久しぶりの「途中でやめられなくなる小説」でした。
ひょんな事から生者と死者の魂(霊)を呼ぶ「降霊会」に招かれ、ずっとわだかまっていた人と語り合うというお話しです。
「イタコ」みたいなものですが、ホストの女性3名と主人公がテーブルで輪になって手を繋いで魂を呼び、4名のうちの誰かに魂が憑依して話をするというスタイル。
自分が呼びたい魂が来るとは限らず、別の「知っている人」の魂が来ることもあるし、降霊する魂は一度に数名になることも。
登場人物一人一人の繊細な心の動き、他者との関わりの中で生まれる身勝手さと罪の意識、それを認めたくない自分の心などが丁寧に描写され、読んでいるほうも苦しくなるほど。
最後まで引き込まれるように読み進めてしまいました。
人生において誰かと関わる以上、関わった時間の長短にかかわらず必ず互いの人生に何らかの痕跡は残るもので、相手を傷つけてしまったときには同時に自分の心も傷つき、和解するまでその傷は残り続ける。
自分が「降霊会」に参加できるなら誰を呼びたいだろう。
ふと考えてしまいました。
いやぁ、小説って、ホントにいいもんですね。
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『降霊会の夜』
浅田次郎/朝日文庫