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六月大歌舞伎(昼の部)を観に行く

2024年06月07日 | 歌舞伎

六月大歌舞伎(昼の部)を観に行った、いつもの3階A席、今日は前から4列目、ほぼ中央、6,000円、3階席はそれほど混んでいなかった。

六月大歌舞伎では、萬家三代同時襲名が行われる。中村時蔵(69)が初代中村萬壽を、時蔵の長男・中村梅枝(36)が六代目時蔵を、梅枝の長男・小川大晴(8)が五代目梅枝を襲名する。三代揃っての襲名披露は2018年の高麗屋以来だ。

また、中村獅童(51)の長男・小川陽喜(6)が初代中村陽喜、次男・小川夏幹(3)が初代中村夏幹として初舞台を踏む。なお、萬壽と獅童とは兄弟である。

萬家一門、小川家勢揃いの襲名披露公演となった。


(千住博画伯の絵による襲名披露お祝いの緞帳、滝をイメージ、左側には萬壽、時蔵、梅枝とある)

ここで襲名とは、名跡を譲り受けることだが、これは単に名前を引き継ぐだけでなく、芸の格、芸風も引き継ぐことを意味する、また、初舞台とは、今まで子供役で出演していたものが芸名を襲名し、その襲名後の初舞台を言い、襲名前に初めて舞台に上がるのは「初お目見え」と言い、初舞台とは区別している。

時蔵は、「私は昭和56年から時蔵を名のって43年になります」というからすごいものだ、その名跡を長男の梅枝に譲り、自分は萬壽を名乗るが、「時蔵家は十干十二支に思い入れがあり、また萬壽元年は(干支の一番目である)甲子に当たります。萬壽の名を一から築いていこう、また一から自分の芸を見つめ直そうと思ってこの名にしました」と話している。縁起のいい、おめでたい名前で非常に良いと思った。

一、上州土産百両首

川村花菱 作、齋藤雅文 演出

正太郎: 獅童
牙次郎: 菊之助
宇兵衛娘おそで:米吉
みぐるみ三次:隼人
亭主宇兵衛:錦吾
金的の与一(正太郎の親分):錦之助
隼の勘次(牙次郎):歌六
勘次女房おせき:萬次郎

めったに演じられることがなかった世話物、幼馴染の二人、兄貴分の正太郎(獅童)は板前のいい腕を持ちながらすりの子分をやっていた、牙次郎(菊之助) もまた空き巣狙いやかっぱらいなどをして暮らしていた。その二人は偶然再会するが、互いの懐から財布を抜き取ってすりを働いてしまったことを嘆く。互いに堅気となって真面目に生きようと誓い合うと、二人は美しい月夜に照らされた浅草・聖天様の森で10年後の再会を約束する。弟のように慕う牙次郎を思い、板前としてこつこつと働いて金を蓄えていた正太郎だが、ある日、昔のスリ仲間の三次(隼人)から強請られると・・・、

一方の牙次郎も心を入れ替え岡っ引きとして働いているが、ドジな性分は変わらず、成果を上げられずにいる。そして、二人は月夜に照らされた運命の日を迎えるがとんだ形で再開することになる・・・

米国の作家オー・ヘンリーの短編小説『二十年後』を下敷きに、劇作家の川村花菱が相手を思う気持ちを丹念に描き、昭和8(1933)年に初演。

  • 正太郎と牙次郎が偶然出会い、10年後の再開を誓い合った場所は、浅草の待乳山聖天である、この待乳山聖天だが、私も偶然、今年の春に初訪問した。それは川向こうの長命寺の桜餅を買いに行った帰りに、桜橋を渡ってぶらぶら歩いていたらその正面に見えてきたのだ
  • 正太郎役の獅童は良い演技をしていたと思う、一方、牙次郎役の菊之助だが、菊之助のイメージにあまり合わない役だと思った、牙次郎はダメ男であり、失敗ばかりして周りからもバカにされるような役柄である、菊之助はイケメン役か、上級武士や豪商のバカ息子役のほうがお似合いだと思った。もちろん、芸の幅を広げるという意味で、どんな役にも挑戦して、うまく演じられるようになることを目指していると思うが。
  • 三次から200両をたかられ、口論の末、ついに殺してしまう、その200両がどうなったのかわからなかった、というのも江戸でお尋ね者になり捕えれば100両の懸賞金が出るとのお触れが出て、牙次郎に手柄を立てさせるためわざと捕まろうとするからだ、200両は三次から取り戻し、それを牙次郎にあげるだけではダメだと思ったのか、その辺がわからなかった

二、義経千本桜 所作事 時鳥花有里

源義経:又五郎
鷲尾三郎(家臣):染五郎
傀儡師種吉:種之助
白拍子伏屋:左近
白拍子帚木:児太郎
白拍子園原:米吉
白拍子三芳野:孝太郎

源平合戦で功績を上げながらも、兄の頼朝から謀反の疑いをかけられ、都落ちする源義経。義経と家臣の鷲尾三郎が道中で出会った白拍子と傀儡師は、義経主従の旅の慰めに芸を披露するが、その正体は実は神の化身で、「川連法眼館へ向かえ」との神託を受ける

千本桜から生まれた華やかな舞踊、義経主従が河内から龍田を抜けて大和へ向かう様子を長唄の舞踊で描いたもの

  • 義経千本桜の道行きは、「道行初音旅」(吉野山)が有名だが、それ以外にもいろんな道行き物が作られた、今日の演目もそのうちの一つ
  • 義経千本桜は義経が題名に入っているのに義経が主人公でない場面が多い、この所作事は珍しく義経が主役となっている
  • 白拍子園原の米吉はきれいだった、上州土産百両首の米吉も美しかった、若手女形では一番好きな俳優だ、今後も頑張ってほしい

六代目中村時蔵 襲名披露狂言

三、妹背山婦女庭訓、三笠山御殿、劇中にて襲名口上申し上げ候

杉酒屋娘お三輪:梅枝改め時蔵
漁師鱶七実は金輪五郎今国:松緑
入鹿妹橘姫:七之助
おむらの娘おひろ:初舞台梅枝
官女桐の局:隼人
官女菊の局:種之助
官女芦の局:萬太郎
官女萩の局:歌昇
官女桂の局:獅童
官女柏の局:錦之助
官女桜の局:又五郎
官女梅の局:歌六
烏帽子折求女実は藤原淡海:時蔵改め萬壽
豆腐買おむら:仁左衛門

大化の改新を素材とした『妹背山婦女庭訓』。ドラマチックな展開の「三笠山御殿」は、恋人を思うお三輪の切なく情熱的な恋心が胸を打つ作品。

権勢を誇る蘇我入鹿の三笠山御殿へ、入鹿の妹の橘姫(七之助)が戻ってくる。橘姫の振袖に赤い糸をつけて後を追いかけて来た恋人の求女(もとめ、萬壽、女のような名前だが男)が現れると、二人は御殿の中へ、そこへ、求女を追ってやって来たのは、杉酒屋の娘お三輪(時蔵)。恋い慕う求女の裾につけた苧環の白い糸が切れてしまい途方に暮れるお三輪は、通りかかった豆腐買おむら(仁左衛門)にその行方を尋ねる。すると、これから橘姫と求女が祝言を挙げるとのこと。御殿の中へ急ぐお三輪だったが、橘姫の官女に弄ばれた挙句、聞こえてきたのは祝言を祝う声。嫉妬に狂い、凄まじい形相となったお三輪が中へ押し入ろうとすると、漁師鱶七(松緑)が立ちはだかり・・・

  • この演目は昨年の10月国立劇場のさよなら公演で観た(その時のブログはこちら)。その時は、主役のお三輪は菊之助だった。今回は襲名披露をした新時蔵である、この新時蔵は国立劇場の時は求女を演じており、なかなかよかったが、今回のお三輪も大変よかった、主役にふさわしい演技だった
  • 漁師鱶七実の松緑もよかった、松緑はこういう役がピッタリだと思う、昨年、彼が演じた土蜘蛛を観たが(その時のブログはこちら)、これも松緑にお似合いの役だと思ったが、今回の鱶七実も実にお似合いの役だと思った、ひと癖ある役が良いということかもしれない
  • この演目中に襲名披露口上があった、口上には昼の部の座頭格の仁左衛門が新時蔵と新梅枝の二人を従えて行われたが、萬壽はなぜか口上には顔を見せなかった、なぜなのだろうと思ったが、これは昼の部では時蔵の襲名披露、夜の部では萬壽の襲名披露がなされるということのようだ
  • 初舞台の梅枝はちゃんとあいさつ出来て可愛かった
  • 橘姫の七之助は美しかった、同じ女形でも新時蔵と七之助では別の良さがあり、それぞれ適役も異なると思うし、それでいいと思う、そういう意味で今回の配役は適切だと思った

さて、今日の幕間の昼食だが、いつものとおり銀座三越の地下に行き、弁当は崎陽軒の「炒飯弁当」980円にした、甘味はいつもの京都仙太郎の「みなずき黒」250円にした。いずれもおいしかった

いい一日でした

 



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