ぼくのこれから
あなたのこれからとは、ぜんぜんちがうだろう
ぼくのいままでと、あなたのいままでがそうだったように
明るくしていよう
毎日、笑い声を、もっと
ぼくはあなたに、なにもしてやれなかった
ぼくはあなたのことを、少しずつ奪いながら生きてきた男だ
ふと、スタジオで足が止まったよ
フラッシュバック なんていうのかな
それから夕方の画廊で、話を聞いて
まるでぼくがそこにいないかのように、二人で熱心に話しこんでいるグループの
その話を、聞いていただけだよ
あなたのこれからは、ぜんぜんちがうだろうね
日が暮れた坂道を、そんなこと思いながら歩くのは、少しだけつらかった
まるで、知らない人になってゆく と思っているから
あなたには笑顔がいっとう似合っているからね
そこがいいところだから
忘れないでください
あ、あ、もっと、あのとき、ここで、こういうふうにすればよかった
とか、余計に思い出して、つらい
つらいなんて、幸せになろうとしている人を見て言う言葉じゃないんだから
ぼくがどっかオカシイんだな。それはわかる。
でもどうしようもないんだな。つらい、つらい。
景色は、けっこう覚えているものなんだな。
思い出の、最後の部分はたいてい夜。
その景色を取りに戻ろうとすると、胸の真ん中がギュっとなる。
そのなんともいえない苦しい気分が、嫌んなったんだろう
今日はやけに人に、話しかけたよ。人のたくさんいるところに出て
夜が忍び込む前に、逃げるようにして帰ったさ。
夜を忍び込ませまいとしたが、すこしくっついてきたようだ。
だからいまこれ、こうして書いているの。
いまこれ、こうして書いているの。