陽だまりのねごと

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眠れるラプンツェル   山本文緒

2006-07-09 22:51:40 | 
眠れるラプンツェル

幻冬舎

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グリム童話のラプンツェルは搭に幽閉されて髪を長く長く伸ばし三つ編みにして、王子様が呼んだら髪を垂らして登ってきてもらう。他の人は誰も登らせないと言う話だったように思う。 グリム童話はじっくり大人の目で読むと、えげつない内容だったりする。ラプンツェルも今で言えば浮気?違う男性を引き上げて、彼は王子様より軽いわ~とうっかり口を滑らせてバレていまった話で、子供向きとは言いかねるかも。

 赤ずきんちゃんの原画展を観に行く道中でこれを読んだ。赤ずきんちゃんも狼は腹を裂かれたり、残酷でエロチックな話にも思える。

この小説の主人公は自主的にマンションに閉じこもっていて、めったに帰らない夫を待っている子供のない専業主婦。正妻であるけれども、お妾さん処遇と言ったところ。

原画展は、転勤族の夫を持つ専業主婦の友人と観た。5年前、家の近くに居て、それから3回目の転勤で結構近い美術館近くに引っ越して来たので久々の再会が主目的だった。

彼女の今度の家はう~~んと高台にあり、家から出るのが面倒で閉じこもりに成りそうだと嘆く。続けてやりたいパートの仕事もあったのに、全部捨てて夫に付いて来なければいけない身の不運を嘆いていた。道路から24段、踊り場付きのその上にある家を見せたいと言い、会社の用意した搭の家へ案内してもらった。

確かに、上りよりも下りでもしかしたら彼女もラプンツェル?

マンションでずっと飼われている猫も登場する。勝手気ままで、クールな猫の描写の上手かった。マンションから出ては生きてゆけない猫と主人公の置かれている状況と重ねて見える。猫は小説の大事な小道具。

マンションのウワサ話好きや身勝手に気が付かない女性の数々はちょっとこの辺りにも居そうなタイプだった。

このラプンツェルは最後にはラプンツェルを止める。離婚して専業主婦を降りる。主婦ってそんなに退屈かしらん?私は夫を亡くしたから、専業主婦を降りて働くおばさんをしているけれど、出来たら主婦だけしていたい。人の世話で終る一生も悪くないと思うのだけど。

 夫は本当に妻を愛しているか?

ここが曖昧では主婦であることがむなしいだろう。

友人のダンナ殿はせっかくの休日に、おじゃま虫の妻の友人である私込みのアッシーをかって出るくらい妻に寛大な人だった。ダンナ殿から『太ったお姫様』と言う可愛い愛称まで貰っている。小説とは似ても似つかぬラプンツェル。

しかし、彼女には、学生時代からの付き合いで、ほんの腰掛仕事の後、すぐに結婚して、ずっと夫任せできた人生に腹立たしさがあるようだった。

私は日曜が終ったら、また拘束時間ばっちりの働くおばさんに成る。言いたいことも言えない、いやな事もしなければいけない労働の日々が待っている。

おまけに遊びにでかけても、息子の不調はずっと頭の隅にある訳で、100%自由な独身とはいかない。私から見ると彼女は実に幸せいっぱい。

 どっちも隣りの芝生は青く見えるらしい。


『夢』など口に出す人は話が噛み合わないなど、山本文緒好き嫌いマップと私のマップは重なる部分があった。そう言えば、退屈しのぎ、気分転換にパートに出るおばさんの生態がよく観察してあった。もうちょい彼女の小説が読みたくなった。