あおこのぶろぐ

オペラ、テレビ、日常など、気が向いたときに書いていきます!

生&配信で堪能 東京春祭「パルジファル」

2025-03-30 20:17:52 | 日記
ワーグナー好きの私ですが、「パルジファル」は、宗教臭い(という言い方は適切ではないかもしれないけど)ところがちょっと苦手で、今一つ好んで聴いていなかったのだけど、びわ湖、二期会で上演された2022年に聴きまくり、DVDも複数買ったりして、かなりはまりました。
3年前のブログびわ湖公演の際に書いたブログはこちら。
https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/a432edaf7aa4f9e149908403e6ac8bd2


ということで結構いろいろなプロダクションを映像も含め観聴きしたけれど、今でも「パルジファル」というと真っ先に思い浮かぶのは、2012年の二期会公演(グート演出、飯守泰次郎指揮、アムフォルタスが黒田博さん)のラストシーン。
それ前後に観たどの公演より、今も強く記憶に残っていたりします。
(それにしても二期会、カルメンは25年ぶり上演だったけど、その間にパルジファル2回上演してるのね)


春祭ワーグナーシリーズ、昨年書いたように、やりくりして3/27(木曜日)、会場に足を運びました。
去年の「トリスタンとイゾルデ」の感想はこちら↓
https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/2e418b9e5aae6224dbc2d08a7dade918

生ヤノフスキ、いつまで観られるかわからないし(いや、でも来年からまたリングやります、と言っても完遂しそう)、去年の「トリスタン」を観て、スチュアート・スケルトンを生で観聴きしたいと思ったので。
が、また4階のL側。カルメン2日目よりは正面寄りだったし、装置やはっきりとした演出があるわけではなかったけど、かなり死角もある席でした。

日曜日、実は用事があったのだけど、正面から観たいし、もう一度聴きたくて用事をパスして配信も観ることにしました。

スケルトンはやっぱりチャーミング(風貌的に西田敏行さんを思い出しました)。
おバカちゃんから騎士への変貌も見事だったし。殆んど楽譜を観ず、演技していました。日曜のほうがより良かったかな。
扮装、演出ありの公演でも観てみたい。

ただ、昨年も書いたように、巨漢でいらっしゃるので、動きが制限されそう⋯⋯。健康には本当に気をつけて! 世界的歌手には、栄養士とかフィジカルトレーナーとかついて管理してあげればいいのに、と思ってしまいます。


グルネマンツのタレク・ナズミも良かった。声も好きだし、パルジファルらを導く包容力と貫禄も感じられた。そしてかっこいい。歌わない時も、ずっと歌っている人を見ていて、役に入り込んでいたのも良かった。

クンドリのターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーも声、パフォーマンス、ヴィジュアル、役にぴったりでとてもよかったです。

アムフォルタスはクリスティアン・ゲルハーヘル、素晴らしい歌唱で聴きごたえあったのだけど、ずっと楽譜を観ているのが気になってしまった。初めて歌うわけではないだろうに。
スケルトンは「ほほ見ない」、ほかの人たちも、時々見る、くらいだったのでそこはちょっと残念だった。

びわ湖のセミステージや、東京シティ・フィルのオーケーストラルオペラや、ティーレマン指揮サントリーホールの「ラインの黄金」など、演出付きのものも観てきましたが、これは「演奏会形式」。別にいいじゃんと言われそうですが、私は、このシリーズは歌手の方々の演技等にも注目してきました。
去年のスケルトンのトリスタンやブリン・ターフェルのオランダ人、フォークト様のローエングリンやヴァルター、ペトラ・ラングのオルトルート、エレートのベックメッサーなど、目でもパフォーマンスを楽しませてくれていたので。


ティトゥレルの水島正樹さん、舞台上に現れていたのか初日の現地ではわからなかったけど、やはりいなかったのね。
配信で聴くと聞こえ方がやはり違う。でもいい声で印象的。見た目がかなりお若いので、役のイメージを考えたら現れなくて正解かな。

そしてクリングゾルのシム・インスン。声はいいし、たたずまいもかっこいいし、悪役好きの私はすっかり魅せられました♪

その他の日本人歌手陣も間違いのない陣容。
その中で第3の小姓・土崎譲さんが初めて聴いたんじゃないかと思いますが、ワーグナーヒーローに合いそうな声で、印象に残りました。

合唱団、東京オペラシンガーズはいつながら安定しているし、N響もさすが。
開場前の外でのファンファーレからもう泣きそうになった。ただ、外だからか音が固く聴こえ、第1幕も最初はなんか溶け合わない感じがしましたが、だんだん乗って来たようで、2幕3幕はもうとにかく没頭できました!

そしてヤノフスキ。
86歳でこの長い曲を立って指揮するだけでもすごい! 演奏は予定されていた時間より早かったけど、不必要に速かったとは私は思わなかったし。

余談ですが、昭和女子大学人見記念講堂こけら落とし公演がカール・ベーム指揮ウィーンフィルのベートーベンの交響曲第7番で、DVDを持っていますが、あの時ベームは86歳だったらしいけど、椅子に座って指揮していました。


拍手のタイミングはヤノフスキが決める、という感じですが、相変わらずフライング拍手した人がいました。学ばないのかな⋯⋯。

木曜は第1幕のあと、ヤノフスキは拍手を受けず降りましたが、日曜は振り返って拍手を受けていました。

また、幕の終わりに拍手もそこそこに出た人が結構いましたが、もったいないと思う。日本人歌手とクリングゾルは終幕のカーテンコールにはいなかったし。2幕の後はパルジファルとクンドリも登場。トイレが我慢出来なかったなら仕方ないけど⋯⋯。
ロビーの椅子を取りたい気持ちもわかるけどね。

ちなみに、木曜日、第2幕終わりの静寂の中でおなかが鳴っちゃった人がいて、それはさすがに気の毒だと思いました。おなかはコントロールできないものねえ。


演奏会形式ではありますが、「演出」的なものありました。
第1幕の後半の合唱部分、グルネマンツが歌わないパルジファルを連れて登場。その後二人で椅子に座って1幕終わりまで聴いていたり、終幕でグルネマンツとクンドリが脇に登場したり。
誰の発案かわからないけど、それも「演出」ですよね。
ちなみに第3幕、私の席からはクンドリがまったく見えなくて、配信で「いたんだ」と思った。そして、パルジファルとクンドリが見つめ合っていたということを、配信で知りました。
そしてパルジファルがクンドリを見つめる目ったら!
配信でもグッと来ました。

1階にいたら5階席からの合唱も、天から降り注ぐように聞こえたんだろうな、とか。

なので、来年はS席で観られるよう頑張ろう、と思ったのでした。


とにかく満足度が高かった今回の公演。

自分の葬式の時、出棺では「マイスタージンガー」終幕で送ってもらい、火葬場では「神々の黄昏」終幕を流して欲しい、と思っている私だけど、葬式前に地球滅亡を迎えるとしたら、最後の日には「パルジファル」を聴きたいかも、と思いながら開場をあとにしたのでした。





二期会&新国立劇場「カルメン」感想 演出編 そして客席で起こったある悲劇について

2025-03-07 20:58:39 | 日記
「カルメン」、久しぶりに観たけどやはり名曲揃い。
前奏曲はテレビでもあちこちで流れるけど、今はやっぱりすぐ思い出すのは「オモウマい店」かな。

さて、二期会のイリーナ・ブルックの演出は、場所を特定しないものでした(近未来だとか)。だけど作品のイメージは損ねてはおらず、私は面白く観ました。
今回セリフもレチタティーヴォもない、圧縮版とも言える上演。なので歌ってない人がお芝居したりと、舞台上あちこち目が離せません。

1、2幕と3幕、4幕の2部構成。1、2幕に舞台下手に、2階建ての小屋(櫓?)があり、そこの2階で結構な動きがあります。
モラレスがホセに、ミカエラが来たことを伝えたり、ホセが「ハバネラ」を歌うカルメンに釘付けになっていたり、スニガが寝ていたり、そのほか本来のト書きにはないことも起こったりします。

初日、カルメンの投げた花が2階にいたホセに届かず、落ちた花をホセが脱兎のごとく走り降りて拾いに行っていたのだけど。やっぱり2階でキャッチするのが本来の演出なのかな、2日目注目しよう、と思っていたのですが。
22日は上の階のレフト側の席だったのだけど、その小屋自体が全く見えない!
サイド側の席ということで、ある程度見切れることは覚悟していたけれど、えっ、こんなに完全に見えないもの?
あれやこれやが起こっているはずなんだよな……と想像するしかない……。

つまり、私の近くの席にいた人たち、しかもその日1日しか観に来ていない人たちは、あの小屋で何が起こっていたか見えない、というか、あの小屋自体あることも知らない、ということになります。それってどうなのでしょう?
すべてが見えてこそ「演出」も評価出来るというもの。なのに、死角があっては一部の人に演出意図が完全には届かないということになります。

新国立劇場のZ席なら、そういうことも覚悟しますが。

その点は本当に残念で、もし再演があれば、小屋の位置を変えるなどしてほしいと心から思います。


3/6の新国立劇場は4階席の最後列から鑑賞。正面ゾーンでも、高い階からだと装置によっては奥のほうが見えなかったりするので、奥行きがある舞台と聞いていたし見えないところもあるかもと心配していました。ですが、後ろに映っていたモニターはよくは見えなかったけど、舞台全体良く見えました。
アレックス・オリエの演出は、装置も人の動きもあまり死角がないものでした。
第3幕のカルメンの着替えシーンとかはL側の人は見えなかったかもしれないけど、新国立のサイド席はその辺は覚悟しなければいけないし、許容範囲かと。ミカエラのアリアシーンも両サイドで歌われ、ちょっと見えにくかったかも、ですが。
死角が少ないのと、舞台設定がはっきりしているので、二期会のブルック演出より一貫性があってわかりやすく、納得出来る部分も多かったです。

二期会のブルック演出は、こうしてみるとやはり上級編なのかな。民衆も含めた登場人物の動き・演技を観るのは興味深かったけれど、衣装のせいなのか、一貫性がなく、舞台設定を観る人の判断に委ねているとも言えるけど、ふわっとぼんやりしたまま終わった感じもあります。
でもこのオペラの、主要登場人物4者の思いのベクトルが絡まる恋物語としての部分は、(歌手の演技も含め)二期会版(特に初日)のほうがリアリティがあったかな。


3月6日は終演後、大野和士芸術監督の2025/2026シーズンラインアップ説明会も聴いて来ました。聞き手の奥田佳道さんが、ワーグナー作品がないことに何度も触れていましたが、その点は確かに残念。でも来季もお金と時間をやりくりして観に行きたいと思います。




そして最後に。書いていいものか迷いましたが。
3月6日の新国立劇場で、長い鑑賞人生でも初めての「悲劇」に遭遇しました。
第4幕(この公演では3幕2場)の大詰めで、客席でも、ある意味舞台上以上の修羅場があったのです。
何があったんだろうと気になった人も多いと思うので、近くにいた私が敢えて書きたいと思います。

開演ちょっと前にお御足の悪い高齢の男性と、付き添いの男性が来ました。4階席、後ろから2列目の通路際の席だったらしいのだけど、劇場の係員の方も手伝っていたのですが階段に苦労していて、そのすぐ後ろ、最後列の通路際の席の女性が好意で換わってあげていました。付き添いの男性はすぐ隣は取れなかったようで、一つ置いた横の席、つまり後ろから2列目の通路から3番目の席だったようです。並んだほうがいいのでは、とその女性が提案し、最後列の通路から2番目の人も付き添いの人と席を換わってあげたのでした。係員の方もそれをちゃんと把握していました。
「みんな優しいなー」と思って見ていたのですが。

つまりお御足の悪い高齢の男性が最後列の通路際、付き添いの人がその横に座ることになりました。
その高齢男性、前半は曲のあとに「ブラボー」と叫ぶなど、ご満悦だったのですが、第4幕(第3幕2場)のカルメンとエスカミリオの二重唱あたりで、突然喋り出しました。
「なんでこんなに暗くしているんだ」そんな感じだったと思います。その後も喋り続け、付き添いの人が高齢男性の袖か腕を握るなどして黙るように言いますが、ヒートアップします。
「そうやって見張っているのか」みたいなことを言い出し、席を立とうとします。
でも足が悪いのですぐに動けません。そこで付き添いの人はさっと席を立って、高齢男性を抱えて外に出ました。劇場係員の方も出口のところにいたので、すぐに扉を開けて助けていましたが、抱えられた高齢男性は大声で「あ--!」叫びだします。そして客席から出ながら「助けてくれー!」と。
緊迫したシーンの中、その声はおそらく劇場中の人が耳にしたでしょう。
(コンヴィチュニーの演出か? と思った人もいたかも??)
扉が閉まってからもしばらく声は聞こえていました。

これは私の予想ですが、あの高齢男性は第3幕途中で眠ってしまったのではないかしら。
目が覚めた瞬間周りは真っ暗で、今どこにいるかわからず、パニックになったのでは。そして抱えられたことで怒りと恐怖で一層パニックになり、「助けてくれー」と叫んだのでは。
あと少しだったのに。付き添いの男性が本当に気の毒でした。

最初に最後列に座っていたお二人が席を換わってあげていなくて、もともとの席に座っていてあの状況になったら、もっと周りに迷惑をかける大悲劇になっていたかもしれません。
ということもあり、改めて席を替わってあげていたお二人を讃えたいと思いました。

あの高齢男性もオペラが好きで、いろいろと弱ってもオペラを観たいと思って足を運んだのだろうに、と思うと胸が痛みます。そして付き添いの方の焦りを思うと……。

私もいくつになっても、出来ればオペラを観に行きたいと思っているのですが(お金があるかはわからないけど)……、いろいろ考えてしまいました。


東京二期会と新国立劇場の「カルメン」

2025-02-27 23:45:37 | 日記
東京二期会を初日の2/20と二日目の2/22、そして新国立劇場は4日目の3/6を鑑賞しました。

上演演目がかぶる、というのはこちらでも再三書いてきましたが、今年はビゼーの没後150年ということで、かぶるのも納得します。が昨年の「トリスタンとイゾルデ」同様、時期がまるかぶり。

「カルメン」は、実は私が初めて生で観たオペラ。
1980年の二期会公演(小澤征爾指揮!)。母親に連れて行ってもらいました。その後も何度か観ているし、聴き馴染みのある作品ですが、ものすごく久しぶりの生鑑賞でした。私の中で、観たい度ランキングでは高くないので。

二期会自体、25年ぶりの上演なんですね。

今回は、「ドン・カルロ」のエボリか素敵だった加藤のぞみさんのカルメンなので、「観たい!」と思い足を運びました。
別キャストの和田さんも気になるなあと思い、2日目のチケットも追加購入。
結果的に和田さんが2日目は体調不良で降板、連続で加藤さんのカルメンを鑑賞することになりました。
結果的に加藤1日空けて3連投になったわけで、お疲れ様でした!

新国立劇場の「カルメン」は過去9回も上演されているけれど、一度も観たことがなかったのです。
でもこのプロダクションは、初演の時の写真とかを観て興味を持っていました。
二期会の「カルメン」を観て、こちらのアレックス・オリエの演出も観たくなり、足を運びました。


ということで、20年くらい観ていなかったのに、この2週間のうちに3回鑑賞したことになりました。


1980年公演のチラシ。よく残っていたもんだ。



まず二期会歌手の方々の感想を簡単に。

加藤さんは低音から高音まで無理なく響く声で、心地よく聴けます。「こういう奔放な女いるよね」という感じで、ドギつ過ぎずチャーミングなカルメンでした♪

初日のドン・ホセは城宏憲さん。
登場シーンから、真面目な若者という感じで、でもカルメンの「ハバネラ」の時からもうカルメンに釘付け。色気ムンムンのカルメンにイチコロという感じもよくわかるし、また、カルメンがホセに惹かれるのもわかる。
ホセが転落していくところ、そしてカルメンを殺してしまうところ、そして殺してしまって嘆くところも、納得出来るというか。
もちろんイリーナ・ブルックさんの演出意図に基づいてなのでしょうが、このお二人の好演により、違和感なく感情移入出来ました。

2日目のホセ、古橋郷平さんは、見た目的にホセのイメージとはちょっと違ったかな。2014年の「チャールダッシュの女王」で注目して、「リゴレット」も観たのだけど、当時はまだ粗削りといった印象でした。順調に経験を積んでいるようで嬉しかったです。何と言っても長身でかっこいいテノールは貴重ですから。今後一層楽しみです!

今井俊輔さんのエスカミリオは、まあとにかくキザ! 歌も存在感抜群でした。(カーテンコールでも)
与那城敬さんも二枚目でお色気ムンムン(『午後の曳航』も素敵だった)。エスカミリオはこうでないとねえ。

ミカエラは宮地江奈さん、七澤結さん、どちらも良かった。
宮地さんは素朴でピュアで、ミカエラらしいミカエラでした。
七澤さんは情熱的なミカエラ、という感じ。
七澤さんは「デイダミーア」、「コジ・ファン・トゥッテ」に続き、今年度3回目。デイダミーアもデスピーナも演出上バタバタ動いていた印象でしたが、しっとりと心に響く歌唱で、特に大きい拍手を浴びていました。

スニガ、モラレスも存在感があり、レメンダード、ダンカイロ、フラスキータ、メルセデスの密輸団、皆さん良かったけど、初日組のほうがキャラが立っていたかな?

合唱、NHK児童合唱団も大活躍でした。ダンサーの方々も様々な役割、シーンで大活躍でした。

そして沖澤のどかさん指揮の読響も、ドラマティックに音楽面で牽引していました。カーテンコールでも沖澤さん、ひときわ大きな拍手を浴びていました。


そして新国立劇場のカルメン。
カルメンのサマンサ・ハンキー、とにかく動きが多く出番も多く、大変だったろうなあ。ラストの殺されるところは鬼気迫るものがありました。
ホセのアタラ・アヤン、声はいいけど、うーん、今一つカルメンに惚れるところも惚れられるところも今一つ納得感がなかった印象。
エスカミリオのルーカス・ゴリンスキーは特に3、4幕の歌が良かった。でもM○ゲなのはいいとして、おなかが出ているエスカミリオはちょっと私の中でマイナス。
伊藤晴さんは、ミカエラは役不足では? と思うくらい、歌と存在で光っていました。でも「ホセ、ミカエラだってきれいでお色気もあって、カルメンよりいいんじゃない??」って思ってしまった。

そのほかの皆さんも実力者が脇を固めています。
合唱も安定。
デスピノーサ指揮の東響の演奏も、4階席にもいい感じに響いて来ました。


プログラムに、二期会、新国立共に過去の公演の情報が載っているのですが、見ると20世紀の二期会公演はすべて訳詞上演でした(主に宗近昭=柴田睦陸氏)。
今回の公演は共に原語上演。二期会は台詞、レチタティーヴォなしでしたが、新国立は台詞(フランス語)あり。そして噂には聞いていたけど、部分的に日本語台詞もありました。芝居的にはわかりやすいけど、一貫性はない。

新国立は主要キャストが外国人で、演出・スタッフも外国人。外国人歌手もフランス語はネイティブではないわけで、発音的にどうだったのかはわかりません。
二期会も外国人演出家で、“ワールドブレミエ”とうたっているし、原語上演も今時は当たり前かと思います。
でも、年末の福生「こうもり」で、訳詞上演の良さを再確認したので、せっかく定番となっている訳詞もあるのだから、「カルメン」もまた訳詞上演して欲しいと思いました。


(演出・その他編に続く)



「さまよえるオランダ人」year その1 新国立劇場

2025-01-30 23:00:09 | 日記
今年は新国立劇場、兵庫、二期会で「さまよえるオランダ人」が予定されており、オランダ人イヤーになるわけですが。

新国立劇場「さまよえるオランダ人」2日目(1月22日)を鑑賞しました。

こちらのブログでも再三オランダ人ネタは書きましたが、シュテークマンの演出は、「きちんとオランダ人が救済される」ところが気に入っています。

自己犠牲と言うとゼンタのほか、ブリュンヒルデ、エリーザベトなどが浮かびますが、いずれも幕切れの音楽が素晴らしく、そこでカタルシスを味わいたいわけです。
ビミョーな演出で、「えぇっ?」とか思いながら終わって欲しくないので。

他のオペラ作品でも自己犠牲は出てくるけど、自己犠牲と聞いて世代的に思い出すのが、「魔法使いサリー」の雪だるまだなあ。小さい頃泣いた記憶があります。


前にも書いたように、このプロダクション、初演の時はラストに感動したのですが、その後はそうでもなく⋯⋯。
で、今回、「そうでもなかった」ニキティン氏のオランダ人。
ニキティンが私を感動させられるか、という逆リベンジ?鑑賞、の予定でした。が初日、衣装合わせまでしたのに降板、というニュースを見ました。
チケットを買っていた22日はどうなるか、と思いましたが、初日公演に続いて、河野鉄平さんが代役を務められました。 
結果的にニキティン氏は25日公演のみの出演だったそうです。
せっかく来日したのにね。

簡単に感想を書きます。

オランダ人は、歌とか声とかの点で、春祭のターフェルの圧倒的な存在感が忘れ難く、河野さん、「ちょっと違うかな」と思うのですが、でも河野さんの“ファントム”オランダ人は素敵。ラストもしっかり感動出来ました。急遽の登板で大変だったでしょうに。

松位浩さんは風貌も含めダーラントにぴったり。

エリザベート・ストリッドのゼンタはアクティブで、ちょっと狂信的なゼンタを好演。

ジョナサン・ストートンのエリック、長身だし、なかなか素敵でした。声も良かった(最後はちょっとお疲れ気味でしたが)。

伊藤達人さんの舵手、マイスタージンガーのダーフィットを思い出させるチャーミングな徒弟系キャラでした♪

2022年は声だけだった金子美香さんがマリー。今回演技ありでしたが余裕の演唱。

マルク・アルブレヒト指揮の東響も私は満足でした。

そしてなにより合唱に圧倒されました。カーテンコールでもひときわ大きな拍手を浴びていました。


夏の芸文のミヒャエル・テンメ氏の演出も、王道路線ではないかと思います。
二期会の深作健太さんはおそらく王道ではないだろうけれど、後味は悪くはないのではないかと想像しています。

演出も含めそちらの公演も楽しみにしています。



豪華キャスト! 福生市民オペラ「こうもり」

2024-12-29 17:02:02 | オペラ

今年最後のオペラ鑑賞は福生市民会館の「こうもり」(12月28日)。

ポスターを某駅で見掛けて、「えっ! なにこれすごい豪華キャスト!」と釘付けになり、年末の忙しい時期ではありましたが、やりくりして行きました。

以前ブログに書いた二期会「こうもり」の時、アイゼンシュタイン役だった又吉秀樹さんプロデュース(公演監督、台本、フロッシュ役)公演。

面白くないわけがない。

しかもロザリンデの田崎尚美さん、アイゼンシュタインの大沼徹さんをはじめとして、又吉さんが公演の最初に言っていましたが、まさに日本を代表する歌手の方々。

ファルケが大川博さん、フランクが三戸大久さん、オルロフスキーが五歳の谷利春瑠ちゃんと吉田連さん、アルフレードが中島康晴さん、アデーレが肥沼諒子さん、イダが高橋広奈さん、ブリントが高橋淳さん、演出は吉野良祐さん。

オーケストラはなく、河原忠之さんのピアノ伴奏。声楽伴奏と言ったらこの方です! まさに大活躍でした!

オーケストラでないから低料金だったのもありがたい。

また、日本語上演だったので、字幕を付ける必要もない。

合唱は「又吉秀樹のこうもり合唱団」ということで、おそらく地元のアマチュアの方々でしょう(熟女中心)。

 合唱団が第2幕で合唱を披露しましたが、私も合唱で歌ったことのある「怪獣のバラード」! 懐かしかった~。

また青梅の少年少女合唱団(正式名称はわかりません)の歌もあり・・・。

市民オペラならではのみんな楽しめるとってもいいステージでした。

セリフにも地元ネタがちりばめられていました。


ヒロイン・田崎さん、普段役柄的に重めの役が多く、私もいろんな役を観てきましたが、ロザリンデ、とても楽しんでいる感じでした(胸がポロリしちゃわないかドキドキした)。

そしてアイゼンシュタインの大沼さん、普段ワーグナー作品とか、シリアスな役が多い方ですが、これまでも明るいキャラクター、演技派のところが垣間見られていました。水を得た魚のようにイキイキして見えました♪

怪獣のバラードを合唱団にまぎれるように歌っていたのも良かった。 

 

中島さん、通常のアルフレード以上に多くの歌を歌い、まるでリサイタルのようでした♪

三戸さんはオペラ歌手らしい風貌の方ですが、このフランク役もピッタリ! 

アデーレの肥沼さん、小柄で躍りながら歌う姿は、「ブギウギ」のスズ子を思い出させました。歌も演技も「確か」でした♪   

ブリントの高橋さん、このキャスティングも豪華! と思ったら、福生在住なのですね!

イダの高橋さんも、これから活躍の場を広げそうな方。

又吉さんは公演監督、フロッシュ役で盛り上げ、そして又吉さんと同じ「それいけ! クラシック」のメンバー、ファルケの大川さん、オルロフスキーの吉田さんも大活躍!

Youtubeで今回の公演、配信してくれるかしら。

そして「本物の」オルロフスキー、春瑠ちゃんも熱演! お歌も聴きたかったのなあ。


シンプルな装置とプロジェクションマッピングでうまく舞台を表現。吉野さんの演出も王道かつ初心者にもわかりやすく、それぞれのキャラクターを生かしたもので楽しかった。どこまでが演出? と思うところも多々ありましたが。

 

そして以前書いたように、私はオペレッタは日本語上演希望派。

 https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/f4a221ba8a940fcb869b412c6d491153

こちらのタイトルに使った「憂い悩みすべて忘れて・・・」の歌詞を聴いて、「そう、これよ!」と思いました。

福生市民オペラ第一弾ということですが、こういう公演によって、オペラの裾野が広がると思うので、これからも注目しています。

第二弾以降も都合が合えば観に行きたいです。




ちなみに、私は多摩地区の高校出身なので、福生市民会館は高校生の時、合唱祭でステージに立ったこともあり、隣の球場には野球部の応援に行った思い出の地。

うん十年ぶりに行ったけど、いやー懐かしかった。