短編
羅什 中道 進
1 後継者
山形 うちの会社は貿易関係では業績がよい。
牧田 山形さんが頑張っているからですよ。何しろ、山形さんの営業成績は優秀ですね。次の社長は山形さんですね。
山形 牧田、うれしいことを言うではないか。コヒーをもう一杯おごるよ。
(二人は新橋のコヒー店で話をしていた。二人が務める貿易会社の社長には子供がいないので、社員の誰かが社長になるという)
山形 しかし、ライバルがいるんだ
牧田 しかし、他は、腕がないですよ。営業成績もよくないです。
山形 羅什の歯か。
牧田 何ですか、羅什の歯とは。
山形 羅什とは、釈迦説いた法華経を漢語にしたんだ
牧田 たしか、法華経といえば、いろんな方が訳された。
山形 その通り、しかし、羅什以外は真実は訳されていない
牧田 法華経は多くの方を救い、末法では法華経でしか人々を救うことができないといいますね。
山形 羅什は、もし、私の訳した法華経が間違っていたら、死んだとき舌は焼かれるだろうと死んだ。
2 真実
牧田 その舌が焼かれずに残ったといいますね。
山形 羅什の正しさの証明だ。
牧田 それがどうして、後継者問題に関係があるのでしょうか。
山形 羅什は、決められていたのだ。
牧田 そうすると、うちの会社の社長は決められていると言うのですか。
山形 そうではない、難解を訳した、羅什の才能や素晴らしさが天から決められていたんだ。
(仏教は、インドの釈迦が説いたのであるが、方便、権教など多数の経典があるが、漢語に訳するのは難解であった。
牧田 しかし、それは仏典の話のことではないですか。
山形 まあ、そうであるが、うちの会社はライバルが多い。
牧田 山形さん、あなたは、会社にどれほど貢献しているのですか、あなたが居るから会社は成り立っているんですよ。
山形 しかし、いろんな人がいてな、上役にゴマをする人もいるし、なかなかだ
牧田 世間には正義があります、頑張ってください。
山形 場所を変えようか、居酒屋でも行こう。
牧田 賛成です。行きましょう。
(二人は夜のネオンの世界へ行ったのだった)
次回へ続く