気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

熱気がほしい 

2014-12-05 11:47:56 | 日記

 

街を歩くと、マスク姿が目立ってきた。インフルエンザの流行が始まっているらしい。今季の型は、ワクチンが効きにくいと、朝のワイドショーで医師が警告していた。

 ▼夏目漱石の『三四郎』で、三四郎がインフルエンザにかかる場面がある。小説が書かれた明治41年には、この名称が定着していたようだ。もっとも23年から翌年にかけて大流行したときは、「お染風」と呼ばれていた。

 ▼「お染が久松に惚れたように、すぐに感染するという謎であるらしく思われた」。岡本綺堂(きどう)が随筆に記している。油屋の娘お染と丁稚久松の悲恋の物語は、歌舞伎や人形浄瑠璃でおなじみだった。

 ▼身にしみるほどの恋のせつなさを風にたとえた、「恋風」という言葉もある。感染力が強い「お染風」に吹き込まれては大変というわけか、当時の人々はこぞって、家の軒に「久松留守」や「お染御免」と書いた紙札を貼りつけたという。

 ▼日本列島は、強い冬型の気圧配置が続いている。北海道や東北、北陸の日本海側を中心に、きのうも強風が吹き荒れ、気象庁は、暴風雪に対する警戒を呼びかけていた。2日に公示された衆院選はどうだろう。「政治とカネ」にまつわる醜聞にまみれた候補者たちは、支援者にひたすら頭を下げて、逆風の下で戦っている。

 ▼しかし、選挙全体を見渡せば、今のところどの党にも、世論の風が吹いていない。有権者の関心を高めるためにも、安倍晋三首相には、「アベノミクス」の道筋や、集団的自衛権の行使容認をはじめとする安全保障政策を、丁寧に説明してほしい。それに対して、野党も具体的な対案を示して、論戦を盛り上げなければならない。インフルエンザの高熱は御免だが、選挙戦にはもっと熱気が必要だ。

【産経抄】 12月4日