先日の福井県小浜市への旅で、拝見したGREENLAND。
森久エンジニアリンクの森社長に伺った話を参考に、農業を考えてみました。
日本は四季があり、それぞれの季節に様々な作物を作ってきた。海と山が迫り、国土が狭いながら、その食文化の発達は世界に誇れるもの。
四季があり、国土の狭いところで出来る作物は貴重なもの。狭い田畑を耕し、固執し、気候に左右され、神に豊穣を願い、農業を続けて来た脈々とした歴史。それ故、水神話、土神話に彩られ、農作物は神からの授かりものであるという概念を引きずり近年まで。
ところが、森くんの開発した植物工場のシステムのお話を聞いて、かなりびっくりしました。そのシステムが、緻密な臨床検査や研究を重ねて生み出されたものだと知らされたからです。
実際に、いただいたフリルレタスを食べてみて、まず、その新鮮さと美しさに驚きました。想像していたより、美しく、味も素晴らしい。日持ちも格段に良いと実感(日数がたってから2つ目を食べてみた)。
日照時間、光の角度、気温と湿度、与えるべき栄養の水溶液。それらを、様々な条件で何度も実験を繰り返して、大きさ、形状、味までも操作できるのです。おまけにコストを押さえて、収穫の時期まで調整できる。
たとえば、日照の間に一度、低温に下げると苦みが増すとか、あるいは、与えるCO2の量と光量をある一定量UPすると半分の期間で収穫が可能になるというような。すごいなと感じました。
このように、日本でも、新しい試みがすでに始っており、世界に目を向けるとさらに、農業は変わりつつあるのです。
農業は露地栽培から始まり、温室栽培やヘリやセスナ機を使った大規模農業へ、そして前述の植物工場、さらにIT農業へ。
IT農業とは、
・GPSを用いた農業機械の自動操舵で農耕地の大規模集約化を進展
・センサ・ネットワークと呼ばれる環境制御装置(温度、湿度、養分、土壌などの情報を取得し、育成に最適な官業を自動制御
・自動選別装置に代表される農作業の自動化やパワーアシストスーツなどのロボット化
・効率的な集出荷の管理、ポス・システム活用など農産物流通の効率化
・農産物生産者への経営分析、生産技術、販売、物流、融資などの情報を提供し、共有農業クラウドサービス
などを指します。
これだけでも驚きですが、世界に目をやるともっとすごい国がある。
最先端の「スマートアグリ」駆使した成功例。それが、オランダです。
オランダは緯度が高く、日照時間が少なく、農産物の露地栽培に制限される。人工的に農産物の栽培に適した環境を創造して、国内需要を満たし、さらに輸出を行い経済を振興しているのです。
九州と同程度の面積にも関わらず、世界第2位の農業輸出国であるオランダ。その秘密は、世界最先端の「スマートアグリ」により、日本のIT農業や植物工場とは桁違いの規模と徹底ぶりで、トマトやパプリカなど、多くの作物を栽培。
東京ドーム何十倍もの敷地、光量やCO2濃度など500以上の項目で制御された人工繊維の畑。さらに、コンサルタントが研究機関の先端技術と農家を結び、常に最適な農業が追求されているそうです。
21世紀における人類危急の課題は、環境、エネルギーと並んで食糧であると言われています。
日本でも、食糧自給率の低迷、農業従事者の高齢化や後継者不足など、農業の抱える問題は山積。
調べていきながら、農業の技術が、IT技術によってすべて自動化されていっていることには、正直、びっくりしました。
こんなに進んでいるんだと感心した反面、同時に恐ろしさも感じられませんか。
人の手を離れ、自然から切り離された環境に置かれた野菜たち。それは生産性という名のもとに、機械的に、無理やり膨らまされた風船のような、一抹の不安感のようなものを感じるからにほかなりません。
人の力で成しえない、成長するに不可欠なプロセスを、一足飛びに飛び越えたものに不安はないのか・・。
科学では解明不可能な自然の力が、そこには確実に存在するのでは・・と。
昨今、TPP交渉への参加に揺れる日本の農業においても、各地で“日本型スマートアグリ”構築の模索が始まっているそうです。
畜産や漁業においても、ビールやドングリを食べさせて、美味しい牛や豚などの家畜を育成したり、従来なら不可能とされてきたマグロやカンパチやクエの養殖まで可能になった時代へ突入している。
日本独自の新しい農業を確立してもらいたい。
不可能を、次々に可能にしていく人間の欲望。
強烈なしっぺ返しが、待っていないことを願うばかりですが・・。