救急車

朝６時４０分。玄関のチャイムが鳴る。多少二日酔いの頭で『宗教屋さんが来るにしては随分早いな』と思いながらもダンマリ決めようかと思ったけど、なんだか異様な雰囲気を感じてドアの前で「はーい」と返事する。

「あの、、、下に住んでる者なんですが、今、階段の下を見たら人が倒れていて、、、どうしたらいいんでしょう？？？」

へ？　人が倒れてる？？

「今行きます～」と言って速攻着替えて階段の下へ。ノーメイクで明らかに動揺している真面目そうな女性と、階段の下で本当に倒れてるローライズデニムのピチT着たお水系の女性。どちらも２０代前半だろうか。そのギャップで多少我に帰る。

階段の途中にハイヒールが脱げ落ちていた所を見ると、登る途中か降りる途中に転け落ちたんだろうか。頭が壁際に接触していたので、下手に動かさないほうがいいかも。

呼吸してるし出血した跡が無いので大丈夫だと思うけど、階下の女性に聞けば声をかけても全く返答が無いらしい。「救急車呼びますね」と安心させて生まれて初めて救急車を呼ぶ。冷静にしていたつもりでも、アパートの枝番が判らず階下の住人に聞いたけど。

救急車が到着して倒れている女性を救急隊員が囲む。声をかけて体をゆすろうが、無理矢理目を開こうが全く反応が無い。でもストレッチャーに乗せた直後に意識が回復したみたい。

結局。くだん女性は泥酔して帰宅後に階段で転け落ちてそのまま眠りこんでたらしい・・・。なんて大袈裟な、と思ったけど、転けた時に出来たと思われる目の下の擦り傷と唇からの出血を見ると、まぁ、大事に至らなくて良かったなぁ、と。

泥酔女性が自分の部屋に入った所をその場にいた全員が見送って一件落着。階下の女性は「変な事に巻き込んでしまってごめんなさい！」と僕に頭を下げるけど、頭を下げる必要があるのは、こんだけ騒ぎを起こしながらもだまーって部屋に入って行った女性ではないか、と。

朝からハードな１日の始りでした。