第36期女流本因坊戦 の予選リーグ。ぼんやりと眺めていたら、記憶にある名前が。 小野綾子 ( オノ アヤコ ) ?
「 もしかして…… 新潟県出身の小野さん!?
あぁ、そうか。プロ試験に合格されていたんだ」
(記)2017年10月25日
【顔写真】
◇関西棋院 公式プロフィールへ
== 注目の女性棋士 小野綾子 ==
2008(平成20)年の、第50回全日本女流アマの全国大会。
優勝は小田彩子さん。アマ強豪として今も活躍中。
準優勝は下坂美織さん。現在はプロ。
そして3位が、小野綾子さん。
◇8年越しの夢……そして関西へ
2008年。女流アマは50回目のメモリアル。その記念として、優勝~3位の3人にはプロによる1vs1の指導碁が。その指導碁譜や対局風景は週刊碁で大々的に特集されました。
3位になった小野さんが挑んだプロは、黄孟正 ・九段。
結果は、たしか小野さんの負け。しかし対局後、小野さんは黄先生を質問攻めにしたらしい。強くなるには? そしてプロになるには? プロへの夢や情熱は抑え切れなかったのかもしれない。週刊碁の記事によれば、黄先生のアドバイスを一言一句も漏らさずに記録し、帰郷したという。
そして2016年10月。小野さんは関西棋院の所属棋士に。 8年越しの夢を見事叶えた様です。東京では無く、新潟から遠く離れた関西の地で。
日本棋院であれ関西棋院であれ、囲碁棋士が誕生する背景には、「地元ファンの為に、囲碁界の未来の為に」と、各地で長年活動されてきた方々のご尽力あってこそ。関西棋院の公式プロフィールには、
「日本中に碁の楽しさを伝えられる人になりたい!」
「囲碁の魅力を上手に お伝えできるように頑張ります。」
とあります。今は決して有名では無いかも知れませんが、出来るなら “ 新潟出身・小野綾子 ” と言う名前を全国の囲碁ファンの皆さんに知って頂き、囲碁にかける小野さんの夢や目標を応援して頂きたい。そんな事を私は願っています。
(*1) ちなみにこの年の2位は #下坂美織 (現プロ)さん。
女流アマの59回全国大会
(記)2018年11月13日
「奈穂さん、初タイトルおめでとう!!!」
2018年初夏、扇興杯女流最強位。
優勝は、万波奈穂さん。ツイッターの囲碁ファンは例年に無い盛り上がり。それだけ大勢の人が、奈穂さんのタイトル獲得を望んでいたんだ……
プロ入り以来、奈穂さんは囲碁普及を続けて来た。普及を通じて囲碁ファンと交流し、プロとアマの橋渡しの役割を担ってきた。その人が、悲願の初タイトルを獲得したのだから……
(記)2018年11月13日
.
【写真】涙の初タイトル!!
.
.
== 少女、日本海を渡りて ==
2018年現在のタイトルホルダー。もしかしたら、奈穂さんが最年長?(マスターズ杯以外)
私自身、奈穂さんには何度か お会いしています。実際にお会いしての印象ですが、奈穂さんの碁に対する執念は、ファンが想像する以上だと思います。
A》壁 と 思春期
万波奈穂 ちゃんは、近い内にタイトルを獲りますよ──
院生時代、プロからも そうした評価を されていた。当時の院生師範も それを期待していた。しかし、採用試験には なかなか合格出来ない。原因は単純。特に女流棋士の採用数が少なすぎる為。
そんな中、万波佳奈 さん(姉)や鈴木歩 さん(姉の友人)が先にプロ入り。期待通り、お2人は早くに女流棋戦で優勝。その一方、仲の良い仲間が次々に院生を辞めていく。
脱線しますが、過去には、13才 ~ 18才と言う、年齢的な不調に悩まされる女子院生もいたらしい。原因の1つには受験熱らしきものに苦しめられた(これは女子特有の悩みらしい) 例えば、緑星学園出身の女子院生。男性の若手プロにハンデ無しで勝った事もある実力者。勿論、試験合格も目前。そんな中、思春期特有の情緒不安に突如陥り、快復の兆しは無い。その子の苦しみは尋常ならず、遂には、
「プロになんか なりたく無い!!
お願いですから……院生、辞めさせて下さい」
菊池康郎先生に泣いて懇願したと。男性有~高段者、あるいは同年代の男子院生には 絶対に理解出来ない。
B》追い風は韓流ブーム
こうした中、「今のままじゃいけない」
奈穂さんは武者修業を決意。選んだ修業先は韓国。幸いにも外国人を受け入れてくれる道場があり、その門を叩いた。
日本とは違った文化、日本より囲碁が盛んな環境。そこに飛び込み修業に没頭する事で、本来の資質が引き出された。そして日本に帰ると、プロ採用試験に見事合格。
また当時は、いわゆる韓流 ブーム、冬のソナタ ブームの前後だったらしい。そこで ( 録画だったか レンタルだったか ) 韓流ドラマを繰り返し観て、韓国語を覚えたとも。
何としてもプロになろうとする決意。
大好きな姉に先を越され続けた悔しさ。
年を経る事に増し続ける、諦めの気持ち。
そんな中、突如舞い降りた一縷(いちる)の可能性……
そうした想いの結果が、扇興杯(女流最強位)での初優勝、そして涙のインタビューに繋がった。
謝依旻さん、藤沢里菜さん、上野愛咲美さん。史上類を見ない大天才達が女流棋戦をモノにする中、
「万波奈穂、雌伏何年の初優勝」
とは、何とも印象的でした。
【参考記事】奈穂さん修業時代を回想