短編小説
片目の男 作 中道 進
鎌倉時代の初期頃、源頼朝が生きていた時期である。人々も活気にあふれ商売人も忙しく駆け回っていた鎌倉、いろんな宗教も入ってきた。その中に、バラモン教を信じていた男もいた。その男は片目であった。その男は空腹であって道に倒れてしまった。その現場に偶然にいたのが龍之介であった。龍之介は、武士であったが、仏門に入っていた。その教えが、己の幸福は、他人に分けてあげるのであった。(龍之介 おいー大丈夫か)(バラモン あっちいてくれ)(龍之介 君は、片目なのか)(バラモン ははは、驚いたか)(龍之介 しかし、――私は仏門にはいって修業している。先生は、人のためになる事しろと言っている。何か、私にできることは)(バラモン ほんとうによいのか、だったらお前の片目をよこせ。ははは)(龍之介 うーーー目をかーー。よしーやるぞう)龍之介は何を言うのか、目をあげるというのか、しっかりしろ、どういうつもりなんだ。龍之介は、片目を取り、バラモンにあげてしまった。しかし、バラモンは目のにおいをかいだ。(バラモン この目は臭い、踏めつけてやれ)」(龍之介 あっ、何をする)バラモンは、龍之介の目を踏みつけて足で何回も踏みつけて逃げてしまった。(龍之介 ひどい奴だ、もう、修業はやめた、退転だ)おや、龍之介、修業やめてどうするんだ。悪道に落ちてしまうよ。修業だけはやり切れよ。しかし、修業をやめてしまった。かわいそうに。
月刊 KIBOU