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同期の男。

2011-07-19 21:58:16 | 仕事関係
先日一人の男が会社を去った。
先週末にその男の送別会が催された。
久しぶりにあったその男は、噂以上に痩せて見えた。
その男は、私の長い企業戦士人生の中で唯一同期の男だった。


その男と初めて会ったのは15年程前。
お互いまだ若かった。
その頃は、いつも馬鹿な事を話しながら編集室やスタジオで
夜明けを迎えたものだった。
常にテンションが高く大笑いして過ごした。


小さな会社だったが間違いなく夢が溢れていた。


でも、そんな楽しい瞬間も大きな時代の流れに飲み込まれた。
M&Aを繰り返して急成長した今の会社の飲み込まれた我々の夢は、
いつしか潰え、生きることに必死になった。

働く場所も遠く離れた。
私たちは、慣れない仕事を日々がむしゃらに戦った。

特にその同期の男は慣れない仕事と職場、
そして長い通勤時間に縛られながらも、ここ数年地道に戦い続けた。

しかし、その頑張りもついに力尽きた。




同じ会社の人間でなくなっただけで、今後一切会えない訳ではない。
これまでも多くの仲間が夢のない会社を去っていった。
でも、当時の仲間は皆どこかで繋がっている。
今回の送別会にも、そんな仲間が多く駆けつけてくれた。


よく分かっているのだ。
その男が会社を去るくらいで、関係が変わることなどないことを。
何も変わらない。
だから、わざわざ会社を去ることになった原因など聞かなかった。
痩せた顔を見るだけで十分だった。



そして普通に昔話をして、笑い、酒を飲んで握手をして分かれた。


だがひとり帰り道に思った。
仲間が去ることには慣れていたハズだ。
何も変わらないハズだった。
でも、同じ会社に居ないことが、
こんなにも寂しい気持ちになるとは思わなかった。
勤務地や仕事内容が変わっても、同じ組織のどこかにいるという
だけで存在感があったのだ。

そう、彼は、私の人生の中で二度と得ることにない時間を
共に過ごした唯一の「同期の男」だから。


今でも覚えている、楽しかったあの時代を。
今でも覚えている、苦しいが夢が見れたあの時代を。


お前と俺とは同期の桜。

さらば戦友。

これからは違う戦場で戦おう。

かけがえのない家族と夢のかけらを守りぬけ。



コメント (4)
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