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インドの「鶴の恩返し」

2023-05-20 20:36:47 | 日記
今回はインドの実話を取り上げたい。今年になって、国内外で報道されていたニュースで知ったのだが、この感動的な事実に目を覚まされた思いだ。下記のアドレスをご覧になると、この童話のような出来事が現実の世界で起きたことをまざまざと確認できる。


https://m.youtube.com/watch?v=xedvSLAQmF4&pp=ygUZ44Kk44Oz44OJIOm2tOOBruaBqei_lOOBlw%3D%3D

https://m.youtube.com/watch?v=CPwyjckwO34


「鶴の恩返し」は日本の昔話として大変有名であるが、そこでは貧しくとも心優しき老夫婦が、助けた鶴に犠牲的な恩返しをされる。一方、この現代インドのオオヅルは脚の怪我を親切に看病して治してくれた男性に対し、無限に近い感謝の念を注ぎ続けている。昔話が実話の可能性は低いが、それでも案外この物語の作者も、現代人と比べれば大自然に触れる機会も多かったゆえ、自明の理として今のインド人の男性のように動物の気高さを承知していたのではないか。

この鳥と人のインド亜大陸での邂逅は、荒ぶる人災の影響で激しく痛みだした地球の未来に希望の光を灯している。鶴を助けた男性は、自身の行為を人間としての義務を果たしただけだと言った。この言葉は尊い。ここで彼が定義した人間の義務とは、自然を破壊するのではなく、人間も自然の中に在り、その構成員であることを自覚して、弱っている他の生物を救助する役割を果たすことであろう。それも人間の優れた資質や能力を活かす形でだ。この鶴を助けた男性のように。そしてもし仮に怪我をした鶴が彼と出会わなければ、傷の状態は悪化して死んでいたと思われる。

自然界における人間以外の生物は、過酷な弱肉強食の世界に身を置いている。しかしこの鶴を見ると、その厳しい運命や宿命を越えるほどの幸福な奇跡が起きたなら、それを拒ばないことが理解できる。つまり人間は人間以外の生物に対して、奇跡的な振る舞いが可能なのだ。これはやはり人類が文明を興せるほど高度で超越的な力を有するからである。ところが人類の歴史を振り返れば、その超越的な力は、残念ながら悪用されてきた罪業も否定できない。特に乱開発による環境破壊や、戦争を想定した核実験など、例を挙げればもうキリが無い程である。

しかしながらこの鶴を助けて救った男性の行動こそ、本来あるべき人間の姿なのではないか。そして人間以外の生物が人間よりもはるかに優れている点は、自制ができるということだ。それゆえ彼らは自然環境を破壊しないし、他の種を絶滅するような暴挙にでることはない。要は弱肉強食をエスカレートさせることが自滅に繋がることを本能で知っているのだ。ここは私たち人類が肝に銘じて、彼らから積極的に学ぶべき点だ。これと比較すると弱肉強食を美化したり、弱者が強者に滅ぼされる構図を肯定して、力こそが正義だと盲信する人間は真に愚かしい。明らかに他の生物よりも劣っており、彼らから学び直す必要がある。特に現在進行形の地球の危機は、自制できずに文明を暴走させ続けてきた人類の責任によるところが非常に大きい。これではまるで人類は自制という、幸福な未来の扉を開ける希少な鍵を自ら捨てているようなものである。

以前にこのブログで紫陽花を取り上げたことがあった。あの時は長寿の愛猫の話がメインになったが、家族として一緒に動物と暮らすと、人間への崇高なまでの信頼感に包まれる。彼らは人間が核兵器でこの地球を何回も滅亡させる力を持ってしまったことなど知る由もないが、人に優しくされた動物たちは、逆にこの地球の惨状を人類が立て直し再生できることを、ただ人を信じることだけで、その直感で認知や理解に到達しているように思われる。

だから私たち人間はもう万物の霊長のように振る舞うのではなく、今こそ自然を破壊せず、むしろ自然に仕える姿勢で臨むべきであろう。そして人間も自然の一部だと再認識し、文明の利器もその方向で役立てていくべきなのだ。このインドの男性が鶴の傷を治す為に使用した薬は動物には作れないものだし、医療の進歩の賜物である。また男性が鶴を治療する姿からは、全ての生物に共通する親が子を守るような慈しみが感じられる。この実話で、鶴が人に恩を返してくれたとしたら、それは私たち人間の地球における存在価値を確りと認めてくれたことだ。特にバイクを運転する男性の後ろから、寄り添うように飛んで後を追う鶴の姿からそれを強く感じる。

残念なことに今、この鶴は男性から離されて動物園に保護されてしまった。ただそれでも男性と再会した様子には歓喜が溢れている。インドの法律ではオオヅルの餌付けが禁止されている為、大空を飛ぶ権利を剥奪された鶴の心情を推し量るなら、空を自由自在に飛ぶこともできた、あの共同生活に戻りたいのは間違いない。また男性も当然それを強く望んでいる。ネットで動画が公開されたことで、彼らの絆に感動し、再び結びつけようとする有志の人々も現れた。1日も早くこの鶴と人との共生の復活を願うばかりである。

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