大人の側わん症シリーズとして:
前回(6月12日)からの続きになります。前回下記のように記しました。
大人の例 : いったん成長がストップした後は、カーブ進行のリスクは最小であり
50度以下の胸椎側わんや30度以下の腰椎/胸腰側わんではほとんどリスクはない。
50度以上の場合は、ゆっくりと年に0.5度~1度ほど進行するかもしれない。
装具療法により、できるだけカーブを小さくする/大きく進行しないように抑える
こと。せめて装具終了時点で30度台で収まってくれれば、その後のリスクはかなり
小さくすることできるでしょう。それと、全ての患者さんが、進行するわけでは
ありません。
どれくらいの患者さんで、骨成熟後も進行することがあるかについては、今回の
文献で説明したいと思います。
添付の表は、次の文献に掲載されていた表の一部を写したものです。
専門誌 Spine. 2006 Feb
タイトル Nonoperative treatment for adolescent idiopathic scoliosis:
a 10- to 60-year follow-up with special reference to health-related
quality of life. (スイス)
表全体には、40人の患者さんがリストされ、初回診察時のコブ角、骨成熟と判断
された時点(装具をしていた患者は装具療法が終わった時点)のコブ角、この調査の
ために直近で測定したコブ角などのデータが表示されたものです。
この40人から、骨成熟時に40~50度のコブ角だった人をピックアップしてみました
患者番号 初診 骨成熟 直近 フォロー期間 フォロー時年齢
4 31 49 80 47年 58歳 0.65
10 38 47 52 22 40 0.22
11 44 45 45 18 30 0.0
21 17 44 50 16 26 0.37
25 50 63 80 16 29 1.0
28 36 40 40 15 26 0.0
31 29 38 50 27 39 0.44
32 29 53 58 16 30 0.31
33 59 52 64 53 64 0.23
38 20 50 60 25 35 0.4
右端のゼロコンマの数値は、私august03が年間進行度数の平均値を計算したものです。
個人差がありますが、約0.5度/年 というカーブ進行の状態がおわかりいただける
とおもいます。そして、全ての患者さんで「進行するわけではない」ということも
この表の11番28番の患者さんからおわかりいただけると思います。
骨成熟に達した後でも、カーブが進行する患者さんは現実に存在します。ですから
骨成熟に達したから、もうカーブは進行しない(側わん症は治った)とは、医師として
は言えません。医師の立場とは、医学の事実に基づいて患者さんに説明することが
義務ですから、「側わん症が治りますか?」と質問されたら、「治ります」とは
即答することはできません。それは患者に嘘をつくことになるからです。
この私の説明の意味がおわかりいただけるでしょうか? 医師は、医学的に正しい
情報にもとづいて、正しい情報を患者に伝える義務があります。嘘をつくことは
できません。したがって、「側わん症が治る」とは言えないのです。
それは、上記のようなデータから皆さん自身もご理解できると思います。
そして、このような医学事実にもとづかずに、金儲けの為に患者を騙しているのが
整体やそくわんヨガ等の民間業者なのです。ネットを通じて患者に嘘の情報を流し
不安をあおり、恐怖心に陥れ、そして、甘い言葉で、「私はあなたの側わん症を
治せます」とかたる。そのような嘘つきの整体やそくわんヨガにいくことはお金を
無駄にするだけではなく、逆に施術によって、側わん症を悪化させる例もあります
参照:
「装具を着けたままでのエクササイズを推奨 No.2」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/4e3d09c68686388192452bae49c47d01
エクササイズとは、整体のような手技(マニュピレーション)とはまったく別です
外からいくら力を加えても側彎症のカーブは永続的矯正を得ることは絶対に
ありません。手技を加えられることで、一日か二日ほど“見た目”が変わること
はあるかもしれませんが、それはあくまでも一日か二日ほどのものであり、
またもとに戻ってしまいます。ときには、強制的な力を加えられたことで、
カーブが悪化することさえあります。(下記海外サイト情報)
he authors has shown that over-manipulating or adjusting the spine seems
to create a certain amount of instability, possibly leading to further
buckling of the scoliotic curvature.
カイロプラクティックによる過度のマニュピレーションやアジャストメントは
脊柱の不安定を増大させ、さらなるカーブの増大を示していた。
-----------------------------------------------------------------------
(august03より)
将来に大きな不安を抱えない最大の治療は、装具療法(プラス運動)により、
装具が終わるまでになんとか30度台になるようにがんばることだと思います。
仮に主治医よりこれで装具を終わってもいいと指示を得たとしても、それからさら
に2年前後は夜だけで装具着用を続けてはどうでしょうか。
鈴木信正先生は、20歳までは装具を続けたほうがいいと推奨されています。
そして、装具を終えた時点でのコブ角を測定し、そのコブ角から、自身の持っている
将来的なリスクを推測して下さい。50度台で終了した人は10年間で5度の進行がある
かもしれないということを年齢との関係から検討して見ていただきたいと思います
40度台で終了された方は、筋力をつけること....運動スポーツに励むことと、骨を
強くすることを意識した食事に注意を払って欲しいと思います。30度台のかたも
同様です。
大切なことは、正しい知識と正しい情報にもとづいて、冷静に自分の身体を観察し
専門医師のもとで診察し、もしもリスクがあるならば、そのリスクを勘案した人生
設計をゆっくりと考えてみてはいかがでしょう。
////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ブログ内の関連する記事
「大人の側彎症 装具治療後23年間の結果」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/ce032df5b9d344eb068e161d07681412
前回(6月12日)からの続きになります。前回下記のように記しました。
大人の例 : いったん成長がストップした後は、カーブ進行のリスクは最小であり
50度以下の胸椎側わんや30度以下の腰椎/胸腰側わんではほとんどリスクはない。
50度以上の場合は、ゆっくりと年に0.5度~1度ほど進行するかもしれない。
装具療法により、できるだけカーブを小さくする/大きく進行しないように抑える
こと。せめて装具終了時点で30度台で収まってくれれば、その後のリスクはかなり
小さくすることできるでしょう。それと、全ての患者さんが、進行するわけでは
ありません。
どれくらいの患者さんで、骨成熟後も進行することがあるかについては、今回の
文献で説明したいと思います。
添付の表は、次の文献に掲載されていた表の一部を写したものです。
専門誌 Spine. 2006 Feb
タイトル Nonoperative treatment for adolescent idiopathic scoliosis:
a 10- to 60-year follow-up with special reference to health-related
quality of life. (スイス)
表全体には、40人の患者さんがリストされ、初回診察時のコブ角、骨成熟と判断
された時点(装具をしていた患者は装具療法が終わった時点)のコブ角、この調査の
ために直近で測定したコブ角などのデータが表示されたものです。
この40人から、骨成熟時に40~50度のコブ角だった人をピックアップしてみました
患者番号 初診 骨成熟 直近 フォロー期間 フォロー時年齢
4 31 49 80 47年 58歳 0.65
10 38 47 52 22 40 0.22
11 44 45 45 18 30 0.0
21 17 44 50 16 26 0.37
25 50 63 80 16 29 1.0
28 36 40 40 15 26 0.0
31 29 38 50 27 39 0.44
32 29 53 58 16 30 0.31
33 59 52 64 53 64 0.23
38 20 50 60 25 35 0.4
右端のゼロコンマの数値は、私august03が年間進行度数の平均値を計算したものです。
個人差がありますが、約0.5度/年 というカーブ進行の状態がおわかりいただける
とおもいます。そして、全ての患者さんで「進行するわけではない」ということも
この表の11番28番の患者さんからおわかりいただけると思います。
骨成熟に達した後でも、カーブが進行する患者さんは現実に存在します。ですから
骨成熟に達したから、もうカーブは進行しない(側わん症は治った)とは、医師として
は言えません。医師の立場とは、医学の事実に基づいて患者さんに説明することが
義務ですから、「側わん症が治りますか?」と質問されたら、「治ります」とは
即答することはできません。それは患者に嘘をつくことになるからです。
この私の説明の意味がおわかりいただけるでしょうか? 医師は、医学的に正しい
情報にもとづいて、正しい情報を患者に伝える義務があります。嘘をつくことは
できません。したがって、「側わん症が治る」とは言えないのです。
それは、上記のようなデータから皆さん自身もご理解できると思います。
そして、このような医学事実にもとづかずに、金儲けの為に患者を騙しているのが
整体やそくわんヨガ等の民間業者なのです。ネットを通じて患者に嘘の情報を流し
不安をあおり、恐怖心に陥れ、そして、甘い言葉で、「私はあなたの側わん症を
治せます」とかたる。そのような嘘つきの整体やそくわんヨガにいくことはお金を
無駄にするだけではなく、逆に施術によって、側わん症を悪化させる例もあります
参照:
「装具を着けたままでのエクササイズを推奨 No.2」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/4e3d09c68686388192452bae49c47d01
エクササイズとは、整体のような手技(マニュピレーション)とはまったく別です
外からいくら力を加えても側彎症のカーブは永続的矯正を得ることは絶対に
ありません。手技を加えられることで、一日か二日ほど“見た目”が変わること
はあるかもしれませんが、それはあくまでも一日か二日ほどのものであり、
またもとに戻ってしまいます。ときには、強制的な力を加えられたことで、
カーブが悪化することさえあります。(下記海外サイト情報)
he authors has shown that over-manipulating or adjusting the spine seems
to create a certain amount of instability, possibly leading to further
buckling of the scoliotic curvature.
カイロプラクティックによる過度のマニュピレーションやアジャストメントは
脊柱の不安定を増大させ、さらなるカーブの増大を示していた。
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(august03より)
将来に大きな不安を抱えない最大の治療は、装具療法(プラス運動)により、
装具が終わるまでになんとか30度台になるようにがんばることだと思います。
仮に主治医よりこれで装具を終わってもいいと指示を得たとしても、それからさら
に2年前後は夜だけで装具着用を続けてはどうでしょうか。
鈴木信正先生は、20歳までは装具を続けたほうがいいと推奨されています。
そして、装具を終えた時点でのコブ角を測定し、そのコブ角から、自身の持っている
将来的なリスクを推測して下さい。50度台で終了した人は10年間で5度の進行がある
かもしれないということを年齢との関係から検討して見ていただきたいと思います
40度台で終了された方は、筋力をつけること....運動スポーツに励むことと、骨を
強くすることを意識した食事に注意を払って欲しいと思います。30度台のかたも
同様です。
大切なことは、正しい知識と正しい情報にもとづいて、冷静に自分の身体を観察し
専門医師のもとで診察し、もしもリスクがあるならば、そのリスクを勘案した人生
設計をゆっくりと考えてみてはいかがでしょう。
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ブログ内の関連する記事
「大人の側彎症 装具治療後23年間の結果」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/ce032df5b9d344eb068e161d07681412