「ゴールデンウイーク」(GW)は、もともと、映画界から生まれた言葉である。昭和23年の祝日法施行によって、4月末から5月初めに祝日が集中した。映画会社はこの時期を狙って、大作の公開を競いあった。
▼元大映専務の松山英夫さんが、さらなる観客動員アップのために、考案したキャッチコピーである。ただ「二匹目のドジョウ」を狙って、11月の連休を「シルバーウイーク」と呼ぶ試みは、失敗に終わった。
▼ところが平成21年になって、この言葉が復活する。9月19日から敬老の日をはさんで、23日の秋分の日まで、GWに引けを取らない大型連休が実現したからだ。6年ぶりに5連休となった今年のシルバーウイークも、残り1日となった。連日各地の行楽地は、大にぎわいだった。海外旅行からの帰国ラッシュで、各空港は大混雑だろう。
▼次に5連休となるのは、11年後となる。経済効果の観点から、GW同様に秋の大型連休の定着を望む声も上がるかもしれない。もっとも、元経済アナリストで、日本の伝統美術の修復を請け負う会社の社長でもある、イギリス人のデービッド・アトキンソンさんは、GWを含めた大型連休の廃止を提言している。
▼短期間に大量の観光客をさばいて、年間の売り上げの多くを稼ぎ出す。こうした供給側の都合ばかりを優先する制度が、観光産業の隆盛への道を阻んできたというのだ(『新・観光立国論』東洋経済新報社)。
▼確かに、果てしなく続く渋滞や割高な宿泊料金は、本来「おもてなし」の国にふさわしくない。遊び疲れが、連休後の社会に与える影響も無視できない。やはり、閑散としたオフィスで仕事をするに限る。と、祝日に無縁のコラム書きは、負け惜しみを言っておく。