口の中でビッビッビッと

今頃になると、川を上ってくるかわいい魚達を思い出す。
リーマンだった頃、福岡支店へ臨店に出かけたら支店長が夕食をご
馳走してくれた。
ご当地では有名な料理旅館の「白魚の踊り食い」である。

めだかより細くて長い魚を‘簗’を仕掛けて捕り、活きたままダシと
玉子に付けて口の中に運ぶのだ。
部屋に通されて「いらっしゃいませ」のご挨拶のあと運ばれてくるのは、
大きな鉢に水が張られてその中で無邪気に泳ぐ白魚達。

仲居さんが「楽しんで掬って食べてください」と言うけど私には鉢の中を
泳ぐ白魚が「おっちゃん恐いよ～」と泣く子供の様に思えた！

支店長は嬉々として魚を掬って口に運んでいる。
あんまり躊躇するのも大人げないし、せっかくのご厚意だし、仕事に
来て私の席が無くなっててもまずいので、戴きました。

味なんかわかりませんでした。
水を張ったガラスのボールに白魚たちを泳がせていて、それをおたまで
すくって鶉の卵に三倍酢を入れた物に入れて食べるのです。

三杯酢に驚いてビッビッビッと撥ねているものを口に入れても未だ口の
中で暴れています。

女性なら「ウワッー！こわー」とか「ぐろ～」とか「残酷～」とか
思うのかと思うでしょうが、「アリさま」はそうでもありませんでした。
ちょっとは思ったけどね・・?

ん～味は別に・・味って味がしなかったな。
歯で噛んで食べるわけではなく、生きたまま喉を通る食感を楽しむ訳だ。
強いて言えば三杯酢の味か。

でも一度は体験して置けばよい。
連れて行っていただいたお店は白魚料理でも有名なお店で、その日も
満席で大繁盛だったが「アリさま」新鮮な魚介類の造りの方が良いかな?