あめふり猫のつん読書日記

本と、猫と、ときどき料理。日々の楽しみ、のほほん日記

つなわたりの人々

2009-06-05 00:17:27 | 本(ミステリ・アンソロジー、その他)

招かれざる客たちのビュッフェ (創元推理文庫) 招かれざる客たちのビュッフェ (創元推理文庫)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:1990-03

『夜光の階段』のドラマは、そろそろ終盤になってきましたが、原作未読なのでどう収束するか、興味のあるところです。

私はもともとピカレスクロマン、というのがわりと好きなのですが、それは多分、自分にないものに対する憧れなのではないかと自己分析しています。

私は小心者なので、基本、平然と悪事はできないと思うので。

が、逆に、“この犯罪者の気持ち、わかる!私もやりそう!”というのもあります。

たとえば、私はシェークスピア作品では『マクベス』が一番好きで、というかシェークスピアというくくりがなくてもこの物語はたまらなく好きなのですが、主人公マクベスはけして悪人ではないですよね。

それどころか、彼をそそのかす彼の妻もまた、悪女であるとは私は、思えない。

けれど、マクベスは予言に惑わされ、主君を暗殺し、それから次々に周りの人間を殺すことになり、最後は自滅する。

でも、私にはわかる気がするんです。ごく普通の、むしろ善人が悪を行う気持ち。その、もう後には引けない、という思いつめた感情。

この、ブランドの短編集の解説に、そんな不器用な、けして悪人ではない犯罪者の心持について、実に的を射た表現がありました。

彼らは、綱渡りの綱の上にいるのだと。

もう後戻りはできない。ちょっとでもためらったら落ちてしまう。そんなぎりぎりの、追い詰められたような感情が、私は共感できる気がします。

この中の1つの短編のラストで、コックリル警部が犯罪者の腕をつかんだとき、自分が掴まれたような気がしましたもの。

あと、善人の転落の物語でお気に入りなのは、ウイリアム・アイリッシュの『私が死んだ夜』。これもたまらなく好きだった。

そういえば余談ですが、アイリッシュといえば、『夜光の階段』の主人公を演じている藤木直人氏が、『喪服のランデブー』の主人公を演じたこともありましたっけ。

松本清張もいいけれど、アイリッシュの哀切な作品も、忘れがたい魅力がありました。

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