毎日テレビでも新聞でも「アベノミクス」のことを聞かない日はないくらいだけど、
どこまでその内容を理解しているかってことになると案外わかってなかったりする
ものですよね。もう少しきちんと整理して「アベノミクス」について理解して
おきたいと思う方には最適な一冊だと思います。
この書籍では、まず「デフレの原因を探る」というところからスタートしていきます。
そしてなぜデフレが悪いのか、生活にどういう影響を及ぼすのか、具体的に小気味よく
理解できます。
デフレの怖さは「抜け出せなくなること」であるいい、デフレにならないためにアメリカや
EU諸国は徹底した金融緩和を行い、デフレを回避したこと。先進国でデフレに陥っている
のは日本だけであることが指摘されます。その意味で、アベノミクスは目新しい政策では
なく、海外ではあたり前のこととして行われてきたことだと指摘しています。
次に「アベノミクスは何を狙っているのか」ということが理解できます。
・大胆な金融政策
・機動的な財政政策
・民間投資を換気する成長戦略
この3つの政策を称して3本の矢とよく言われますが、実は「金融緩和」とか言っても、具体的に
何をどうするのか、よく理解できていませんよね (^_^;) 。とてもスッキリわかります。
そして最後に「2~3年でデフレが終わり、日本経済は復活します」というシナリオが語られ
ます。こちらも明確にわかるし、気持ちも明るくなります。株式はもうこの「気持ち」の部分
だけで復活してしまいましたよね。
企業の業績はいつ向上していくのか。私たちの給料はいつ増えるのか。こういったことにも
具体的な期日を示して、小気味よくわからせてくれます。上記の給料の質問にも、まず増える
のは残業、次がボーナス。最後に増えるのは基本給とのことで、具体的な期日が示されています。
財政再建のためにもデフレ脱却が必要で、アベノミクスをさらに加速させることが重要だと
しめくくられています。
最初にも書きましたけど、アベノミクスを短時間で、整理して理解したい人には最適な一冊だと
思います。経営者や企業幹部の方は、アベノミクスの内容や狙いが、「よくわかりません」では
済まされないでしょうから、そういう人は必読 ( ´ ▽ ` )ノ 。
全編、ほぼアベノミクス讃歌って感じです。「なぜアベノミクスに反対の意見がでるのか」という
ことで、反対意見も取り上げられているし、「完全ではない」ということもおっしゃられている
けど、それでもアベノミクスは必要であり、ブレずに進める、継続する というスタンスです。
「財政政策」については「機動的な」という言葉がつけられていて、「持続的な」ではないという
こともきちんと触れられています。こういうところまでとてもきめ細かく書かれているところは
すごいと思いました。「超入門」とタイトルされているけど、「簡潔に語られているので、わかり
やすい」って意味で、「細かい、深いところまで語られていない」という意味ではないですね。
ただ、自分は・・・。もちろんアベノミクスを応援しますが・・・。
やはり危うさの方が大きいと感じてしまうのです。たくさんの良くなることが書かれていますが、
「希望」の部分が多いです。株価は「希望」や「気分」で動きましたが、実際の企業業績や給料まで
「気分」で、本当に動くのでしょうか。本の中でも、株価から企業業績向上、給与アップのロジック
が語られますが、地方で中小企業を経営している自分には、もう一つ実感がわきませんでした。
・海外に移してしまった製造拠点は、簡単には日本に戻ってこない
・日本国内の設備投資はそんなに活発にはならない
・給料が上がるのは一部の勝ち組大手企業であり、中小企業での動きは地味なものになる
・一方で、円安によるガソリンや電気料などの値上げは確実に進行する(すでに進行している)
このくらいのことを前提として経営していかないと危ういと、自分は思っています。
何より今の「気分」で、政治家や公務員の削減、不用な外郭団体の廃止などの構造改革議論はほとんど
聞かれなくなってしまったことに対する危機感が強いです。規制改革に反対する利権団体の力は強く、
そこでのムダな支出も、どこまで削減できるのか。議員の削減も「0増5減」でいいはずがありません。
もちろん企業も体質を変えて、競争力を高めていかないといけないですね。ただ、今の「気分」からは
政治・行政側も、企業側も、そこの「危機感」が消えてしまい、また別の「思惑」が色濃くなっている
ような気がします。消費税を増税しようが、企業の業績が回復して税収が増えようが、根本的なこと
として、今の旧態依然とした、ムダだらけのシステムは変えていく必要があると思うのです。年金を
はじめとする社会保障の問題も、何一つ解決されていません。
すいません、最後、アベノミクスや本の内容とは関係ないことを言ってしまいましたが、日本の会社の
大多数をしめる中小企業の経営者は、そういう「気分」にはなっていないし、実態をシビアに見つめて
いるのではないかと思ってしまったので、書いた次第です。
もちろんこちらの本は、前述のとおり、アベノミクスを理解する上で、最適な一冊だと思います。
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