添付図は脊椎解剖です (説明はaugust03が付記)
手術に簡単な手術というものはありません。どのような手術においても絶対に安全
であるという保証はつきません。人の生身の身体にメスをいれる、ということは
そういうことを意味します。
脊椎は、この図に示したように、動脈と静脈が縦横に駆け巡った場所であり、そして
神経が脊髄から派生して脊柱の間をとおって、体内へと繋がる最初の関門地です。
これを傷つけることは、その先にある身体の動作や感覚に大きな障害や小さな不具合
を発生させうることに繋がります。
ねじり回旋変形し、カーブした脊柱を元の状態に戻すことは容易な技術ではありま
せん。知識と訓練と経験が要求される技術です。
そして高度に変形が進んだカーブは、この複雑な構造をさらに複雑なものにして
しまいます。いわゆる専門家、名医として有名な先生にとっても、それは非常に
困難を伴う手術であることには変わりありません。
不測の事態が発生しないように先生がたは細心の注意を払って手術されます。
それでも、なんらかの不測の事態が起こりえるもの.....それが「手術」というものです。
ですから、手術をするか/しないか、それは手術により得られるメリットと、
手術によって発生するかもしれないリスク (そして手術をしないことによるリスク)
とをじっくりと考えて判断する必要があります。
安易な思いで手術に頼るべきではありません。手術によって何を得たいと考えて
いるのか、手術によって何が失われる可能性があるのか、手術をしないことでも
何が起こりうるのか、そういうことをしっかりと考えて結論をださなければなりま
せん。
手術をしない、という選択もあります。しかし、それは5年後、10年後、20年後も
手術は不要であるという確約を誰かができるものでもありません。
手術をするにせよ、あるいはしないにせよ、その後の人生をこの病気とともに
生きていく。そういう覚悟を必要とするのが、側弯症という病気だと思います。
そして、その覚悟とは、誰かが授けてくれるものでも、誰かが責任をとってくれる
ものでもなく、患者さんご自身が自分で考え、自分で判断してこそ得られるもので
はないかと思うのです。
そして、その為には、この病気がどういうものであるかを正しく学ぶ必要があります。
正しい知識が得られたならば、必ず、この病気にどう向き合うか、という
あなたご自身の勇気が得られると確信しています。