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帯とけの枕草子〔百六〕いひにくきもの
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言 枕草子〔百六〕いひにくきもの
いひにくきもの
人のせうそこのなかに、よき人の仰せ事などのおほかるを、はじめよりおくまでいひにくし。
(人の消息の中に、貴い人の仰せ言などが多くあるのを、始めより最後まで、人に・言いづらい……人の手紙の中に、貴い人の仰せ言が多く有るので、始めより、奥の意までは、人に・言い難い)
はづかしき人の、物などおこせたる返事。
(恥ずかしいほど気が引ける人が、物などを寄こされた、その返事……恥ずかしいほど気が引ける人が、ものなど、痴こせたる・ばかばかしくなっている、その返事)。
おとなになりにたるこの、思はずなる事をきくに、前にてはいひにくし。
(大人になった子どもが思ってもいない事を尋ねるのに、目の前にしては言いづらい……おとなしくなった子の君が、思いを思わなくなる事を、彼に・問うときに、子の君を・前にしては言いづらい)。
言の戯れを知りましょう
「おく…奥…手紙などの末尾…最後…言の奥の意味…奥深く秘められた真意」「物など…贈物…言葉…歌・詩・文」「おこせたる…寄こせたる…をこせたる…痴こせたる…とぼけたる…ばかげたる」「おとな…成人…音無…おとなしい…動きなどが鈍い」「おもはず…思いもしない…思いを思わない…その気の無い」「こ…子…こども…おとこ」「前…面前…前に付いている物…おとこ」。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は「枕草子 新 日本古典文学大系 岩波書店」による