のんのん太陽の下で

初めての一人暮らしが「住民がいるんだ・・・」と思ったラスベガス。
初めての会社勤めが「夢を売る」ショービジネス。

親子で完走、2008 SILVERMAN

2008-11-09 | 日記
 「キーン!」というその音は、寝ている者誰もを起こす音。だってそれは火災報知機の音だから。
「まだ5時21分だよ。」
 何かの間違いで鳴っているのだろうと、頭のてっぺんに響く音にもまだ寝ようと耳をふさいで目を瞑った私は、急に飛び起きました。急いで台所へ。何事もなくほっとし、もう一度横になって、またすぐに飛び起きました。
「もしかして、この棟が、ってこと?」
 パティオに出てみると、数人が外へ出ているのが見られました。私も急いで外へ出られる格好に着替えました。
「もし火事だったら、何を持って出たらいいの???」
 着替えて、もう一度パティオから外を見ると、丁度消防車が来たところでした。
「ここにいたら水浸しになってしまうのかな。」
 急いでダウンコートを羽織り、何も持たずに外へ出ました。そして消防士の方々がこの棟を見回り、「キーン!」という音が止むと、住民は部屋へ戻って行きました。
 私も戻り、玄関のカギを開けていると、向かいのかっこいいお兄さんが階段を上がってきました。初のメガネ姿。彼の挨拶にも私は微笑むことしかできませんでした。すぐ床へ。
 目覚ましで予定時間に起きた時は、「キーン!」の音で一度起こされたことなどすっかり忘れていました。
 今日は『A Choreographers' Showcase』第一回目の本番がありました。本番の前にネバダバレエカンパニーのクラスがあったので、受けさせて頂き、ウォーミングアップとしました。
 今年の作品は、踊りこんで身体で覚えるという感じではないので、頭を良く働かせないと、と思っていました。でも、出番を待っている時の友人との会話で、もしかしたら何度も通していたら身体で覚えられるかもしれないと思い、試してみました。その甲斐あってか、今日は間違えずに出来ました。
 終わると、『シルバーマン』と呼ばれるトライアスロンの大会へ応援に駆けつけました。時間的にはベッキーが走っているはずです。The Districtという通りで応援しようと行ってみたのですが、ポツリポツリと現れる選手にちょっと不安になりました。次の予定まで、ここで2時間待つことはできますが、このまま待っていて、彼女を迎えることは本当に出来るのか。いつ来るか分からないままじっと待っていているよりは、コースを逆流して会える可能性を高めようと思いました。そして歩きながら、走ってくる方に声を掛けると「Thank you.」と声が返ってきました。それも、一人ではないのです。走ってくるみなさんが私の「頑張れ!」という応援に「Thank you. 」と言うのです。胸が一杯になりました。
 歩き続けると、小さな三叉路に行きあたりました。そこは各方向からの往来があるところでしたので、そこでみなさんのことを応援しながらベッキーを待つことにしました。しばらくするとベッキーが来ました。私はベッキーの横を一緒に走りながら様子を聞きました。ベッキーはニコニコしていて、朝6時半からの水泳、その後の自転車を終えて、暗くなった今走っているとは思えないほど、軽々しく走っていました。そして、「プレッツェル食べる?」と小さなスナック菓子を差し出しました。「それはベッキーのエネルギー源でしょ?」というと、もう一つあるからと見せながら「今とっても調子がいいのよ。」とニコニコして話し続けました。私は話をしながら走ったら、エネルギーの消耗が激しいだろうからと思っているのに、彼女は「全然平気。」と言って、すれ違う選手に掛け声をかける余裕もあるほどでした。
 The Districtまで15分位でしょうか、一緒に走りながら戻り、彼女はコース通り右へ、私は彼女のお父様、ダンカンさんを見付けに自転車の最終地点へ向かって左へ行くことにしました。
 自転車の最終地点はゴールにもなっていて、もう走り終えている人もいました。ダンカンさんは見付けられないので、無事に制限時間内に自転車を終えられたのだと思い、戻ろうと出て行くと、ベッキーにまた会いました。彼女は二周目に入るところだったようです。そして、ダンケンさんとすれ違ったようで「今そっちに走って行ったよ。」と教えてくれました。私は“そっち”と思う方に歩いていくと、結局最初にベッキーを待っていた三叉路に行きあたりました。そこでダンカンさんをしばらく待ちましたが、時間切れ。約束していたショーを観に出発しなければなりませんでした。
 そこからストリップの南にあるカジノへ行き、ジャイロトニックの先生方が主演、KAのアーティストがゲストで出演しているショーを観ました。
 ショーの後、ダンカンさんのことがどうしても気になったので、会えるかどうか、今もまだ走っているかどうかさえも分からなかったのですが、戻ることにしました。
 The Districtへ戻ると、とても寒く、お腹はすいています。でも通りのお店はみな閉まっています。仕方なくカジノへ入り、フードコートでスープを一杯飲んで、応援に戻りました。通りに出て、先程と同じようにコースを逆流しながら一人、二人…と応援していると「Thank you.」という声に聞き覚え。
「ダンカンさん?」
「オー、ノリコ!」
 私はすぐにバトンを取り出し、回して応援をしました。スープを飲んで出るのが1分遅かったら、彼には会えなかったことでしょう。彼は立ち止ってハグをしてくれました。そして、私は彼ともしばらく走りました。話すと疲れるでしょうから、と言っても、彼も娘であるベッキーと同じように話してくれました。
 自転車の時に風が強すぎて思うように走れず、二年前、私が撮影隊に入って彼に一日中ついていた時のように、制限時間ギリギリで自転車を終えられたとのことでした。今も大変だとはおっしゃっていましたが、あの時のように歩くことなく、今年は走っていらっしゃいました。
 彼の指示に従い、途中からゴール地点へ先回りすることになりました。と言っても、歩いていたらきっとダンケンさんの方が早いだろうなと思い、途中から早足で行くと、ゴール手前100メートルぐらいの角に着いた時、丁度向こうからダンカンさんがベッキーと一緒に走って来るのが見えました。私はすぐにバトンを取り出して応援。そして一緒に走り、ゴールするのを無事見届けることができました。
 ベッキーは13時間46分11秒で、今年もネバダ一速い女性に。ダンカンさんは16時間09秒の合計タイムで、55歳から59歳の部で3位になりました。

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