9月下旬の3連休の初日、江東区のティアラこうとうで開催された第78回ティアラこうとう定期演奏会を観に行ってきた、1階S席3,500円、チケットは完売とのこと、値段が安いこともあるだろう、区が補助金を出して安くしているのでしょうか、ここは初訪問、開演15時、終演17時10分、中高年の観客が多かった
出演
指揮:出口大地
ヴァイオリン:中野りな
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
演目
ハチャトゥリアン:バレエ音楽「スパルタクス」より「ガディスの娘の踊り~スパルタクスの勝利」(7分)
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35(33分)
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 作品47(45分)
指揮者の出口大地は、大阪府生まれ、 関西学院大学法学部卒業後、東京音楽大学作曲指揮専攻卒業、2023年3月ハンスアイスラー音楽大学ベルリンオーケストラ指揮科修士課程修了、第17回ハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門にて日本人初の優勝、クーセヴィツキー国際指揮者コンクール最高位及びオーケストラ特別賞、大学が法学部卒業というのが面白い
バイオリンの中野りなは、2004年生まれ、東京都出身、3歳よりヴァイオリンを始め、桐朋女子高等学校音楽科を卒業後、2023年9月からはウィーン市立芸術大学に在学、2021年第90回日本音楽コンクール優勝、2022年第8回仙台国際音楽コンクールにおいて、史上最年少の17歳で優勝、まだ20才というのがすごい
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
音楽評論家の増田良介氏のネット記事「チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は年下青年との恋から生まれた!?」を読むと、この作品が誕生した背景には、12歳年下の教え子の青年コーテクとの熱い恋が関係していた、たった1年のあいだに、コーテクとの破局、女性との結婚、短期間で離婚、そしてコーテクとの再会を果たし、それをきっかけにヴァイオリン協奏曲の作曲を思いつき、25日という短期間で書き上げたのがこのヴァイオリン協奏曲である、どうしてそんなに急いで作曲しだしたのかは謎であるが、コーテクが持ってきたラロのスペイン交響曲がきっかけになったと言われている
本日もらったプログラムによれば、コーテクが持ってきたラロの「バイオリン協奏曲」(1874年初演・出版)から多大な刺激を受け、自分もぜひヴァイオリン協奏曲を描いてみたいと発奮して仕上げた、と書いてある
この曲は、昨年8月にテレビで読響とヴァイオリン荒井里桜との共演を見てブログを書いたところだった、その時のブログから曲の説明部分を引用してみると
「この曲は作曲当時著名なバイオリニスト、レオポルト・アウアーに初演を依頼したところ、演奏不可能と拒絶された曲だ。宇野功芳氏によれば、初演時に高名な批判家ハンスリックは「悪臭を放つ音楽」と酷評した、ロシアの家畜小屋のわらの匂いがするというわけである、保守的で気品が高いウィーンの聴衆にも同じような印象を与えたはずた、とした上で、確かに上品さや高貴さには欠けるが、ロシアの雪景色が眼前に彷彿とするような第二楽章や、両端楽章もドイツ音楽には見られぬものだ、と述べている。」、これと同じことが本日もらったプログラムにも書いてあった
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 作品47(45分)
この曲は、昨年11月に東京芸術劇場で開催された東京都交響楽団 第986回定期演奏会でジョン・アクセルロッド(米、57)指揮の演奏を聴いたところだ、曲の説明だけそのブログから引用してみると
「交響曲第5番は、ソ連によって歌劇『ムツェンスク郡のマクベス夫人』が厳しく批判され、絶体絶命の危機に陥った時に作曲した曲だ。ベートーヴェン風の「苦悩から歓喜へ」という明快な構成、輝かしいフィナーレで終わるこの曲の初演は大成功、危機を脱した。指揮したムラヴィンスキーは、このときが彼との初めての出会いだったが、以後、多くの作品の初演指揮を任せられた。彼の存命中は、社会主義の闘争と勝利を描いている曲と思われていたが、その後、実は彼がこの曲にスターリンに対する批判を込めたという考え方が広まった」、これも本日もらったプログラムに同じ説明が書いてあった
さて、本日鑑賞した感想を書いてみたい
- 今日の眼目は何といってもヴァイオリニストの中野りなだ、彼女の演奏を聴くのは3回目である、過去2回の彼女の演奏を聴いてすっかり彼女のファンになったので、また彼女の演奏を聴けるのを楽しみにしていた
- 今日の彼女は、赤いドレスを着飾りステージに登場した、そして、完成当時、難しくて演奏できないと言われたチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を見事なテクニックで演奏してくれた、技術的なことはわからないが、私には完璧な演奏に聞こえた
- 彼女の演奏している姿を見ると、曲に合わせて体を前後左右に振り、優雅にリズムをとって弾いているように見える、まるで蝶が舞うようだ、髪をアップにし、清楚な感じのイメージを出し、上品に、かつ、優雅に舞うようにヴァイオリンを弾く、素晴らしい演奏姿だと思った
- 演奏後、アンコールの拍手に答えて、小さな声で曲目を紹介したが聴きとれず、なんという曲かわからないが(その後、東京シティ・フィルのwebページで、パガニーニ作曲24のカプリースより第5番イ短調と知る)、非常にテクニックが要求される難しい曲を演奏してくれた、これはこれで素晴らしかったが、ヴァイオリン協奏曲が派手な終わり方をして観客の興奮度がマックスになった後なので、むしろ、観客の気分の高まりを抑えるような静かな曲を演奏してくれた方が組み合わせの妙があって良かったのではと思った
- ショスタコーヴィチの5番は、いろんな楽器を使って演奏がされるところが面白いと思った、バスドラム、スネアドラム、タムタム、グロッケンシュピール、シロフォン、チェレスタなど、楽器名を聞いただけではどんな形をして、どんな音が出るかわからない楽器が多く使われていた、ただ、舞台左側のピアノの蓋の陰に隠れていた部分が多く、演奏する姿がよく見えなかった楽器があったのは残念だった、左側の座席だったから仕方ない
- 今日の公演では、チャイコフスキーもショスタコーヴィチもフィナーレが派手な終わり方をするので、最後に演奏が終了すると、間髪を入れず、あるいは若干フライングして拍手をする御仁が私の後方にいたのには閉口した、ロックコンサートではないので、やはり、派手に終わる曲でも若干の余韻を楽しむ心の余裕が欲しいものだ
- このホールは初訪問だが、ホール内は特にステージはずいぶん上品なデザインであったと感じた、正式名称は江東公会堂であり、クラシック公演だけでなく、歌謡曲の公演、子供のファミリーコンサートなどいろんなことに使われているようだが、そのような公共的性格を持つホールはN●Kホールのように、まるで学校の体育館の舞台のような殺風景なものになりがちだが、ここは非常にセンスの良い舞台であった、写真を撮れなかったのが残念だ
- 写真撮影は演奏開始前でも終了後のカーテンコール時も禁止であったのは残念だ、東京シティ・フィルの方針なのか、ホールの方針なのか、サービス精神がもう少しあっても良いと思う
良い演奏会でした
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