事問題
某新聞の「警視庁内で、大正11年に万引きで女性教員が368名検挙された」という根も葉もない完全なウソの記事がでた。3月8日、東京市の小学校教員会は「(女性教員への虚報記事に対する)教員臨時総会」を開催し、男女教員約2000余名が立ち上がり女性教員らの抗議演説と記事の撤回を求める総会決議を行った。
②甲府市小学校校長の差別発言
1923年 7月17日甲府市中心部に位置する甲府市立春日小学校で開催された甲府市小学校職員研修会の席上、開催校である春日小学校校長坂本増次郎が、「有夫女教員の問題、 くわし<云へば甲府市初等教育不振の膨大原因は有夫女教員が多数にある為である」 という発言を行った。さらに坂本は、「勤務能率低き有夫女教員は独身女教員を牽制して、低きレベルにまで引き下げる」だけでなく、「男教員の能率までも此の有夫女教員のレベルにまで引き下げ」ていることが、甲府市の初等教育不振の現状であると述べた。
この坂本増次郎春日小学校長の発言に対し、即座に多くの女性教員は憤慨し、7月20日午後 2時半から春日小学校第 5教室を会場として臨時「女教員会」を開催。60人余名が出席した。表向きは、「甲府市の初等教育振興に関する協議」として開催されたが,実際は坂本校長発言に対する糾弾の集まりであった。駒谷よう(穴切尋常小学校)から開会の挨拶があったあと、林かね(琢美尋常高等小学校)が座長に推薦され、女性教員個々が自分の職場の仲間たちからまとめてきた意見を発表し、最後には同市教育会に臨時教員総会の開催を要求、午後 5時に散会した。 7月 23日、女性教員の要求による甲府市立相生小学校で甲府市小学校教員総会が開催され、出席した坂本校長と女性教員との間で厳しいやり取りが続いた。また、女性教員から「託児所の設置と補助教員をおくこと」が要求された。
③男女教員の同一待遇を求める決議
11月23日「奈良県女教員大会」が開催され、この2日目に、ある一人の女性教員より、「女教員の待遇が男教員に比べ劣等なるの不合理」が強く追及され、「男女教員の待遇を同一にすること」が決議された。また12月4日「福島県喜多方女教員会打合せ会」で「男女教員待遇均一」の要求がだされた。