正直言うと、親から虐待を受けている子どもから自身が虐待を受けていることを打ち明けられることをあまり期待しないほうが良い。何故ならば、親から虐待を受けている、少なくない子どもは大人を信用していないからである。考えてみると良い。生まれた人間が人生で最初に出会う大人は親である。年齢が低ければ低いほど自分と接する大人は親あるいは親戚だけになる傾向にある。従って、多くの場合、親から虐待を受けている子どもにとって大人は「外敵」でさえある。
上記のようなことが多いとはいえ、虐待されている子どもにとって本当に信頼できると思える大人が周囲にいれば、そういう大人に自分の境遇を打ち明けてくる場合があるだろう。その場合でも親からの報復を恐れて子どもが内緒にすることを要求するかもしれない。しかし、子どもの言い分に追随していたのでは問題は解決しない。だから、周囲の子どもから虐待を打ち明けられた場合には、問題解決つまり子どもを救出するために信用できる大人に相談しなければいけないことを明確に伝える必要がある。間違っても内緒にするふりをしながら児童相談所に通報するなどというやり方をしてはいけない。このような行為は、裏切り行為とみなされてしまい、信頼関係を修復不可能なまでに破壊する。
虐待を受けている子どもを一人で救出することは、基本的に不可能だと思って良い。自分自身に家の広さや経済力があっても「じゃあ。うちの子になるか?」と言って勝手に連れて帰ってしまえば、未成年者略取誘拐という犯罪行為が成立してしまう。子どもの安全を確保するためには、時には親から子どもを引き離す必要がある。この行為を法律と社会通念と突合して問題ないように行うためには、児童相談所や警察に話しを通す必要がどうしてもある。親から見て「誘拐」同然の事をしながら犯罪者として訴追されないためには、しかるべき手順がある。だから、自分一人では基本的に虐待されている子どもを救出できないのである。
自分の周囲に児童虐待あるいはその疑いがあるような事態に直面した時には、まず児童相談所へ通報するのが最初にとる手順である。間違っていたらどうしようなんて考える必要はない。「もしかしたら」という状況を察知した時に児童相談所へ通報すれば良いのであって、勘違いだからといって法的あるいは社会的に責任を問われるわけではないから、その辺はご安心いただきたい。