酒の本棚・酒の寓話―バッカスとミューズからの贈りもの (1983年) (サントリー博物館文庫〈7〉) 価格:¥ 893(税込) 発売日:1983-07 |
『もやしもん』8巻では、あんまり書くとこれから読む人の楽しみを奪っちゃいますが、ムトーさんは“ビールとは何か”という問いの答えに、最後は自分なりに辿りついていました。
そこを読んでいてふと、思い出したエピソードがあります。
サントリー博物館文庫の、『酒の本棚、酒の寓話』という本に収録されている、ジョン・アップダイクの『グッドバイ、ミドルクラス』という、4頁ほどのエッセイとも、ショートストーリーとも思える、小品です。
“今日、おれは五十万ドルもうけたときかされた。”という一文で始まるこの作品は、突然大金を手にすることになって戸惑う主人公(作者自身?)とその妻の一夜を描いています。主人公は戸惑いのまま横なぐりの雪のなか買い物に行き、今まで縁のなかった高価なワインを買って飲みます。
“何ともふしぎだったのは、そのワインがすばらしかったことだ。(中略)よりまろやかで、よりほろにがく、そこにはもっと葡萄の香りがあって、もっと風景があって、もっと悲しみがあって。”読んだとき私は十代でしたが、この描写にやられてしまいました。
風景がある、そして悲しみがあるワインって、どんなだろう。いつか、飲んでみたい、と思ったものでした。
今に至っても高価なワインには縁がありませんが(^_^;)美味しいお酒を飲むと、この作品を思い出します。
そういえば、『もやしもん』新登場キャラ、地ビール職人はなちゃんが、ビールに打ち込んだきっかけは何だったのか、(きっと今後出てくると思うけれど)知りたいと思いました。
爽快で、気分浮き立つビールは素敵。深い味わいで、ときに悲しみがあるワインもいい。
酒には、人を引き付ける不思議な魅力があるのですね。
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