手術では様々なことが起こり得ます。
その手術で自分の身、お子さんの身、家族の身を守るために、「私達が - 皆さんが」「何ができるか」を考えてみました。
私達は、手術を原因として死亡することを想定して手術は受けません。
仮に、その「手術」で死亡することがありえるとしたら、事前の説明で、
「これこれこういうことが発生して、死亡することがありえます。これまでの当院での実績では
ゼロパーセントですが、これこれの医学論文では、手術の2%で死亡例があったことが報告されています」
というような説明が行われるでしょう。 インフォームドコンセント です。
内容的に医学用語が多くて、一般人には簡単には理解出来ないことが多々あるかと思います。また、手術を受ける身として、先生にお任せします、という意識......ある意味、引け目とか、変なことを言って嫌われたくないとか、そのような「忖度」が働きがちな場面でもあります。 インフォームドコンセントを理解する為には、ある程度の医学知識が必要です。それが現実です。 そして、一般的には、医学知識を持つことはとても難しくて、どうしても、「先生にお任せします」というのが現実の現場の姿だと思います。
例えば、今回の事例では、患者さんは心臓弁膜症を患われていたようです。おそらくある期間、薬物治療が行われ、最終的に手術をしましょう。ということになったのでは? と想像します。 手術にあたっては、ご自分の状態と手術による改善、あるいは手術をしなかった場合のリスクなどを勘案されたと思います。 私は心臓外科のことは詳しくはわかりませんが、相当、難易度の高い手術であろうことは想像に難くありません。
ですから、手術にあたっては、その方法、術中に起こりえる不具合・合併症、術後に起こりえる不具合・合併症などについての説明が行わることになります。
☞下線は、私達が手術を受けるにあたっての理解すべきポイントを示そうとしたものです。
今般の事例では、各社のニュース記事によれば次のように記載されています。
読売新聞
・心臓の状態を監視するセンサー付きカテーテルを心房を経由して肺動脈に挿入しようとしたが、
先端が肺動脈まで進まなかったため、心房の中にとどめたまま、手術を始めた。
・人工弁置換後、カテーテルを引き抜こうとした際、大量出血。先端から約5センチの位置に縫合糸がかかっており
手術の過程で心臓内に縫い込まれていた。
・心臓の損傷部は修復したが、約30分、脳に血液が十分に行きわたらずに、4カ月後に低酸素脳症で死亡。
日経デジタル
・肺動脈カテーテル(細い管)で心臓を傷つけ
・約4カ月後に低酸素脳症で死亡
・カテーテルの位置を調整しようと引き抜こうとした際、心臓を損傷、出血したとしている。
朝日新聞デジタル
・手術で心臓に入れた別の管を縫合した際に肺動脈カテーテルも一緒に縫い込んでしまったと推定
原因と今後の対応についての病院側の見解は、
「肺動脈カテーテルの使用に関するルールに不十分な点があった」
「縫い込みに気付くのは難しい。類似例の発生防止のためにルールが必要」」
「カテーテルを心臓に縫い込むことは非常にまれで、気づけなかったのはやむを得ない」
読売新聞の記事によりますと、「遺族は第三者機関に再調査を申し立て」たとのこと。
具体的に、何を疑問と感じ、何をあらためて調査して欲しいと申し立てたかの内容までの記載はありませんでしたが、推測されるのは、
「非常にまれで、縫い付けを気づけなかったのはやむをえない」
.......つまり手術につねに伴う不確実性であり、不可抗力であった。
という病院側の言い分に納得がいかない。ということかと思われます。
これらの記事を読んで、私(august03)が気になったのは「カテーテル使用に関するルールに不十分な点があった」という記述です。
何が、どう不十分だったのかがわかりません。細かく考えていきますと、
①誰がカテーテルを操作していたのか? 執刀医? 助手? 放射線科医? 誰????
②本来の位置まで挿入できない状態であるにも関わらず、手術が続行されたのはなぜ ?
③誰が、どのような根拠のもとで「続行を良し」と判断したの?
④カテーテルの「縫い込み」は本当にまれで、善管注意義務の範囲外のことなの?
縫い付けられた、というカテーテルは、この心臓手術の安全性を確認するためのモニター機器です。その本来の役目を果たすためには、肺動脈にまで挿入されている必要があったわけです。 心房に入れた状態で「モニタリング」ができる、とはこの製品の製造元の添付文書には書かれていないと思います。 つまり用途外の使用で発生した事故の場合は、メーカーは責任を負うことはありえません。
想像をたくましくするならば、もしかすると、脳の低酸素状態はカテーテル引き抜きによる血管損傷・出血ではなく、不十分なモニタリングにより手術全般の進行中にすでに発生していたかもしれません。
あるいは、④で示したように「カテーテルの縫い込み」は「まれ」なことで、誰もそのような知識も情報ももっていないような「想定外」のことだった、ということにも疑問がわきます。
下記の記述は、心臓ペーシング、心電図モニター、血圧測定などに用いる某社「カテーテル」の添付文書の一節です。
「....本カテーテルを右心室または肺動脈に挿入できないことは稀ですが、......」
☞ つまり、稀にはある。ということを述べています。
抜去に関する注意事項には、次の記載があります。
「カテーテルが簡単に抜去できない場合、カテーテルのキンク(捩じれの事)、ループ、結節や 縫い込み 等の
可能性があります」
→関連文献「肺動脈カテーテル接続部からの血液漏出を伴った肺動脈カテーテル縫い込みによる抜去困難例 : 日集中医誌、2005. 12:413-416」 がこの記載の後に提示されています。
☞ google検索をすることで、PDFをダウンロードすることが可能です
☞つまり、カテーテルの縫い込みはありえる。ということが国内の医学文献で示されている。ということです。
手術では様々なことが起こり得ます。
その手術で自分の身、お子さんの身、家族の身を守るために、「私達が - 皆さんが」「何ができるか」
手術とインフォームドコンセントの内容を理解するために、少なくとも
その手術で用いられる医薬品、医療機器の「添付文書」のコピーを医師からもらい、
自宅に持ち帰って、熟読する。
仮に、内容がすべて理解できなくとも、患者さん側が添付文書のコピーをもらって読むという行為は、
手術する側の医師に対しても、あらためて「添付文書を読んでおく必要性」を認識させることに繋がるはずです。
それが「医師が行うべき善管注意義務」ということだと、私は考えます。
august03
ご興味のあるかたは、Google検索で「心臓カテーテル、肺動脈カテーテル、添付文書」をキーワードとして検索してみて下さい。 様々なメーカーの各種カテーテルの添付文書を PDF で入手することが可能です。
その手術で自分の身、お子さんの身、家族の身を守るために、「私達が - 皆さんが」「何ができるか」を考えてみました。
私達は、手術を原因として死亡することを想定して手術は受けません。
仮に、その「手術」で死亡することがありえるとしたら、事前の説明で、
「これこれこういうことが発生して、死亡することがありえます。これまでの当院での実績では
ゼロパーセントですが、これこれの医学論文では、手術の2%で死亡例があったことが報告されています」
というような説明が行われるでしょう。 インフォームドコンセント です。
内容的に医学用語が多くて、一般人には簡単には理解出来ないことが多々あるかと思います。また、手術を受ける身として、先生にお任せします、という意識......ある意味、引け目とか、変なことを言って嫌われたくないとか、そのような「忖度」が働きがちな場面でもあります。 インフォームドコンセントを理解する為には、ある程度の医学知識が必要です。それが現実です。 そして、一般的には、医学知識を持つことはとても難しくて、どうしても、「先生にお任せします」というのが現実の現場の姿だと思います。
例えば、今回の事例では、患者さんは心臓弁膜症を患われていたようです。おそらくある期間、薬物治療が行われ、最終的に手術をしましょう。ということになったのでは? と想像します。 手術にあたっては、ご自分の状態と手術による改善、あるいは手術をしなかった場合のリスクなどを勘案されたと思います。 私は心臓外科のことは詳しくはわかりませんが、相当、難易度の高い手術であろうことは想像に難くありません。
ですから、手術にあたっては、その方法、術中に起こりえる不具合・合併症、術後に起こりえる不具合・合併症などについての説明が行わることになります。
☞下線は、私達が手術を受けるにあたっての理解すべきポイントを示そうとしたものです。
今般の事例では、各社のニュース記事によれば次のように記載されています。
読売新聞
・心臓の状態を監視するセンサー付きカテーテルを心房を経由して肺動脈に挿入しようとしたが、
先端が肺動脈まで進まなかったため、心房の中にとどめたまま、手術を始めた。
・人工弁置換後、カテーテルを引き抜こうとした際、大量出血。先端から約5センチの位置に縫合糸がかかっており
手術の過程で心臓内に縫い込まれていた。
・心臓の損傷部は修復したが、約30分、脳に血液が十分に行きわたらずに、4カ月後に低酸素脳症で死亡。
日経デジタル
・肺動脈カテーテル(細い管)で心臓を傷つけ
・約4カ月後に低酸素脳症で死亡
・カテーテルの位置を調整しようと引き抜こうとした際、心臓を損傷、出血したとしている。
朝日新聞デジタル
・手術で心臓に入れた別の管を縫合した際に肺動脈カテーテルも一緒に縫い込んでしまったと推定
原因と今後の対応についての病院側の見解は、
「肺動脈カテーテルの使用に関するルールに不十分な点があった」
「縫い込みに気付くのは難しい。類似例の発生防止のためにルールが必要」」
「カテーテルを心臓に縫い込むことは非常にまれで、気づけなかったのはやむを得ない」
読売新聞の記事によりますと、「遺族は第三者機関に再調査を申し立て」たとのこと。
具体的に、何を疑問と感じ、何をあらためて調査して欲しいと申し立てたかの内容までの記載はありませんでしたが、推測されるのは、
「非常にまれで、縫い付けを気づけなかったのはやむをえない」
.......つまり手術につねに伴う不確実性であり、不可抗力であった。
という病院側の言い分に納得がいかない。ということかと思われます。
これらの記事を読んで、私(august03)が気になったのは「カテーテル使用に関するルールに不十分な点があった」という記述です。
何が、どう不十分だったのかがわかりません。細かく考えていきますと、
①誰がカテーテルを操作していたのか? 執刀医? 助手? 放射線科医? 誰????
②本来の位置まで挿入できない状態であるにも関わらず、手術が続行されたのはなぜ ?
③誰が、どのような根拠のもとで「続行を良し」と判断したの?
④カテーテルの「縫い込み」は本当にまれで、善管注意義務の範囲外のことなの?
縫い付けられた、というカテーテルは、この心臓手術の安全性を確認するためのモニター機器です。その本来の役目を果たすためには、肺動脈にまで挿入されている必要があったわけです。 心房に入れた状態で「モニタリング」ができる、とはこの製品の製造元の添付文書には書かれていないと思います。 つまり用途外の使用で発生した事故の場合は、メーカーは責任を負うことはありえません。
想像をたくましくするならば、もしかすると、脳の低酸素状態はカテーテル引き抜きによる血管損傷・出血ではなく、不十分なモニタリングにより手術全般の進行中にすでに発生していたかもしれません。
あるいは、④で示したように「カテーテルの縫い込み」は「まれ」なことで、誰もそのような知識も情報ももっていないような「想定外」のことだった、ということにも疑問がわきます。
下記の記述は、心臓ペーシング、心電図モニター、血圧測定などに用いる某社「カテーテル」の添付文書の一節です。
「....本カテーテルを右心室または肺動脈に挿入できないことは稀ですが、......」
☞ つまり、稀にはある。ということを述べています。
抜去に関する注意事項には、次の記載があります。
「カテーテルが簡単に抜去できない場合、カテーテルのキンク(捩じれの事)、ループ、結節や 縫い込み 等の
可能性があります」
→関連文献「肺動脈カテーテル接続部からの血液漏出を伴った肺動脈カテーテル縫い込みによる抜去困難例 : 日集中医誌、2005. 12:413-416」 がこの記載の後に提示されています。
☞ google検索をすることで、PDFをダウンロードすることが可能です
☞つまり、カテーテルの縫い込みはありえる。ということが国内の医学文献で示されている。ということです。
手術では様々なことが起こり得ます。
その手術で自分の身、お子さんの身、家族の身を守るために、「私達が - 皆さんが」「何ができるか」
手術とインフォームドコンセントの内容を理解するために、少なくとも
その手術で用いられる医薬品、医療機器の「添付文書」のコピーを医師からもらい、
自宅に持ち帰って、熟読する。
仮に、内容がすべて理解できなくとも、患者さん側が添付文書のコピーをもらって読むという行為は、
手術する側の医師に対しても、あらためて「添付文書を読んでおく必要性」を認識させることに繋がるはずです。
それが「医師が行うべき善管注意義務」ということだと、私は考えます。
august03
ご興味のあるかたは、Google検索で「心臓カテーテル、肺動脈カテーテル、添付文書」をキーワードとして検索してみて下さい。 様々なメーカーの各種カテーテルの添付文書を PDF で入手することが可能です。