BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説1-2「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 20:54:26 | ★ディスティニー1章
 バンドが解散してしまえば、諒は本名の「日向(ひゅうが)諒」の名義でソロ活動をすることが決まっている。
 解散に最後まで反対していた麻也の今後は、全くの白紙だった。
 いや、いろいろとオファーはあったし、自分でプロジェクトを立ち上げることももちろんできた。
 しかし、麻也には何も決められなかった。
 とにかく混乱したまま…いや、納得できないまま解散の日を迎えてしまった、そんな感じだった。
 日付が変わり、今日でバンドとしての契約も切れる。
「あと4日で21世紀か…何だか信じられないよね。」
 窓の外の漆黒の闇に目をやって、麻也は何となく言った。
 が、少し寂しくなる。
 他のメンバーは、新しい世紀に、生まれ変わるように華々しく新プロジェクトを展開していくのに、自分は…

★BLロック王子小説20-18「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 20:40:53 | ★ディスティニー20章
 すると、麻也はまたまたウキウキと、
「諒、あんよのアレ、出して」
(あのアンクレット持ってきてのか、ここまで…)
 しかしさすがにこの状況では、諒も喜べなかった。
 それでも、仕方なく諒は麻也のバッグから例の誕プレのアンクレットを取り出して渡した。
 それを勝手に受け取った三田は、
「わー、素敵!…ペリドットなんだ…いやぁ、やっぱり全部本物で麻也ちゃん飾りたかった…」
すっかり出来上がった麻也は得意気に、
「諒がくれた誕プレ。諒の目の色とおんなじなんらよ…」
ペリドットとゴールドの、細いながらも美しいアンクレット。
 三田はますます盛り上がり、
「諒くん凄い!何より麻也さんだけだわ、これ似合うの…諒クンの愛を感じる…」
さらに麻也は得意そうに、
「諒ったら、これつけた俺撮るためこんな立派なカメラ買っちゃって…」
「違うじゃん。麻也さんからのプレゼントだったんじゃん。」
 居合わせたみんながびっくりした。
「麻也さんからのプレゼントなの! すご~い!」
 そんな妙な空気の中、仕方なく諒は麻也の写真を撮り始めた。
 麻也も調子に乗っていつものフォトセッションのようにあれこれとポーズを取り始める。
 まあ酔っているので可愛い瞬間もあるけれど…イマイチ…
 ポーズをあれこれするうちに麻也は、
「疲れちゃった。諒、もう寝ようよぉ~」
 公衆の面前でなんてことを、と諒は焦ってしまったが、
「いやーん、可愛い~」
と女性陣はメロメロだ。
「じゃあ、私たちもアクセサリー外すわね」
 ありがたいことに三田たち女性チームは自分たちがつけたアクセサリーを回収して、ティアラだけは置いていった。
「それじゃあ諒くん、明日写真楽しみにしてるわね。おやすみなさい~」
と、三田たちが部屋を出て行くところで鉢合わせたのが、鈴木と真樹と須藤だった。

★BLロック王子小説1-1「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 06:25:13 | ★ディスティニー1章
 時計が0時をまわった。

「俺達の魔法がとけちゃったね…」
 麻也(まや)がそう言うと、諒(りょう)は答えに困ったようだったが、シャンパンのグラスをガラスのテーブルの上に置くと、
「ああ、まあね。」
と彼らしくもない歯切れの悪い返事をした。
 イギリス系の血も流れている、研ぎ出されたような美貌と眼力がずば抜けた、カリスマボーカリストの諒。
 そしてその横に立ち、彼の恋人としてステージもプライベートも助け合ってきた中性的な美貌のギタリストの麻也…
 今夜はグラマラスな二人のロックバンド「ディスティニー・アンダーグラウンド」の東京ドームでの解散コンサートの夜だった。
 一次会だけの打ち上げもすませ、2人は今、すっかり疲れてしまって、スーツ姿のまま、ドームホテルのスイートルームのソファの上で脱力していた。
 麻也はぼんやりと諒の茶色の短い髪を眺め、諒は麻也の肩までかかるふわふわの黒髪を見ていた。

★BLロック王子小説20-17「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-24 21:31:44 | ★ディスティニー20章
「諒くん気にしないで。悪いけど全部フェイクだから。なくしても大丈夫だから。」
と、三田は言う。
(いや、そういう問題じゃないんだけどな…)
「前からやってみたかったの。酔って寝てる人の顔に落書きするみたいに、麻也ちゃん完全王子化計画よ!」
 いやこれが事前に聞いていたことだったら、そしてこんな遅い時間じゃなかったら諒も大賛成だったが 。
「何で事前に言ってくれないの!」
思わず諒が叫ぶと
「えー、だってー、疲れてる~」
と麻也は訳のわからないことを言い、ノリノリの三田の方はこう叫ぶ。
「誰かカメラ持ってない?」
 諒は知らないふりをしたが、麻也はウキウキと、
「諒が持ってきてるよ。ポラロイド2台も。」
「えー、諒くんお願いー!」
「嫌です! こんな遅くに! それに写真撮っても見せたくないよ!」
諒がそう言うと、
マネージャーの鈴木がいないせいなのか、酔っていないケンが、ローディーだからと責任を感じたらしく、
「いややっぱりそんな写真が流出したりしても困るでしょう」
と諒の肩を持ってくれた。
 しかし三田やアシスタントたちや麻也本人が聞く耳を持たない。
「大丈夫。絶対に他の人になんか見せないし、大事にしまっておくから」
 酒に慣れない三田とその若いスタッフに写真を渡すなんてとんでもない、と諒が怒りを隠せなくなった時、またケンが助け舟を出してくれた。
「もう遅いから、写真は明日2人に選んでからにしてもらいましょう」
 それは酔っ払いたちにはいい提案だった。その一方で、三田の新人の女性アシスタントは時間が気になりだしたらしくほっとした表情を浮かべた。それが目に入り、諒も少しほっとした。しかし麻也たちが納得したので仕方なく、諒はクロゼットからモノクロ用のポラロイドカメラを取り出した。


★BLロック王子小説20-16「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-24 20:44:27 | ★ディスティニー20章
 諒が一人で悶々としていると、鈴木から、麻也を二次会とは別の店で無事見つけたと電話がきた。しかし、その声が暗いので、諒にはピンときた。
 やっぱり麻也はかなり飲んでいるのだろう。諒は鈴木が気の毒になって、
Гごめんね、もう鈴木さん帰って休んで…麻也さん潰れてるんならその連れに後は任せれば? 飲んじゃいけないのに飲んでんだから…もういいよ」
その言葉に鈴木は驚いたようだった。諒自身も自分の言葉に驚いた。
 しかし鈴木が電話を切る時は曖昧な口調だったので、諒は少し安心した。責任感の塊のような彼は、麻也を連れ帰るだろう…
 (それに引き換え俺は…)
麻也が飲んでるのはそれだけ麻也も気分転換したいというサインだろうに…
 しかし、その自分の考えについていけないほど、諒は頭も体も疲れていた。
 しばらくすると、誰かがエレベーターから降りてきたようで、酔っ払いたちなのか廊下から女性も混じっているような騒ぎ声が…
 嫌な予感がした諒が急いでドアを開けると…三田たち一行と、ケンに背負われた麻也のご帰還だったのだ。
「諒く~ん、ただいまぁ~」
 叫びながら入ってきたのは三田。いい気なもので、みんな上機嫌だった。
 麻也はなぜか白のひらひら王子シャツに変わっていたが…
 その頭にはいかにも王子様らしいダイヤのティアラがつけられていた。それは麻也の漆黒のふわふわのロングヘアに良く似合っていた。
 それは確かに可愛らしかったが…
(ああそりゃ可愛いさ……)
それなのに麻也は顔をよく見せてくれない。
(……って何で俺は求めちゃってるわけ?)
…惚れた弱味がこんな時に出るなんて…
 そんなフクザツな気持ちの諒にはお構いなく、すっかり酔ってハイになった三田が、
「マグネットピアスだったんだけど…あら、片方落としちゃった?」
 ベッドに座らせられた麻也は、ゴールドやジュエリーのブレスレットやネックレスをじゃらじゃらつけられていた。