先輩たちのたたかい

東部労組大久保製壜支部出身
https://www.youtube.com/watch?v=0us2dlzJ5jw

平沢計七著「一つの先軀」、「大衆の力」より

2022年04月07日 07時00分00秒 | 1923年関東大震災・朝鮮人虐殺・亀戸事件など

平沢計七著「一つの先駆」表紙

平沢計七著「一つの先軀」、「大衆の力」より
(国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10297620

「大衆の力」(一幕二場)より
一幕一場
(略)

第二場
(略)

作次。(略)・・実は俺が云っとるのぢゃありません。 大衆が云っているのでさあ、労働者だとか、鉱夫だとかの大衆が云っているんでござります。ま、聞いておくんなさい。去年お前さんに逢った時分にや、この世の中と云うものは強い者が勝って、弱い者がへたばるのだ。それで世の中が進んで行く、人間が良くなるんだと思っていた。お前さんに逢ってからはなお更、お前さんに強ければこそ、こんなにまで出世をしたんだ。さうだ。俺も一番強くなって、お前さんみたいに出世をしなくっちゃならないと考えたんでさ。ところがそれから間も無く、大衆の声で、金持ちって奴は強くってなるのではない。他人の迷惑を顧みない、人を脅しつけれたり、掠奪したりする奴がなるんだ。あいつらは盗賊だっていうんでございますが、 何云っていやがるんだい、弱い犬が吠えるんだとせら笑ってみました。

常一。ふむ。

作次。しかし、何となく気がかりですから、よくよく考へて見ると、なる程、大衆は正直だ。強くたって、他人に同情してた分にや、一万圓は愚か、十圓の金持にもなれたもんじゃない。 盗賊とはうまい事を云った。早い話が、お前さんの出世の初めは、あの会計係をばらして、盗みとった金が基だ。お前さんだから、表向きは立派でも、裏では矢張り、あんな風な盗賊をやっておるに違いない。まぁ、お気に触ったら御免下さい。俺が云ってるんでなくて、大衆が云ってるんですからなぁ。ねぇ、そこで俺の人世観って奴が、今日本の国に、潮のように漲(みなぎ)り出した、大衆の叫びのために、めちゃめちゃに壞されて仕舞ったわけでさ。しかもそれ迄は、人生がどうの、どうして活きるのと考えるようなまねをしていたが、真実に考えたわけでも何でもなく、小説本か何かのなかから、人生という奴を考えていたらしかったが、真実は人間は何の為に活きているのかという事を考えたら、それは人間は、自分自身の幸幅のために活きているのだ。その為には強くなくっちゃならない。だが、強くなるという事は、他人を圧迫したり掠奪したりする事でなくて、人間の幸福を妨害する、他人を圧迫したり掠奪したりする、その悪い野郎をやっつける事だと考えたんでさ。思って見れば、これ迄人世観が違っていたため、人間全体の為に随分、よくない事をして来た。俺は今、その犯した罪に苦しんでいるでさあ。この苦痛からのがれる途は外にない、人間が幸福になる為の、新らしい土地を築きあげる為に、悪い沼の埋草になる事でござんす。実は、その御相談に、今晩お伺いしましたようなわけで、へい。

(略)

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平沢計七(国会図書館デジタルコレクション)

「一人と千三百人」  平沢計七 著 (昭文堂, 1926)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1019871

「一人と千三百人」
目次
「石炭焚」
「赤毛の子」
「孝行」
「金貨の音」
「死」
「ご主人様」
「工場法」
「暴風雨の前」
「社会劇 牢から出た男」
「戯曲 一人と千三百人」


「一つの先軀」内務省検閲発禁図書 平澤計七 箸 (玄文社, 1924)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10297620

「一つの先軀」
序文 菊池寛
著者伝 中西伊之助
作品
「突破」
「先駆」
「亡霊」
「大衆の力」
「失業」
「悪魔」
「投獄前」
「二老人」
「暁の鐘」
「苦闘」



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