気の向くままに

終着はいつ、どこでもいい 気の向くままに書き記す

姨捨の月 

2015-09-28 15:44:31 | 日記

 

 昨日は「中秋の名月」、皆さんはお月見を楽しめただろうか。今宵(こよい)、十六夜(いざよい)の満月は、今年の満月の中で一番大きく見える。「スーパームーン」と呼ぶそうだ。もっともカタカナで書いてしまうと、風雅の道から外れてしまう。

 ▼1688(元禄元)年8月、松尾芭蕉は、岐阜から更科に向かい、善光寺に参拝して、江戸に戻った。姨捨山(おばすてやま)(長野県千曲市)で、中秋の名月を観賞するのが、最大の目的だった。『更科紀行』には、「十六夜もまだ更科の郡(こおり)かな」の句が盛り込まれている。翌日の月も、堪能したようだ。

 ▼信濃の国更級(さらしな)の里に住む男は、育ててくれた叔母を母のように慕っていた。ところがこの国の殿様は、年寄りが嫌いで、70歳を超えた者を山に捨てるように命じる。男は泣く泣く叔母を山奥に残してきた。その夜、男は山の上に出た月を眺めながら、悲しみのあまり一睡もできなかった。

 ▼「わが心慰めかねつ更級や姨捨山に照る月を見て」(古今和歌集)。芭蕉の時代にも、いわゆる「棄老(きろう)伝説」は広く知られていた。『更科紀行』をもとにした俳文『更科姨捨月之弁(さらしなおばすてつきのべん)』にこう記している。「何ゆへにか老たる人をすてたらむとおもふに、いとゞ涙落そひければ」。

 ▼昔も今も、人々は高齢者介護の問題に悩み続けてきた。自民党総裁に再選された安倍晋三首相は、記者会見で「介護離職ゼロ」の実現を打ち出した。超高齢化社会が進む中、家族による在宅介護負担を軽減するために、介護施設の整備を加速させるという。しかし、施設の増加は介護保険料の上昇を招きかねない。既に介護職の人材不足の深刻化が指摘されている。

 ▼老いも若きも、涙なしにお月さまを眺めていられる日は、いつやってくるのだろう。


9月28日 【産経抄】

 

<memo>

 ラインの通話受話器を誤って取り上げた。0時50分頃だったかと思う。先方様への迷惑を思い、取り乱しながら電源を切ろうとしたが、その間も呼び出し音が鳴り続く・・・・長い時間に感じた。

 一夜が明けた、謝罪のメールをしようかしまいかと思案していたら、お昼頃に先方様から連絡があり、謝罪の機会を得てホッとした。

 良い友をもっていると思ったとたんに、昨日の美しい月が目に浮かんだ。