「こうしたい」と「つくる」の間に 一級建築士事務所アーク・ライフのブログ

東京都町田市の一級建築士事務所アーク・ライフです。住まい手の「こうしたい」と「つくる」の間で要望を共有し一緒に考えます。

本年もよろしくお願いいたします

2020-01-07 18:41:30 | お知らせ


あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年は災害が多く、トゥンベリさんが国連で指摘したように気候変動対策の取り組みを加速させる必要を強く感じました。
それにも増して、年始のアメリカ軍の空爆によるイラン軍司令官の殺害で、中東は混沌状態に陥りそうな状況です。

この攻撃に対する捉え方は様々なようですが、混沌の先に戦争が起こってしまうと子供を含む多くの人が犠牲になってしまいます。
今年は平和の祭典といわれるオリンピックのある年です。日本政府はホスト国として、そのようなことがないように真剣に取り組んでほしいと思います。

新年早々ですが、1月末に北海道に断熱研修に行き、断熱とエネルギーについての先進事例を学んでくるという予定があります。
その研修が実りあるものになるように、受け入れ先の北海道の建築家の方が事前に様々な情報提供をしてくださっています。


そのやりとりの中でこのようなグラフをつくってみました。
縦軸が、都道府県別の高断熱住宅の普及率、横軸がヒートショック件数の割合です。

北海道や青森は気候としては寒いですが、高断熱住宅が普及しているため、ヒートショックの件数は少なく、鹿児島県や静岡県、香川県などは気候としては暖かいほうですが、高断熱住宅の普及率が低く、ヒートショックの件数は多くなっています。
ヒートショックを防ぐには高断熱住宅を普及させることが必要ということがわかります。


また、このようなグラフもつくってみました。

イギリスやフランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国と日本の地域の寒さと暖房エネルギー消費量を比較したものです。
縦軸が暖房エネルギー消費量、横軸が気候の寒さ(暖房の必要量)を示します。

イギリスやフランスなどは寒さがそれほどでなくても、日本の5倍程度の暖房エネルギーを消費しています。
一方、日本はどの地域も暖房エネルギーの消費量が少なく、ドイツよりも寒い北海道でさえ、暖房エネルギー消費量はドイツの半分強です。

高断熱住宅の普及率の低さと暖房エネルギー消費量の少なさで、日本の家は寒く、ヒートショックの件数が多くなっています。
これでは先進国の住環境とはとても言えません。

北海道の建築家の方とのやりとりとこの検討から、ヒートショックの無い健康な住環境をつくり、なおかつ地球温暖化対策も進めるために、どの程度断熱すればよいかの確信を深めることができました。1月末の北海道行では実体験を通してさらに確信を深めてきたいと思っています。




年末年始のお休みについて

2019-12-30 15:23:38 | お知らせ
一級建築士事務所アーク・ライフは
12月28日から1月6日までの10日間を冬期休暇とさせていただきます。
ご迷惑をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。

昨年末は戸建て住宅の省エネ基準義務化の先送り報道がありました。一方、夏の猛暑や台風等の災害など地球温暖化対策は待ったなしの状況です。
そのような中、基準の義務化というトップダウンではなく、地域でできることを少しづつ積み重ねていこうと気持ちを切り替え、小さいながらも形にすることができてきた一年だったような気がします。

2020年はさらに地域の連携を深め、全国の仲間と協力しながらよりよい未来のために取り組んでいきたいと思います。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

2020年住宅の省エネ基準義務化のはずが、、見送り?

2018-12-10 22:31:14 | お知らせ
2020年省エネ基準義務化の見送りについて報道がありましたが、パリ協定での目標の中で省エネ基準義務化がどれくらい寄与する予定だったかを地球温暖化対策計画で確認しました。
https://www.env.go.jp/press/files/jp/102816.pdf
全176ページと分量は多いですが、家庭用に絞るとそれほどの分量ではないので見やすいかと思います。


この中では63%程度をエネルギーミックスによる電源の低炭素化で賄い、新築の省エネ基準適合義務化による削減量は10%程度のようです。(既存住宅の断熱改修は1.4%)。残りは高効率給湯器、高効率照明、HEMSの導入などのようでした。

ただ、エネルギーミックスに頼って2030年の目標を達成したとしても、省エネとは言えない膨大な住宅ストックがあると2050年のCO2排出量80%減、2100年のCO2排出量ゼロの達成が難しくなると思いますので、早い段階から消費エネルギーの小さい住宅の建設を進めたほうがよいと思います。


2030年目標のCO2排出量、2013年度比40%削減を電源の低炭素化によらず省エネだけで達成する場合の試算もしてみました。2013年には家庭部門の消費エネルギーは年間2113PJ,人口一人当たり16GJです。4人家族だと64GJ(家族構成により単純加算はできませんがとりあえず、地域による違いも省略)。2030年目標値は4人家族で38.4GJとなります。


この家族が6地域で自立循環型住宅モデルプランの約120㎡の住宅に住んだとすると、2020年基準ぎりぎりだと80.65GJとエネルギー消費が26%増えてしまいます。UA値を0.34として省エネ措置を全てとると20%減、太陽光5kw載せて自家消費分を考慮するとやっと40%減となります。

パリ協定の目標に真摯に取り組もうとすると2020年基準では不足な感じがします。2050年、2100年に向けた住宅ストックをどう積み上げるかを考えた基準ができる事を望みます。


蛇足ですが、2019年から全ての新築住宅を消費エネルギー2013年度比40%減できるものとした場合、2030年に全住宅ストックの16%になります。気の長い話になりそうです。

国土交通省では2020年省エネ基準義務化についてパブリックコメントを行い、意見を募集しています。
是非意見を提出してみませんか。
私も意見提出しました。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155180734&Mode=0&fbclid=IwAR2emIgYwzXoRbZyWn9-oi5HQ5iHgTCUsKXJcTs2amEANliYktEC-7hhevY

洗濯物の乾燥方法どれがエコか(お得か)

2018-02-27 18:51:47 | お知らせ


浴室をユニットバスに交換するリフォームの時に、暖房乾燥換気扇を設置したいという要望を伺うことが多いです。
浴室を温めるための暖房と雨天時の乾燥を兼ねたご要望なのですが、洗濯物の乾燥ということに特化して考えた場合、どの方法(機器)がエコでお得なのかを考えてみたくなりました。

比較するのは浴室内に温風を吹き出すタイプの暖房乾燥換気扇3種類(ガス温水式、電熱式、電気ヒートポンプ式)と、衣類乾燥に特化したドラム式洗濯乾燥機とガス衣類乾燥機です。

ガス温水式浴室暖房乾燥機は自宅の事例から、その他はメーカーカタログのデータを参照しました。
洗濯物重量、洗濯時間は同じ条件になるように概算ですが揃えています。

消費エネルギー(使用量換算)はガス及び電気の使用量で、こちらが光熱費に直結します。
消費エネルギー(CO2換算)はCO2排出量を比較するための数値です。



結果、1回あたりの光熱費ではドラム式洗濯乾燥機(ヒートポンプ)が一番安く、次いでガス衣類乾燥機、電熱式の浴室暖房乾燥機が一番高くなっています。
CO2排出量で比較してもドラム式洗濯乾燥機(ヒートポンプ)が一番排出量が少なく、次いでガス衣類乾燥機、電熱式の浴室暖房乾燥機が一番CO2排出量が多くなります。

浴室暖房乾燥機は浴室を温めることにエネルギーを使用する点で専用の衣類乾燥機よりも不利なのかもしれません。



10年間のランニングコストで見ると、電熱式の浴室暖房乾燥機のコストが群を抜いて高く、一番安いのはドラム式洗濯乾燥機(ヒートポンプ)となっています。
衣類の乾かし方の好み、浴室の寒さ対策など他にも考慮したい事はありますが、衣類の乾燥だけで考えると、CO2排出量とランニングコストの点で専用の衣類乾燥機に軍配があがります。
浴室リフォームを考えるときは是非参考にしてください。

そうそう、浴室リフォームの際は壁や天井などに断熱材を入れるチャンスでもあります。忘れずに対応して熱の逃げにくい快適でヒートショックの起こらない浴室リフォームを実現しましょう。