映画「パーフェクトデイズ」を観た。これで二度目である。「二回目を観たい」と思う映画は数多くあるけど、実際に映画館で「二回目を観た」映画というのは余り記憶にない。少なくとも、ここ15年では初めてだと思う。「パーフェクトデイズ」は、ヴィム・ヴェンダース が監督を務め、役所広司が主演した作品だ。ヴィム・ヴェンダースは僕の大好きな映画「パリ・テキサス」の監督であり、相性が悪かろうはずもない。ストーリーを追うことに意味がある映画ではないが、大体次のような話だ。
東京でトイレ清掃員として働く中年の男、平山(役所広司)。彼は木造の質素なアパートに殆ど物を持たず一人で暮らしている。その生活は大体において同じルーティンの繰り返しだ。早朝、近所のお寺の竹ぼうきの音で目覚め、布団を畳んで身支度をする。育てている植物に霧吹きで水を掛ける。家の前で缶コーヒーを買うと、軽ワゴン車に乗り込む。車内でカセットテープの古い音楽を聴きながら仕事場に向かう。清掃員として担当する都心のトイレ清掃を行う。彼は無口で黙々と、かつ丁寧に仕事をする。嫌々やっているのではなく、仕事に打ち込んでいる。何故という理由はないと思う。それが彼のやり方だ。休憩時間には樹々の枝葉が作る影の動きを、毎日フィルムカメラで撮影する。仕事が終わるとアパートに戻る。銭湯に行き、大抵は一番風呂に入る。その後、一杯飲み屋でささやかな食事をする。家に戻ると本を読み、眠くなったら寝る。以下、次の日も同じである。週末は仕事の代わりに、アパートの部屋を綺麗に掃除し、コインランドリーで洗濯をし、フィルム写真の選別をする。そして古本屋で文庫本を買う。週末の夜だけは小綺麗な料理屋で酒を飲む。料理屋のママは色っぽい石川さゆりであり、少しだけ鼻の下を伸ばす。平山は偉人でもなければ、何か大きなことを起こすわけでもなく、同じような日々を送っている。それでも生きていれば時折、心に波紋を起こす出来事もある。仕事場の後輩を巡る小事件、家出してきた姪っ子との交流とその母(平山の妹)との関係、料理屋のママの元旦那とのひと時。ネタバレになるのでこれ以上は書きません。無口で殆ど喋らない平山にも感情もあれば、過去だってある。それなりの影だってあるだろう。それでも彼は周囲の人との小さな触れあいの中で生きている。今日もまた新しい、いつも通りの一日が始まっていく。
という訳で、大きな事件もなければ、平山の人生が語られるわけでもないし、謎が解明されたり、新しい発見がある訳でもない。結局のところ、それが我々の人生でもある。平山の姿は、どんな人間にとっても「もう一人の自分」そのものになり得ると思う。「もう一人の自分」とまではいかなくても、「自分のある一部分」を具現化した人生であることを否定できる人は少ないだろう。二回目の上映を観た時、時間が流れるように進んだ。というより時間の流れそのものを意識しなかった。映画を観ているというより、その空間のなかに紛れ込んでいるような感覚があった。3回目を観れば、きっとその感覚は更に進化するだろう。5回目くらいになれば、僕は映画のどこかに登場しているかもしれない。そんな不思議な没入感は初めての経験だった。出来れば、もう一度観たいと思う。
iPhone 13PRO
どちらをみるか迷ったんですよー
機会があれば観てみます!!
そして受賞作品 映像美もあるのでしょう
誰かの人生に重なる それが6さんの陰影かな?
まだ 見ていない映画ですが 文章表現も素晴らしく
見てみたい の気持ちに惹きこまれます
そのコメントのために自身を映り込ませたのか、あるいは画像を確認したら写っていたのでテキストを思いついたのか……。
いずれにせよ単なるポスターと思わせて、写真と文章がマッチしている作品だと感じました。
やはり、もう一度見ないといけませんね。
そしてもう一度、6x6さんがおっしゃる通りです。
不思議な時間が流れること間違いないと思います。
僕は3度目、行くつもりです、
実際、僕も平凡かもしれませんが、平穏ではありません。
この映画の主人公も同様なのかもと思っております。
監督は小津安二郎の影響を多大に受けているそうです。
深く重なったり、浅かったり、偶然だったり、必然だったり。ドイツ人監督がこういう人生の綾を描くのには驚きます。
決して飽きることはない映画です。機会があれば是非!
間抜け面、緩みきった態度で写っていました。
それをやっつけ仕事で編集した画像を載せるつもりが、間違えました。
出たかったのかも。でもまだ早いと思っております(笑)。
是非2度目を観て、どう感じるか知りたいです。
映画の完成度とか、クオリティではこれより素晴らしい映画は幾つもありますが、これほど「もう一度観たい」と思った映画はありません。
二度目を観ても変わらないのは驚きです。3回目、行きたいです。ミニシアターでの上映、続いてほしいです。