今 自分たちが住んでいる現実(リアル)の世界とは別の、新しい世界ができている。それはインターネットの普及によって作られたウェブ社会。今、多くの人たちがリアル社会で暮らしつつ、ウェブ社会でも暮らし始めた。ウェブ社会の生活ルールはリアル社会とは異なっているし、ウェブ社会でステータスを確立している人もリアル社会とは異なっている。
ウェブ社会が一部のオタクたちだけが生息している特殊な場所であるならばさして気になることではなかったのかもしれない。でも、すでにウェブ社会は無視できないところまできている。グーグルの時価総額が10兆円を超えたり、世界で最大の書店は リアル世界では1店舗もお店を持たないアマゾンだったりするとき、リアル世界のエスタブリッシュメントたちは驚きと同時に 脅威を感じ始めている。リアル社会に重きを置いた秩序を維持しようとする傾向は、エスタブリッシュメント層に顕著なのはそのせいだろう。
しかしネットの「あちら側」に構築されつつあるグーグルをはじめとする「情報発電所」のような仕組みは、すでに稼働してしまった。この情報発電所の活動により、既存メディアの権威は揺らぎ、富の再配分が始まることになる。
ネット上では、情報の複製にコストはかからないし、情報の伝播は瞬時に起こるから時間遅れも存在しない。リアル世界とは全く違う法則に基づくから、変化の加速やスピードは、私たちの想像を大きく超えて速い。
今、着実な技術革新を伴う 本当の大変化が始まろうとしている。
まずはネットの「あちら側」と「こちら側」という概念を理解する必要がある。あちら側とはグーグル、アマゾンなどがネット上でサービスを展開するウェブ世界。こちら側のリアル世界では実現不可能な「ロングテール」ビジネスモデルを確立し、巨大な経済圏を作り上げている。
「チープ革命」が進行する「あちら側」ではとにかくコストがやすい。タダで利用できるブログが日々増殖を続け、タダで使えるグーグルなどの検索エンジンが、知を再編集して、利用者に提供し続ける。
ブログの記事など信頼が置けない、とるに足らないと批判するこちら側の知の権威を尻目に ブログは増え続け、いつしか「数の論理」がはたらく。つまり「まともなこと言っているのは100人に1人くらいだよね」と言う発言は、何万人という「まともな発言者」の存在を意味することになり、こちら側の知の権威たちにとって大きな脅威になってくるのだ。
「グーグル・マップス」を利用して「はてなマップ」というサービスシステムを数十万円で作り上げてしまうくだりなどはまさに圧巻。こちら側の企業TOPが「はてなマップ」をみて「冗談だろう。(開発費は)数億円、いやもっとかかるに決まっているだろう」と言う。確かにグーグルはそのくらいの資金を導入して「グーグル・マップス」を作り上げたのかもしれないが、それを利用した「はてなマップ」が数十万の開発費で完成したのは事実なのだ。
システム部門長が「いや、それはおもちゃですから」と発言するところもおもしろい。それって80年代によく聞いた言葉だ。オフコン・COBOL全盛時代の電算担当者たちは、パソコンをみて 同じ発言をしていた。「パソコンはおもちゃだ」と、「あんな機械で業務システムが行えるわけがない」・・・。なんだか懐かしい。自分も確かに聞いた意見だけど遙か昔のことのようだ。
ネットのあちら側のすごさ、社会に与えるインパクトがひしひしと伝わってくる。そしてそのとき自分はどうするべきか。そのことを深く考えさせられる。
「これから」を生きるビジネスマン必読の書だと思う。
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何回か読み直さないといけないなとの感想からです。
著者が日本とのやりとりがFAXであったと回想している、94年から95年ぐらいにかけての時代を、
「95年というのは少し前のようにも思えるが実は大昔なのである」と言っている事がガツンときてます。
その頃から今の仕事をしているわけですが、
「大昔のままの感覚じゃないのか?」と自問自答です。
「何かを表現したって誰にも届かない」という諦観が、
「何かを表現すれば、それを必要とする誰かにきっと届くはず」
という希望に変わろうとしている。
これもすごい事ですね。
goodwillさん、ぜひぜひお奨めします。読んでいるとすご~くわくわくしますよ。もう感動。
ふるやまさん、確かにちょっととっつきにくいところはありますよね。でも内容がすごいですよね。ぼくも1回読んだ後、部分的になんども読み返して、そのたびに感動してます。
ふるやまさん、大昔のままじゃないですよね。だって今、こうしてブログ経由でコミュニケーションしてますもんね。これってやっぱり進化ですよね。