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帯とけの枕草子〔百十三〕冬は
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百十三〕冬は
冬はいみじう寒き、夏は世にしらずあつき。
(冬はひどく寒い、夏はほかに知らぬほど暑い……終は・尽き果ては、ひどく心がさむい。撫つは、夜にしらず熱い)。
言の戯れを知り言の心を心得ましょう。
「冬…四季のおわり…終…尽き果て」「寒い…身が寒い…心が寒い」「夏…なつ…なづ…撫でる…愛撫する」「世…余…その他…夜」「しらず…知らず」「あつき…暑い…熱い…情熱で熱い」。
藤原公任撰「和漢朗詠集」の「冬夜」にある紀貫之の和歌を聞きましょう。
おもひかねいもがりゆけばふゆのよの かはかぜさむみちどりなくなり
(思いに堪えかねて彼女の許に行けば、川風寒くて、千鳥が鳴いている……思いに堪えかねて、愛するひと、かりゆけば、ひとの心風さむく、しきりに泣いている)。
「がり…許に…かり…狩り…猟り…あさり…むさぼり…まぐあい」「川…女」「風…心に吹く風」「千鳥…しば鳴く小鳥…鳥…女」「なく…鳴く…泣く」。
藤原公任撰「和漢朗詠集」の「夏夜」にある紀貫之の和歌を聞きましょう。
なつのよのふすかとすればほとゝぎす なくひとこゑにあくるしのゝめ
(夏の短夜が、臥すかとすれば、ほととぎす鳴くひと声に、明ける東の空……撫づの夜が、伏すかとすれば、かつこう、泣くひと声に、飽くるしののめ)。
「なつ…夏…暑い…懐…撫づ…熱い」「ふす…臥す…床につく…伏す…立つものがたおれ伏す」「ほととぎす…時鳥…ほと伽す…郭公…且つ乞う」「鳥…女」「ひと…一…人…女」「あく…明く…夜が明ける…飽く…満ち足りる」「しの…篠…細竹…しなやかなさま」「め…女」。
枕草子の文は、このような和歌と表現様式は同じで、言の心も変わらない。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は、「枕草子 新 日本古典文学大系 岩波書店」 による