5 オレガノ
春になって芽を出したばかりのオレガノ 2021/3/30
マジョラムにはスイートマジョラム(ノッテドマジョラム)、ポットマジョラム、オレガノの3種類あります。ここではその内のオレガノを主に取り上げています。
オレガノは別名でワイルド マジョラム、コモン マジョラムと呼ばれています。オレガノは古くから様々の地域で使われてきたハーブで、其の分名前は複雑です。植物書を見ているとマジョラムを指すのかそれともオレガノの事を言っているのか判断に迷うことがあります。こういうときは生半可にウジウジしているのではなく「助っ人」を頼むにかぎります。整理の良い植物学者と言えば、何故か評判はよろしくないのですが、ジェラードがいます。ジョン ジェラード著の「ジェラードの本草書、1597」から「オレガノの名前」についての説明を(取りあえず)参考に取り上げました。(彼が生きていた時代は怪しげな占星術師が多数跋扈していましたが、彼なら大丈夫でしょう。内容に気を配りながら以下に引用することにします)
『バスタードマジョラムはギリシャ語でオレガノと呼ばれ、Heracleoticum、Origanos Erakleotikonの異名があります。Cunila又は、Origanum Hispanicumとも呼ばれています。スペインではOrgany。我々の英国ではワイルドマジョラムと呼んでいます。ギリシャのディオスコリデス、ガレン、プリニウスはOnitis、或いはAgrioriganum、Sylvestre Origanumと呼んでいる。イタリアではOrigano。フランスではMariolaine bastarde。英国ではOrgany、Bastard Marjoram。即ち、Wild Marjoram、Grove Marjoramはオレガノを指している。』流石!凄い知識量です。そこらじゅうの植物書から寄せ集め、盗用だけの「ジェラードの本草書」と悪口を言う植物学者がいますが、「それならあんたやってみろよ!」と私はいつも思っています。「ジェラードの本草書」には植物に対する気構えが他の植物書とは異なります。
古代ギリシャではオレガノをOnitis、或いはAgrioriganum、Sylvestre Origanumと呼称していたとは大きな収穫です。他の本を当たってみても内容に間違いはなさそうです。これからの手掛かりを掴むことが何とか出来ました。これで安心して以降の文章に臨めそうです。それにしても、ギリシャではタイムにギリシャ神話最大の英雄「ヘラクレス」の異名をつけていたとは驚きです。オレガノの薬効にも期待が持てそうです。
Origanum vulgare ( オレガノ ) 2021/6/29
オレガノは真冬のごく一時期を除いて、年中葉をつけているハーブです。
バジルのない冬場に、その代わりのハーブとしても、味と香りは全く異なりますが役目を果たしてくれます。肥料は殆ど必要のない、耐寒性のある丈夫なハーブです。誰にでも栽培出来ます。
ディオスコリデスは、”3-3. AGRIORIGANOS” で次のように説明しています。
『Wild Marjoram, Organy Origanum sylvestreはoriganumに似た葉を持っているが、細い茎の高さは20cmで、その上にディルに似た房がある。 花は白く、 根は細く頼りない。 葉と花(ワインと一緒に飲む)は、ヘビに噛まれた時に効果がある。 それは万能薬ヘラクレイオン(panaces heraclion:ヘラクレスの万能薬)と呼ばれ、他の人はそれをクニラ(cunila)、そしてニカンドロス コロフォニウス(nicander colophonius.)と呼んでいる。』
これで何とかオレガノの呼称については決着が付いたようです。
今日のお昼はナポリピッツァ、マリナーラを作ってゆっくりと過ごすことにしました。実のところ、オレガノの名前が一段落してホットしたのです。
捏ねたドウの上にトマトソース(トマトパッサータ)を塗ってオーブンに入れて焼きます。あっさりとしたお味でお腹にもたれません。オレガノは乾燥させても香りに変化はなくかえって匂いが強くなるようです。トマトは勿論のこと、バジルやニンニクとの相性も良く、一緒に使うと味に深みが加わります。マリナーラはチーズをのせないピッツァです。(ブログの最後にレシピをのせて置きます。)味と見た目にメリハリがもう少し欲しいとお思いの方は、アンチョビ或いはオリーブをのせるとbene pizza marinara(上等のマリナーラ)になります。
それでは、皆様「ボナペッティ!!」
-般名称 学名 生育地
オレガノ Origanum vulgare. 地中海沿岸
Origanum vulgare (オレガノ) 2017/4/23
Origanumという名前は、古くは北アフリカ由来でしょうが、解っている範囲内で言えば、ギリシャ語の、oros(山)とganos(喜び)に由来し、オレガノが生えている美しい丘の中腹を表します。タイムやフェンネルの学名にも使われている種小名の “vulgari” は “common” の意です。
耐寒性があり、日当たりと乾燥を好む。高温多湿を嫌い、蒸れると根元から枯れる。種蒔きは4 - 5月、9 - 10月頃が適期。4 - 5月頃に株分けするか、挿し芽で増やす。日照不足、長雨、肥料過多で香りが薄れます。
テオプラストスは、
と述べています。
マジョラムは他のハーブに比べて古くから文献に取り上げられており、カト ケンソリウスは ”農業論” の中で、マジョラムの処方を取り上げています。
カトの農業論から;
『消化不良と有痛性排尿の治療法には、開花したザクロの花3ミナエ( 0.95lb/mina )を壺に入れる。 古いワイン1クオドラント ( 25.9 litres/quadrantal )、砕いたフェンネルの根1ミナを入れる。容器を密封し、30日後に開いて使う。食べ物を消化して排尿したいときは、好きなだけ自由に飲むことができる。このようにブレンドすると、同じワインで条虫と胃虫を取り除くことができる。患者に夕方の食事を控えるように指示し、翌朝、粉砕した香を1ドラクマ(drachm/3.34g)、ゆでた蜂蜜を1ドラクム、およびワイルドマジョラムのワインを1セクスタリウス( sextarius/ 540.3 ml )を浸漬する。食事前に彼に投与し、子供には、年齢に応じて、3オボルス( obolus/0.57g )と1ヘミナ ( hemina/273ml ) を投与する。 彼には柱を登って10回飛び降りて、歩き回ってもらう。』
占星術師ニコラス カルペッパーは、マジョラムをSampsucumとも呼び、『傷や潰瘍をきれいにする。オレガノをローマ人はクニラと呼び、ギリシャ人はHeracleotic marjoramと呼ぶ。塩を加えると目に効く。穀物、油、酢をスープに混ぜると 咳や肝臓の不調、脇腹の痛み、特に蛇の咬傷を和らげる。』と述べています。
主な有効成分 カルバクロール チモール ロスマリン酸
抗菌性 抗真菌作用 抗炎症作用
カルバクロールは、モノテルペンのフェノール誘導体で、オレガノの特徴的な刺激臭
はこの臭いです。強い抗菌性、抗ウイルス性、駆虫効果があります。
チモールもモノテルペンのフェノール誘導体で歯磨き粉、軟膏、石鹸、駆虫剤、鎮痛外用剤、洗口液等に使われているとおり防腐、殺菌性があります。
ロスマリン酸は抗酸化物質であり、フリーラジカルによって引き起こされる損傷から保護してくれます。
政治家カトと占星術師カルペッパーだけの証言では不安ですから、プリニウスの言葉も借りて古代ギリシャ・ローマ時代のオレガノ処方とすることにします。
プリニウス
『LXVII. 私が言ったように、野生の味でクニラに匹敵するオレガノは、薬として役立つ品種が多い。 1つは、ヒソップとは異なるオンチスだ。 その特別な用途は、胃痛や消化不良を起こした時に温水で、そしてクモやサソリに刺されたときに白ワイン入れて、捻挫や打撲傷には酢と油と(一緒に)羊毛に浸して適用する。』
臨床研究では、オレガノを毎食後に3か月間服用すると、高コレステロール血症の人の低密度リポタンパク質(LDLまたは「悪玉」)コレステロールが減少し、高密度リポタンパク質(HDLまたは「善玉」)コレステロールが増加することが示されています。 (ただし、総コレステロールとトリグリセリドのレベルは影響を受けません。)
オレガノのオイルを6週間摂取すると、寄生虫の(アメーバ性下痢の病原体)ブラストシスチスホミニス、(非病原性の共生寄生虫)エンドリマックスナナを殺すと言われています。
オレガノ抽出物を1日2回、軽度の皮膚手術後最大14日間皮膚に塗布すると、感染のリスクが軽減され、瘢痕が改善されます。
これらの薬効はオレガノに含まれているカルバクロール、チモール、ロスマリン酸に依ります。
目に対する効果に対して現代医学は答えてはくれていません。古代社会における眼病とは角膜の炎症から白内障までの目の症状の内、どの程度のものを指すのでしょうか。ここで指す眼病とは角膜炎程度の炎症に対してでしょうか。完治したか否かは大いに疑問ですが、白内障は当時外科手術が行われていました。
オレガノは大量に長期間使用すると肝障害、皮膚刺激性が現れますが、通常の摂取では、心配することはありません。オレガノオイルを摂取したり、大量のオレガノを食べる機会や理由は無いからです。しかし、人間と一緒に暮らす犬や猫は思わぬ行動を取ることがあります。次のような症状が現れたとき、動物のオレガノ中毒を疑ってみてください。
栽培 4-5月、9-10月に種子、挿し木、葉挿しまたは根の分割
スイートマジョラムの栽培についてテオプラストスは次のように述べています。
『スイートマジョラムは、引き裂かれた破片(枝)、種子のどちらからでも殖やす事が出来ます。繊細な、香りがよい大量の種子を作るが、それを植えて殖やすこともできます。』と述べています。
又、カトは、
『医師ディオクル ( Diocles of Carystus ; ca. BC375~ca. BC295 ) とシチリアの人々はエジプトでサンプスカムとして知られていた植物をスイートマジョラムと呼んでいた。 それは、種子と枝の挿し木からの2つの方法で殖やす。』と述べています。
発芽適温は15℃~20℃で春、秋が適期です。多湿には弱いので適宜、剪定、切り戻し、間引きをして風の通りをよくします。葉は常に収穫ができますが、花が咲いてしまうと香りが弱くなります。株分け、挿し木、葉挿しで殖やします。多肥は葉を枯らすので注意です。
キッチンカウンターから 独特の香りはイタリア料理には欠かせません
花が咲く頃のオレガノは葉も柔らかく、香りも優しいような気がします。 2021/6/20
スープの中に入れてもトマトの香りと上手く馴染んでくれます。
チリの量は手加減をして入れてください。脂肪分がないので諸に効きます。解らない程度に入れるのがミソです。チーズがない時は塩を少量入れて下さい。
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