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帯とけの枕草子〔百二十〕むとくなるもの
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔百二十〕むとくなるもの
むとくなるもの、しほひのかたにをるおほ船。おほきなる木の風にふきたうされて、ねをさゝげてよこたはれふせる。
(無徳なもの、潮干の潟に居る大船。大きな木が、風に吹き倒されて、根を上げて横たわり伏している……無能で役立たないもの、しお引く方に折る大夫根。大きな木が、心風に吹きたおされ、根をひとに捧げねを上げて、横に伏している)。
言の戯れと言の心
「むとく…無徳…品位なし…威力なし…能力なし…魅力なし」「しほ…潮…満ちては引くもの…情熱など…士お」「かた…潟…方」「をる…居る…折る…逝く」「船…夫根…おとこ」「木…男木…おとこ」「風…心に吹く風…山ばから吹き降ろす飽き風」「ね…根…音…声」。
ゑせもの(見かけだおしな者)が従者を叱っている・さま。
人妻などが、つまらない怨みごとなどして、隠れたらしいのを、必ず尋ね騒ぐだろうと思っているのに、さもあらず、夫らはこの事を・憎らしそうに扱ったので、こうして、たびだちゐたらねば(外泊して居られない…旅立に至れない)ので、心と共に出てきている・その心ざま。
枕草子は、おとなの女たちの読物。言の戯れのなかに「心におかしきところ」が顕われる。女たちが「をかし」と思えば、それでよし。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は「枕草子 新 日本古典文学大系 岩波書店」による