沼尻竜典芸術監督のワーグナー10作品目、びわ湖での最後のオペラ指揮ということで、プログラムにも過去の上演記録が載っています。
3月の私のびわ湖遠征も今年で7年目。
以前描いたように、沼尻さんのワーグナー指揮作品は「トリスタンとイゾルデ」以外観ていましたが、それは同じプロダクションの公演が神奈川でもあったからです。
しかしリングからはびわ湖のみの公演となったので、「ラインの黄金」から遠征を始めたというわけです。
「マイスタージンガー」はもともと好きな作品だし、絶対行こうと決めていたので、発売初日にチケットを取ったのですが、公演日が近づいて改めてキャストを見てあまりの豪華キャストにビックリ。
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配役
ハンス・ザックス
青山貴
ファイト・ポーグナー
妻屋秀和
クンツ・フォーゲルゲザング
村上公太
コンラート・ナハティガル
近藤圭
ジクストゥス・ベックメッサー
黒田博
フリッツ・コートナー
大西宇宙
バルタザール・ツォルン
チャールズ・キム
ウルリヒ・アイスリンガー
チン・ソンウォン
アウグスティン・モーザー
高橋淳
ヘルマン・オルテル
友清崇
ハンス・シュヴァルツ
松森治
ハンス・フォルツ
斉木健詞
ヴァルター・フォン・シュトルツィング
福井敬
ダフィト
清水徹太郎
エファ
森谷真理
マグダレーネ
八木寿子
夜警
平野和
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特に、夜警が平野和さんって! なんて贅沢な!
平野さんは、新国立劇場でレポレッロを演じられたのを観て、日本人離れしたスケール感の演唱に衝撃を受け、それ以来注目していました。
少しの登場でしたが、存在感抜群でした。
マイスターたちもなんて豪華!
公演前の動画で各出演者がそれぞれの役について語っておられましたが、それらが感じられる役作りがかいまみえ楽しかったです。
特にモーザー役・高橋淳さん。演技派、個性派の高橋さん、今回も目が離せなかったです。
ポーグナーの妻屋さん、ほんとにもう、間違いない! 「エーファのお父さん」をやや存在感を消して演じていらっしゃいました。
大西さんのコートナー、思った通りよく通る声で歌われ、茶目っ気もあるコートナーでした。1981年の二期会公演でコートナーを歌われた大島幾雄さんも朗々とした声で印象深いですが、大島さんを思い出しました。初日(2日)は歌の教則のところでおまけ歌唱も。
ヴァルターは福井さん。理想のヴァルターかというと、うーん、となってしまいますが、今日本でこれだけ歌えるテノールはそうはいないでしょう。日本人でなくても、本当に満足できる(=そりゃあエーファが惚れちゃうよねえ、と思える)ヴァルターは、そうはいない。私が観た限り、2013年東京春祭のフォークト様くらいでした。
2021年にローエングリンを歌う予定だったチャールズ・キムさんが今回ツォルン役。ちょっともったいない感じ。ヴァルターのカヴァーだったそうですが、彼のヴァルターも聴いてみたかったです。
エーファの森永さん、やっぱりすごい。夜の女王とはうって変わって、かわいい「乙女な」エーファを好演。世界に誇りたいソプラノです!
マグダレーネの八木さん、私はびわ湖で初めて聴いたのですが、聴くたびステージが上がっている印象ですね。
ダーフィットの清水さん、まさにびわ湖の一番星という感じですが、今回もチャーミングなダーフィットを好演。
ただ、ですね、一昨年の新国立劇場の伊藤達人さんが風貌から何からピッタリはまっていたので、若干印象は薄くなってしまいました。
そしてザックス・青山さん。第1幕、多士済々のマイスターたちが入ってきて目を奪われている時に最後に入って来る姿は、正直影が薄く見えたけと、一声発したら存在感抜群。包容力あふれるザックスの声!
慈愛に満ち、時に意地悪に、時にヤケになる人間的なザックスでした。
登場シーンも多く、大変だったと思いますが、本当にブラボー! でした。
そしてその難役を21年前に歌った黒田さんが今回はベックメッサー!
黒田さんがベックメッサーを演じると知り、「ヴァルターよりザックスがいいじゃん」と思うことはよくありますが、「ヴァルターよりベックメッサーがいいじゃん!」になるんじゃないかと思いました。が、そう思わせないところがさすが。
見た目ではないかっこ悪さ。イタい、残念なおじさんを好演されていました。
ザックスの時はとってもかっこ良かったんですよ! とみんなに知らせたい。
カーテンコールでも、ザックスの後輩、青山さんを「先に行け」というように背中を押したり、主役ではないけれど、黒田さんがステージを牽引している印象でした。
休憩中、琵琶湖の向こう側にかすくに見えた虹。ラインの黄金を思い浮かべました。