帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔百九〕原は

2011-07-04 00:05:02 | 古典

 

                                   帯とけの枕草子〔百九〕原は



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。


 清少納言 枕草子〔百九〕原は

  原は、あしたのはら、あはづの原、しの原、萩原、その原。 
 (
原は、朝の原、粟津の原、篠原、萩原、園原……盛り上りのないのは、吾下の腹、合わずの原、しおれの原、端木はら、その腹)

 
言の戯れを知り言の心を心得ましょう。
 「原…山ばの無いひら野…盛り上がりのないところ」「はら…腹…心のうち…腹のうち」「あした…朝…吾下…わが身の下」「あはづ…粟津…合わず…和合できず」「しの…篠…細竹…なびいているさま…しんなりしたさま…しおれたさま」「はぎ…萩…端木…木っ端…おとこ」「ばら…ども…複数・軽蔑の意を表わす」。


 
「盛り」の次には「盛り上がりのないはら」を並べた諧謔。これを、唯の原の名の羅列と決め付けては、「心におかしきところ」が聞こえないので、味気ない文と貶めたくなるでしょう。
 「心深く」はないけれど、男に腹立つ事あれば、これを口ずさむと、女たちの溜飲、少しは下がるでしょう。

 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず   (2015・9月、改定しました)

 
 原文は「枕草子 新日本古典文学大系 岩波書店」による



帯とけの枕草子〔百八〕もりは

2011-07-04 00:02:04 | 古典

 



                       帯とけの枕草子〔百八〕もりは



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



  清少納言 枕草子〔百八〕もりは

 もりは、うきたのもり、うへ木のもり、いはせの森、たちきゝのもり。


 (
森は、浮田の森、植木の森、岩瀬の森、立ち木々の森……盛りは、浮き多の盛り、植木の盛り、女と男の盛り、立ち木利きの盛り)


 言の戯れを知り言の心を心得ましょう。
 
「もり…森…盛り…感情の盛り上がり…心地のさかり」「田…女…多…多情」「うへ…植…植え…種つけ…まぐあい」「木…男…こ…子…おとこ」「いは…岩…井端…女」「せ…瀬…背…夫…男」「たち…立ち…しおれていない」「きき…聞き…木々…利き…よく活動する…巧みである」。


 
歌ではないが、藤原公任のいう「心深く」もないけれど、「姿清げに、心におかしきところ」があるように作ってある。おとなの女たちをおかしがらせる諧謔。


 唯の森の名の羅列と聞いては味気ないでしょう。和歌に育まれた女たちは、そのような一義な文を受け入れるほど甘くは無い


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず   (2015・9月、改定しました)

  原文は、「枕草子 新日本古典文学大系 岩波書店」による