今月も歌舞伎の観劇に行ってきた、今回は夜の部、いつもは昼の部なのだが、今月は夜の部に玉三郎の阿古屋があるので是非観ようと思い、夜の部とした、4時30分開演、8時40分終演、満席の盛況だった、玉三郎、勘九郎、七之助、今年5月に菊五郎の襲名が予定されている菊之助ら多くの人気俳優の出演があったからか、座席はいつもの3階A席
猿若祭は昨年も観に来たが(こちら)、初世猿若勘三郎が江戸で初めて歌舞伎を始めた伝説を記念する興行、昭和51年を最初に折節開かれ、今回が6度目で2年続きの開催、初世勘三郎は江戸で初めて幕府の許可を得て櫓をあげ猿若座(後の中村座)を作った、猿若勘三郎はその後中村勘三郎を襲名し中村勘三郎家の祖となる
一、壇浦兜軍記 阿古屋
遊君阿古屋/ 玉三郎
岩永左衛門/ 種之助(1993、播磨屋、中村又五郎次男)
榛沢六郎/ 菊市郎(1970、音羽屋)
秩父庄司重忠/菊之助
平家滅亡後、平家の武将景清の行方詮議のために引き出されたのは景清の愛人、遊君阿古屋、景清の所在を知らないという阿古屋に対し、岩永左衛門は拷問にかけようとするが、詮議の指揮を執る秩父庄司重忠が用意させたのは、琴、三味線、胡弓、言葉に偽りがあれば音色が乱れるはずだと、3曲の演奏を命じられた阿古屋は・・・
(感想)
- 玉三郎の阿古屋を観るのは2回目だが、数年に一回しか上演されないので、もう今回が見納めになるかもしれないと思い、しっかりと目に焼き付けようと思って観劇した、というのも玉三郎の年令(74才)もあるが、2018年12月の歌舞伎座公演で中村梅枝(現時蔵)と中村児太郎が初めて阿古屋役に挑戦し、松竹も世代交代を図っていると思われるからだ
- さて、この物語で阿古屋は本当に景清の所在を知らなかったのか、物語の筋からしたら知っていたがうまい演技で隠し通した素晴らしい遊女ということになろうが、そこは曖昧である、また、詮議する重忠は阿古屋が本当に知らないと思ったのか、阿古屋の健気な対応を見て、見て見ぬふりをしたのか、そこもはっきりしない、この曖昧さが良いのでしょう
- 菊之助の重忠は適役だと思った、知性と品位がありそうな重忠、拷問ではなく琴などの演奏をさせて音色の乱れで知っているかどうか判断するという粋な発想、こういう役こそ菊之助に一番似合った役だと思った
- この阿古屋で最初は竹本連中の三味線と唄が演奏され、途中から長唄の二人が加わった、その長唄の唄い方が杵屋勝四郎だったのでうれしくなった、ユーモアあり、多芸で私と同年代の勝四郎には頑張ってもらいたい
二、江島生島 長谷川時雨 作
生島新五郎/菊之助
旅商人/萬太郎(1989、萬家、萬壽次男)
中臈江島、江島似の海女/七之助
江戸時代に大奥を揺るがした衝撃的な事件を題材とした叙情味あふれる舞踊、三宅島の海辺に佇むのは、もとは山村座の歌舞伎役者であった生島新五郎、江戸城大奥の中臈江島と恋仲になり、それぞれ流罪となり離れ離れに、生島は江島との逢瀬を忘れられずその面影を求めて彷徨う・・・
(感想)
- 最初の舞台演出が素晴らしいと思った、夜に舟をこぐ江島と乗っている新五郎、その部分だけに照明が当たり周りは暗い、右手には長唄連中が横一列にずらりと並ぶが、こちらは江島生島よりさらに薄暗く、かすかに見えるくらいの照明が当たり幻想的な雰囲気を出していた、非常にうまい演出だと思った
- 江島生島の美男美女の組み合わせだが、前半の場面では七之助の江島がそれほど美人に見えなかった、歴代のしきたりを守って顔を作っていると思うが、どうも現代人の感覚とはかなり違っていると思った、ただ、後半の三宅島での海女を演じた七之助は美人にできていた、好みの問題かもしれないが
三、人情噺文七元結(にんじょうばなし ぶんしちもっとい)三遊亭円朝 口演、榎戸賢治 作
左官長兵衛/勘九郎
女房お兼/七之助
長兵衛娘お久/勘太郎(2011、中村屋、勘九郎長男)
手代文七/鶴松(1995、中村屋)
小じょくお豆/秀乃介(2018、播磨屋、歌昇次男)
遣手おかく/歌女之丞(かめのじょう、1955、成駒屋)
家主甚八/市蔵(1958、松島屋)
鳶頭伊兵衛/松緑(1975、音羽屋)
和泉屋清兵衛/芝翫
角海老女将お駒/萬壽(1955、萬家)
もとは落語、笑いあり涙ありの世話物
左官の長兵衛(勘九郎)は腕の立つ職人だが、大の博打好きで、女房のお兼(七之助)とは喧嘩が絶えない、そんな家の苦境を見かねた娘のお久(勘太郎)は、吉原に身を売ることを決意、この孝心に胸を打たれた角海老の女将お駒(萬壽)は、50両の金を長兵衛に貸し与える、娘の思いとお駒の情けに心を入れ替えることを誓う長兵衛だったが、帰り道、身投げをしようとしている若者、文七(鶴松)と出会うと・・・
タイトルから文七が主人公のように思うが、実は主人公は左官屋の長兵衛である
(感想)
- 悪者が一人も出ない世話物だとイヤホンガイドで説明していたが、肩の凝らない人情物語と言う感じであった
- 七之助演ずる長兵衛の女房お兼が良かった、長兵衛との喧嘩、和泉屋清兵衛が来てからのおどけた演技など勘九郎顔負けの熱演ぶりに驚いた
- 鶴松の文七も良い演技をしていた、特に最初の大川端での身投げをせんばかりの演技、長兵衛とのやり取りなどが真に迫っていてよかった
- 最後に出てきた和泉屋清兵衛役の芝翫だが、ちょっと太ったのではないか思った、ずいぶん顔つきがふくよかになったものだ、よく言えば貫禄だけど、むくんでいるようにも見えた、そうだとすれば夜遊びが過ぎたのか・・・
さて、今日の幕間の食事は、いつものとおり銀座三越の地下の弁当売場で日本橋弁松の弁当を求めた、歌舞伎観劇時の弁当の定番でしょう、おいしかった
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