(H19.6月24日タイトルを「医学を見る目をもちましょう」から改題しました。
現実に治療にはげまれている患者さんとそのご家族にとられましては、
適切なタイトルではなかったと考えてのことです)
(この項は、現実の患者さんやそのご家族向けではないと思います。初めての検査
で偽陽性となった方や、これから治療に向かわれる方には読んでいただければと
思います。)
PubMed検索より4件の文献をご紹介しました。スゥエーデンで行われた調査2件、
ギリシア1件、マレーシア1件です。
このような医学論文の持つ意味について、ご説明したいと思います。
医学の世界における治療効果の検証には、「比較試験」という方法が用いられます。
端的に申しますと、スウェーデンの論文では「患者」対「健常者」あるいは、
「手術した患者」対「装具療法した患者」の比較、ということです。それぞれに
グループはできるだけ似通った人たちであることがデータの正確度を高めることに
なります。年齢と性を一致させているのは、そういう意味からです。
調査対象となる「数」は多ければ多いだけデータの信頼性が高まります。
10人の結果よりも100人の結果のほうが「信頼」がおけるのは道理です。
また、100人のAという治療方法だけの結果報告よりも、100人に対するA治療とB治療
の比較結果ほうが、どちらが効果があったかを知る上では参考になります。
また、治療効果を見るときは、「治った数、治した数」と同時に、
「治せなかった数」あるいは、その割合も知ることが大切です。どこにその原因が
あるかを調査研究して、先生がたは、新たな努力をしているのです。
治った、治した、と自己宣伝しているものほど、怪しいものはありません。
スウェーデンの2報告は、20年以上の長期にわたるものです。
この「期間」というものも、データを見る上では非常に重要です。
仮にA氏が「側弯症が治った」という場合、どの時点を示しているのか。
そして、それがどこまで継続しているのか。昨日は治ったけど、実は、三日後には
また痛くなってしまった、というのを「治った」というでしょうか?
その治療効果がどこまで継続するのか、あるいは継続しないのか、そういう視点で
データを見る必要があります。
次に、何をもって、効果判定の指標にしているか、という点も重要です。
客観性があるかどうか、という点です。「患者さんが治ったと言いました」
「患者さんから感謝されました」「痛みがとれたと言いました」
このような形式のものは、効果を評価するうえでは意味を持ちません。
仮にA氏が考案した治療法Aがあるとします。この治療法Aが広く多くの患者に
対しても効果があるかどうかをどうやって判断するか。そこに「評価ツール」の
重要性があります。
治療法Aを別のB氏が別の患者に行ったものと、A氏が行ったものと、どちらが
すぐれているのか、どちらも同じくらい効果があったのか、あるいは、全く成績が
違うという結果がでるのか....。
医療の世界では、世界的に共通の評価ツールが使用され始めています。
それを見れば、その治療効果がどの程度のものであるか、ということが
別の国の医師も判断材料になるというわけです。
側弯症ではコブ角をレントゲン像で計測するわけですが、これは言葉で言うほど
簡単なものではありません。レントゲン写真自体も、測定誤差が発生することが
あります。どの位置の上位椎体とどの位置の下位椎体をメルクマールとして測定
するのか、それは専門医師でも、悩むような症例もありえます。専門医師は、
治療経験と目の前の患者さんの状態等々を勘案して、レントゲン写真のみならず
CTやMRIを用いて、そしてCRと呼ばれるコンピューター解析装置などを駆使して
患者さんを診断し、総合的に判断していきます。そのようなステップをへて、
データの数値として報告されるわけです。
スウェーデンの報告から、世界中の医師は、成長期終了後も若干だけどカーブの
進行はあるのだな、でも、生活の質(QOL)は健常者と差がないのだな、という知識を
得ることができ、そして、そのような研究報告の積み重ねによって、医療は進歩を
とげています。
ギリシアの報告は、比較試験ではありませんが、特発性側弯症の治療にとっては
もっとも重要となる、こどもたちのスクリーニング調査結果をまとめたものです。
東京都による検診システムも同様ですが、このような努力と調査によって、この
病気がどういう経過をたどるものか、ということが判明してきているわけです。
約80%は心配不要の範疇です。
約20%の患者さんが進行する傾向がありますが、これに対しても、早期発見されて
いれば、装具療法により約80%の患者さんは手術にいたることなく、治療を終える
ことができます。発見が遅れれば遅れるほど (つまりカーブが大きくなってから
発見されると)手術しか方法のない状態になってしまいます。
上記の約80%のこどもたちを、仮に「偽陽性」という言葉で表すことが許される
ならば、このこどもたちは陰性(つまり病気ではない/病気が治った)と偽陽性
(つまり、側弯症の疑いはあった、あるいは側弯症の範疇のカーブだけど、進行は
せず、健康にも何の問題もない) のこどもたちということです。
でも、その数が大勢いることと、特発性側弯症が原因不明であること、体躯の変形
という精神的プレッシャー、そして医師の言う「様子をみましょう」という指示を
「治らない」という風に誤解、とらえてしまって、パニックになってしまう。
ということが繰り返されているのです。
......「偽陽性」というような言い方は専門の先生がたは使用されていません。
説明するのにそのほうがわかりやすいのではないかと、August03が
考えただけですので、ご注意ください
(御願い:本ブログ内で使用している「整体」とは、特発性側弯症を医学的根拠を
示すことなく治療できると宣伝し、特発性側弯症という原因不明の病気で苦しんで
いる患者さんとそのご家族を「ビジネス」のために利用している一部の整体のこと
を示しています。そのような整体のために、多くの良識ある整体の方々が同列で
呼称されることは本意ではないかと思いますが、その点に関しては整体という業界
内で解決されることを期待しております。業界基準と倫理規定を持たれているカイロプラクティックの方々は、もちろん含むものではありません)
現実に治療にはげまれている患者さんとそのご家族にとられましては、
適切なタイトルではなかったと考えてのことです)
(この項は、現実の患者さんやそのご家族向けではないと思います。初めての検査
で偽陽性となった方や、これから治療に向かわれる方には読んでいただければと
思います。)
PubMed検索より4件の文献をご紹介しました。スゥエーデンで行われた調査2件、
ギリシア1件、マレーシア1件です。
このような医学論文の持つ意味について、ご説明したいと思います。
医学の世界における治療効果の検証には、「比較試験」という方法が用いられます。
端的に申しますと、スウェーデンの論文では「患者」対「健常者」あるいは、
「手術した患者」対「装具療法した患者」の比較、ということです。それぞれに
グループはできるだけ似通った人たちであることがデータの正確度を高めることに
なります。年齢と性を一致させているのは、そういう意味からです。
調査対象となる「数」は多ければ多いだけデータの信頼性が高まります。
10人の結果よりも100人の結果のほうが「信頼」がおけるのは道理です。
また、100人のAという治療方法だけの結果報告よりも、100人に対するA治療とB治療
の比較結果ほうが、どちらが効果があったかを知る上では参考になります。
また、治療効果を見るときは、「治った数、治した数」と同時に、
「治せなかった数」あるいは、その割合も知ることが大切です。どこにその原因が
あるかを調査研究して、先生がたは、新たな努力をしているのです。
治った、治した、と自己宣伝しているものほど、怪しいものはありません。
スウェーデンの2報告は、20年以上の長期にわたるものです。
この「期間」というものも、データを見る上では非常に重要です。
仮にA氏が「側弯症が治った」という場合、どの時点を示しているのか。
そして、それがどこまで継続しているのか。昨日は治ったけど、実は、三日後には
また痛くなってしまった、というのを「治った」というでしょうか?
その治療効果がどこまで継続するのか、あるいは継続しないのか、そういう視点で
データを見る必要があります。
次に、何をもって、効果判定の指標にしているか、という点も重要です。
客観性があるかどうか、という点です。「患者さんが治ったと言いました」
「患者さんから感謝されました」「痛みがとれたと言いました」
このような形式のものは、効果を評価するうえでは意味を持ちません。
仮にA氏が考案した治療法Aがあるとします。この治療法Aが広く多くの患者に
対しても効果があるかどうかをどうやって判断するか。そこに「評価ツール」の
重要性があります。
治療法Aを別のB氏が別の患者に行ったものと、A氏が行ったものと、どちらが
すぐれているのか、どちらも同じくらい効果があったのか、あるいは、全く成績が
違うという結果がでるのか....。
医療の世界では、世界的に共通の評価ツールが使用され始めています。
それを見れば、その治療効果がどの程度のものであるか、ということが
別の国の医師も判断材料になるというわけです。
側弯症ではコブ角をレントゲン像で計測するわけですが、これは言葉で言うほど
簡単なものではありません。レントゲン写真自体も、測定誤差が発生することが
あります。どの位置の上位椎体とどの位置の下位椎体をメルクマールとして測定
するのか、それは専門医師でも、悩むような症例もありえます。専門医師は、
治療経験と目の前の患者さんの状態等々を勘案して、レントゲン写真のみならず
CTやMRIを用いて、そしてCRと呼ばれるコンピューター解析装置などを駆使して
患者さんを診断し、総合的に判断していきます。そのようなステップをへて、
データの数値として報告されるわけです。
スウェーデンの報告から、世界中の医師は、成長期終了後も若干だけどカーブの
進行はあるのだな、でも、生活の質(QOL)は健常者と差がないのだな、という知識を
得ることができ、そして、そのような研究報告の積み重ねによって、医療は進歩を
とげています。
ギリシアの報告は、比較試験ではありませんが、特発性側弯症の治療にとっては
もっとも重要となる、こどもたちのスクリーニング調査結果をまとめたものです。
東京都による検診システムも同様ですが、このような努力と調査によって、この
病気がどういう経過をたどるものか、ということが判明してきているわけです。
約80%は心配不要の範疇です。
約20%の患者さんが進行する傾向がありますが、これに対しても、早期発見されて
いれば、装具療法により約80%の患者さんは手術にいたることなく、治療を終える
ことができます。発見が遅れれば遅れるほど (つまりカーブが大きくなってから
発見されると)手術しか方法のない状態になってしまいます。
上記の約80%のこどもたちを、仮に「偽陽性」という言葉で表すことが許される
ならば、このこどもたちは陰性(つまり病気ではない/病気が治った)と偽陽性
(つまり、側弯症の疑いはあった、あるいは側弯症の範疇のカーブだけど、進行は
せず、健康にも何の問題もない) のこどもたちということです。
でも、その数が大勢いることと、特発性側弯症が原因不明であること、体躯の変形
という精神的プレッシャー、そして医師の言う「様子をみましょう」という指示を
「治らない」という風に誤解、とらえてしまって、パニックになってしまう。
ということが繰り返されているのです。
......「偽陽性」というような言い方は専門の先生がたは使用されていません。
説明するのにそのほうがわかりやすいのではないかと、August03が
考えただけですので、ご注意ください
(御願い:本ブログ内で使用している「整体」とは、特発性側弯症を医学的根拠を
示すことなく治療できると宣伝し、特発性側弯症という原因不明の病気で苦しんで
いる患者さんとそのご家族を「ビジネス」のために利用している一部の整体のこと
を示しています。そのような整体のために、多くの良識ある整体の方々が同列で
呼称されることは本意ではないかと思いますが、その点に関しては整体という業界
内で解決されることを期待しております。業界基準と倫理規定を持たれているカイロプラクティックの方々は、もちろん含むものではありません)