「こうしたい」と「つくる」の間に 一級建築士事務所アーク・ライフのブログ

東京都町田市の一級建築士事務所アーク・ライフです。住まい手の「こうしたい」と「つくる」の間で要望を共有し一緒に考えます。

これが漆の木

2008-03-28 22:09:17 | 

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これが漆の木。大学の時の先輩が京都の漆屋さんにいるので、先日京都に行った時に工場や漆を塗った建物の事例を見学してきました。訪ねた漆屋さんの名前は佐藤喜代松商店さんです。

漆は、漆の木の樹皮にこのよう傷をつけ、染み出た樹液を掻き取って集めるそうです。一本の漆の木からは、年間約150mlの漆しか取れないそうです。漆の木から取れた漆の原液(樹液)をブレンドし、精製し、製品にするのが漆屋さん。

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これは内外の木部に漆を塗った漆器屋さん。京都では普通の住宅街の中に、このようなお店があったりします。建築の中での漆の使い道は、床の間廻り位しか思いつかないと言ったら、事例を見せに連れて来てくれました。

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漆器屋の床の間廻りの様子です。通常京都では、床框(床の間の段差部分にある木の部材)のみに漆を塗り、柱や天井は白木のままにすることが多いようです。一方建物の木部全体に漆を塗るのは北陸だそうです。このお店は京都としては珍しい漆の使い方をしているようです。

床框は朱溜塗り(下地に朱を塗って、その上に着色していない漆を塗った仕上げ)、柱や天井板は拭き漆の仕上げです。拭き漆をした木部は、朱溜塗りの部分と違和感無く溶け込んでいて、なかなか印象がよかったです。木部全体に漆を塗るのもありだなと思いました。

今工事中の現場で、この拭き漆仕上げを床の間の地板と家具類にする予定です。今から楽しみにしています。


多摩の木のすまいの天井板が大分張れてきました。

2008-03-26 22:12:02 | 多摩の森のいえ

多摩の森の木の住まいの木工事が終盤になってきました。
天井板が大分張れてきました。
この住まいの構造材や造作材はほとんどが多摩の桧、杉ですが、
部分的Dscn5198には、 適材適所ということで、他の産地のムクの木も利用しています。
例えば、この天井板も、最初は合板の杉柾天井のつもりでしたが、
あちこちムクの木で出来ていく家の姿を見て、やはり天井もムクの板を張りたいということになりました。
幸い、私たちは、秋田県能代市から招かれて、首都圏の設計者集団として交流を行った経緯があり、良質の秋田杉のムクの天井板を割合リーズナブルな価格で、直接手に入れる事が出来ます。この家は、最近では珍しいくらい客間や寝室が畳敷きの和室であったDscn5171り、2階の私的な居間は和風にしたいとの事で、全部で5部屋程、板張り天井になっています。張られてみると、下に置かれているのを見ていた時よりも、ぐっと力強いムクの魅力が 迫ってきます。なるほど、日本は木の国で日本の国土の2/3が森林だと言う事が実感できます。そして、私たちもムクの木に囲まれていると安心出来る事を感じ、木の国の人間なのだという事を強く感じます。
大工さんは、刻みから建て方、造作と約1年かけてコツコツと家を造ってきました。もうすぐ他の職方に出番を譲ります。設計者としては、いつも見慣れていた大工さんの姿が見えなくなると思うと少し寂しい気がします。最後まで気を抜かず、安全に良い住まいを作っていって欲しいと感謝の気持ちも込めながら願っています。


多摩の木のすまいの和風金物を買いに行きました

2008-03-19 21:06:34 | 多摩の木のいえ

多摩産材を活用した住まいづくりが佳境に入っています。まだまだ監理は続きますが、
そろそろ、大工工事が終わり頃になってきました。
左官屋さんが外壁の仕上げに掛かり始め、現場が活気付いてきました。

先日、床の間や玄関などの花釘や折れ釘などを求めて、大工さんに渡しましたが、

今日は、建て主の奥様と玄関や室内の建具の引手や家具の抽斗の取手を買い付けに、
赤坂の和風金物の店に行ってきました。

沢山陳列されている様々な種類の金物を見ながら、ある程度絞り込んで、現物を出してもらいました。
あれこれ迷い、番頭さんの説明を聞きながら、材質、製作法によって価格がずいぶん違う事を理解していただきました。
そして、その中から値段も重要な判断材料に入れて、形、大きさ、材質をあれこれ比べながら選んで、気に入った金物を買っていただきました。
店頭では、ないと思われた品物が倉庫を確認したら有って、しかももう必要な数をそろえるのは難しいという品物で、本当にラッキーでは有りましたが、予想よりも高くかかりました。

仙徳めっきがかかっている引手ですが、穏やかな黄土色で段々茶がかっていく変化も楽しめます。四角でなく、柔らかい中ほどが膨らんでいる舟形で、ちり落としになっている金物です。

同じ材質、形状でやや小ぶりの引手も一緒に買いましたが、これも予想より高く、全体の見込み費用より上回ってしまいました。

次に、抽斗の取手いわゆるブラカンを見せて貰いました。鋳物と打ち出しと見れば見る程、手作りの価値と良さが伝わってきます。

今回は、昔ながらの蕨手と言う形のブラカンで、鋳物で出来ている物を家具屋さんに渡す為に、必要な数だけ買っていただきました。

予定より多くの金物を買っていただいたので、予定より費用がかさみましたが、
価値も分かっていただいた上で、納得して買っていただくことが出来ました。

建築工事費総体の中では、少ない金額ですが、個人の懐から出すとやはり、昔ながらの良い物は高い感じがするかもしれません。

全ての人に勧める訳にはいきませんが、本物の住まいづくりにこだわり、ある程度費用を出す余裕のある方にとっては無くてはならない住まいの装備の一部であり、使いやすさ、手入れのしやすさを追求していくとこういう形になるという真面目な工芸品の一例だと思います。

住まいに使われる工芸品は、美的な要素だけでは済まず、機能を果たす事が大事で、用から生まれて美に達するというのが、その流れなのだと思います。

これは、住まいそのものにも言える事と思いますが、全体と部分の調和をどう構成していくかは、大変難しいものです。
その時、その場所、その家族で全部違ってきます。
私たちが出会う、その時に、住まわれる家族にとって一番良いと思うプランを提案していく事が一番かなと思いながらやっていく毎日です。


大規模マンション専有部のリフォーム 続き

2008-03-18 18:41:01 | リフォーム

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2ヶ所の和室と居間の部分は手をつけないことにして、
それ以外のところは全て撤去しました。
汚水はトイレ用の排水、雑排水は洗面所や台所用の排水で、
間取りが変わっても、この原則は崩せません。

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そして、この様になりました。
居間、食堂、書斎とオープンにつながり、
風も光も通り、外に開かれて眺めがとてもよくなりました。
小さい子供さんがここを走りまわっています。
マンションですから、床の防音対策はキチンとやる必要があります。

このマンションは自動火災報知の設備は付いていますが、
スプリンクラーの設置がないかわりに、一世帯100㎡を超えないように計画されているので、
120㎡の住戸はどこかで、防火壁と防火戸で区切らねばなりません。
玄関入って、居間に入るところに、ガラス入り木製建具の引戸がありますが、
火災感知連動閉鎖式の常時開放防火戸が普段は壁に納まって設置してあります。


マンション購入前の下見に同行調査しました

2008-03-17 21:26:32 | マンション購入前相談

マンション購入を考えていらっしゃる方からの有料の相談で、
現地の下見に立会って来ました。

築8年、5~10階建ての5階でした。
床は、直仕上げ、壁は内断熱、サッシガラスはシングルでした。
換気については、2004年に計画換気が導入されましたが、
それ以前の物件なので24時間対応ではありませんでした。
北側の部屋のサッシの下側に、結露の結果としてのカビが見られました。

案内をしてくれた不動産業者の担当者に質問をし、
応えてくれる事とその場では分からない事もありましたが、
丁寧に対応してもらいました。

構造体は、スラブ厚200、壁厚180としっかりしている建物でした。
床は、フラットで、各部屋ばかりでなく、トイレ洗面所なども段差が無く、
配慮されていると感じました。

仕様に関しては、その後の建物の方がグレードアップされているものもあるでしょうが、
構造に関しては、どちらが信頼性があるか難しいところです。

面積が割りと広めで、駅に近く、その為か、価格は高い様に思いました。

最終的に判断するのは、御家族ですが、出来るだけ良い判断が出来るように、
様々な情報を提供できるよう、見た結果を伝えたり、不明な事は質問しました。

数年前からお付き合いのあった方ですので、
今のお住まいのことも分かり、御希望もある程度分かっているので、
引っ越した後の生活の事も含めてアドバイスできたかなと思います。

短時間で幅広い情報を得ようと準備し、
担当者への質問も具体的にと考えながら立ち会いますので、
やはり疲れはします。

でも、購入しようと考えている方の身になって、相手に質問し、
専門的な目から見た結果を伝えると言う役割も必要だし、
大事な事かなと思っています。