~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

日本のそくわん症のこどもをもたれてるお母さんがたへ

2008-11-15 18:17:54 | VEPTR COM JAPAN
  http://www.goosetowngraphics.com/braist/index.htm

 添付の写真をご覧になられて、これは何?と思われるのではないでしょうか?
 ぜひとも、上のURLをクリックしてみて下さい。そうしますと、添付写真の画面にアクセスできます。ここに円周上に並んでいる「名前」は米国の病院です。どこでも結構ですから、ひとつクリックしてください。

 クリックしますと、This study funded by :
          Click here for English  という画面があらわれます。
実は、先ほどの病院名の並んだ画面で、どこの病院名から入っても、この同じ画面が登場します。

Click here for English をクリックしてください。そうしますと、お母さんと娘さんの写真が掲載された画面と説明文の画面とともに、数秒ほどしますと、英語の音声が聞こえてきます。
実は、この音声は、ここに記載された英文を読み上げているものなのです。そして今日、私august03がここで皆様にお話させていただきたいことがこの米国のサイトについてなのです。
このサイトは、米国の思春期特発性側弯症のこども達とそのお母さんがたに対して「臨床試験への参加をお願い」しているものです。

Step by stepのなかでも何度か臨床試験について説明をしてきましたが、ここであらためて臨床試験がどういうものであるかを理解しやすいように例えを用いて簡単にご説明したいと思います。

(これは将来の出来事としてお読みください)

2015年春、製薬会社ABC社が、全国の三大新聞に次のような広告を掲載しました。

  「全国の思春期特発性側弯症のお子様をお持ちのお母様がたへ。
   治験参加のご案内。
   思春期特発性そくわん症は、原因が不明でした。しかし弊社は10数年に
   わたる研究から、この原因不明の病気を治療する新薬を開発しました。
   いま、この新薬が日本の側わん症で悩んでいるこどもたちにも効果が
   あるかどうかの試験を開始いたします。
   試験は、二重盲検(ダブルブラインド)での無作為化比較対照試験
   (プロスペクティブランダマイズ)という方法を用います。
   これは、参加していただける患者さんに、新薬か、偽薬(プラセボ)の
   どちらかをくじ引きで割り付けして新薬が本当に効果があるかどうかを
   偽薬と比較するものです。
   患者さまもお医者さまも、どなたが新薬を服用し、どなたが偽薬を服用
   することになるかは明かされずに試験をすることになります。
   また、この試験に参加される患者さまは新薬の効果を確認する為に
   全員、装具治療はいたしません。
   ぜひともご協力をお願いいたします」

もし、このような広告をご覧になられたならば、皆さんはお子さんをこの臨床試験に参加させたいと思われるでしょうか? リスクは、

  *新薬に当たるか、偽薬に当たるかの確率は50%
  *仮に新薬に当たったとしても、その効果は試験が終わってみないと不明
  *装具治療は禁止

ただ過去の臨床試験の結果から、装具をしなくても、約半数の患者さんは、カーブが進行しない可能性があるらしいことがわかっていますから、この治験に参加して仮に偽薬に当たったとしても、カーブが進行する確率は、50%ほどということになるのかもしれません。

なぜこのような試験をするのでしょうか? 
それは、新しい薬、新しい医療機器というものは、最終的にはヒトで試してみなければそれが本当に効果があるかどうかがわからない。そういう宿命をもった性格の
ものだからです。動物試験もするかもしれません。しかし、動物に効果があったからといってそれがヒトに効果があることの証拠にはなりません。ヒトに効果があるかどうか、安全であるかどうかは、ヒトで試してみるしかないのです。
そして、その効果が「真実」であるかどうかは、「比較試験」という方法を用いる
のがもっとも科学的に立証証拠として、信憑性の高いデータを得られるのです。
例えば、上記に例として掲げた治験の結果が下記であったとします。

  新薬ABCを服用した患者50名 側弯カーブ50度以上進行例 10名
               側弯カーブ30度~49度進行例  5名
               側弯カーブ10度~30度進行例  5名
               側弯カーブ 0度(進行なし)    30名

  偽薬服用した患者50名   側弯カーブ50度以上進行例  10名
               側弯カーブ30度~49度進行例  5名
               側弯カーブ10度~30度進行例 10名
               側弯カーブ 0度(進行なし)   25名

この結果から何がわかるでしょうか? この新薬ABCは側弯症カーブ進行を食い止める性能をもっていたと言えるでしょうか ?
お母さんがたに理解していただきたいのは、医学的に効果があったということができるのは、信頼性のある客観的データとして提示され、科学的検証(試験データの解析)をへているかどうか、ということなのです。
そして、それを立証することは現実として、ものすごくたいへんなことなのです。
                
.....................................................................

話をさきほどの米国のサイトに戻します。
このサイトは、側弯症装具療法に関する臨床試験への参加をお願いしているものです。試験方法は、上記の例え話に似ています。

  *参加される患者さん(お子さん)は、くじ引きをして
  装具療法 または 無治療(装具なし) のどちらかに振り分けられます

  *装具に振り分けられた患者さんは、一日最低18時間を基本として装具療法を
  骨が成熟するまで継続します。無治療に振り分けられた患者さんは、何も
  治療はせず、経過観察だけを骨が成熟するまで続けます。
  そして、もしカーブが50度に達したら手術をするかどうかを決めます。

日本のお母さんはこの試験の説明を聞かれてどう感じられるでしょうか?
これは仮の話でも、例え話でもなく、現実にいまこの時点でも米国で実施されている臨床試験の話なのです。
私august03は、この試験が良いとか悪いとかを論議する為にこの話題取り上げているわけではありません。
科学(医学)は、このようなステップをへて現代医学にまで進歩してきました。
上記の米国の臨床試験に参加しているこどもたちはすべて「ボランティア」です。自分の意志で参加を決めます。自分がこの臨床試験に参加して、医学データを蓄積することが、将来の医学の発展、側弯症治療の発展に寄与するということを理解しその可能性に賛同したこどもたち(そしてお母さん)が、自らの意思で参加をしてこの臨床試験が進められているのです。

そして、この背景には、いまだに「装具療法」に対する効果を医学的に立証しきれていない。という現実がある為です。装具をしないのにカーブが進行しない患者さんが現実に存在します。もしその進行しない理由(原因)がわかれば、装具をせずとも良いかどうかを診断により判断し、あなたは進行しないタイプだから大丈夫ですよ。という時代がくる可能性もあるでしょう。

アトランタこども病院
アイオア大学こども病院
バージニア大学
ニューヨーク Hospital for special surgery
ワシントン大学 (セントルイス)
ロチェスター大学
ピッツバーグこども病院
カリフォルニアこども病院
ボストンこども病院  etc  

全米25州にわたる地域がこの臨床試験に参加し、こどもたち(お母さん)に参加を
呼びかけています。この試験には約500人のこどもたちが参加することになります
おそらく250人が装具を、そして250人が無治療に割り付けられるでしょう

その500人のなかには、当然のことですが、あなたのお子さんは含まれていません
しかし、この米国の臨床試験の結果から得られる医学データは、皆さんのお子さんの治療にも必ず影響を及ぼすときがきます。
アメリカのこどもたちが自ら進んで、誰かの役に立つ為に、自己を犠牲にして参加
して得たデータが、日本の皆さんのお子さん達の治療にも役立つのです。
アメリカの母親も日本の母親も、我が子を思う気持ちは同じです。アメリカの母親とて、もしかしたらカーブが進行するかもしれないのですから、装具を着けたほうが良いと思う気持ちはきっと持つと思います。その気持ちをあえて抑えて、我が子が選択した、誰かの役に立つならば、という意思を尊重し、耐え忍んでいると思います。

日本のお母さんがたへ、皆さんも悩み苦しんでおられると思います。でも、どうか
その苦しみに耐えて欲しいと思います。ネットには様々な情報があふれています。○○大学の装具なんて効果ないよ、△△病院の装具は効かないよ。とお母さんの不安をあおり、心配のどん底に落とすことで自分の商売を成立させているような整体がいます。自己を犠牲にして、誰かの役に立とうとしているアメリカの子供達
一方、日本には、患者さんやお母さんの不安をあおることで商売をしている整体がいる。
同じ日本人として恥ずかしい限りです

正義とは、お母さんがたを不安に陥れることではありません。医学とは、患者さんを不安に陥れることではありません。“患者のため”にとは、あのような行為を
いうのではありません。

皆さんは、今は耐えなければならないときだと思います。辛いかもしれませんが
いまは耐えなければなりません。もし、苦しくなったら、どうか全国の同じ境遇のこどもたち、お母さんたち、そしてアメリカで自らを捧げているこどもたちとその
お母さんたちのことを思い浮かべてください。医学はつねに進歩しています。
いつの日か、必ず側弯症も真の原因が究明される日がきます。その日を信じて、
皆さんは、地元の側弯症専門の先生がたに診てもらって下さい。自分の目で、
この先生に私の娘、私の息子をゆだねると信じられる先生を探してください。
そして、なによりも、もっとも大切なのは、みなさん自身が、こどもの側弯症を
治してやるんだ、という気持ちを強くもつことです。お子さんのそばにいて、
一日23時間の着用を叱咤激励できるのはお母さんしかおりません。お子さんがくじけそうになったときに、暖かい愛情で包み込めるのはお母さん、あなたしかおりません。お母さんは、どんなに辛くとも、自分の苦しみに耐え、そんなものは表にだすことなく、お子さんに安心感を与えてください。お母さんがどっしりと構えてくれれば、お子さんも安心して生活していけます。
先生を信じる事、その病院の装具士さんを信じること、そしてお母さんは、自分自身を信じてください。お母さんが持つべきものは、罪悪感ではありません。お母さんが持つべきものは、こどもの側弯は自分が治してやるぞ、というくらいの強い愛情なのです。


 参考 : 側弯症専門医師
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/c98b46ae8347107690bc67a459be65f9

(下記は2008年4月20日掲載より)

いま米国では全米から20大学病院が参加して、治験(臨床試験)が進められています
主導しているのは、米国政府機関のNIH (National Institutes of Health)という
国民の健康に対して責任を有する最高機関です。
 http://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT00448448?recr=open&cond=%22Scoliosis%22&rank=9

試験方法は、全米から500人の思春期特発性側わん症のこどもに参加してもらい、
あるグループには装具療法を、別のグループには「何もしない」という選択を
くじ引きで割り振るというRandomizedランダマイズドコントロールによる試験です
2007年2月に開始され、完了するのは2010年8月を予定しています。まだ結論がでる
までに2年以上待たなければなりませんが、この臨床試験が終われば、どういう
背景のこどもが荒ぶるタイプで、どういう背景のこどもがおとなしいタイプの
側わんであるかが判明しているでしょう。つまり、25度前後で発見した場合に、
そのこどもに装具療法が必要か不要かの診断がつくようになる、少なくとも現在
よりももっと診断できる要因を判明させることができているだろう、ということで
す。これはいわば米国政府が本気で、こどもたちの病気に取り組んでいるというこ
とです。本気で、思春期特発性側彎症の治療指針に最終結論をだそうという取り組
みです。そして、これに犠牲的精神をもってボランティアとして参加しているのが
全米のこどもたち、10歳~15歳のその多くが女の子たち、ということです。私たち
日本人はここでも海外のこどもたちの犠牲のうえに、自分たちの治療方法のための
知識と情報をえることができる、ということになるのです。

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ブログ内の関連記事
 「側わん症治療における装具士さんの役割についての考察 No.5」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/eb2e4607eca713997b8a2c2ce539043e

 「心の弱さにつけ込む卑劣な手口 なぜ整体を勧めるのか?」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/140434c80f4deb99afb5d462802248e4

 「そくわん症治療の確率 50%のリスクをとるか80%の可能性にかけるか」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/8d2b14d64b859ecacb4fad21f0d48505



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3 コメント

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側彎専門医でも… (チビママ)
2008-11-27 22:41:53
こんにちは。今日検診に行き、装具を作る事になりました。
ところで、この記事に書かれているアメリカでの治験の話を医者にしたら、「そういう治験は無いです。実質的に無理です。」ときっぱり。側彎専門医でも、今、外国でどんな研究がされてるかを把握してる訳じゃないのかな?勉強してる暇がないのかな?と思ってしまいました。たまたまこのお医者さんだけなのかもしれませんが…
返信する
仕方ないです (august03)
2008-11-29 23:38:11
私の情報はネット検索で得るものばかりですが、日本の先生がたが普段文献検索をするサイトとはまったく異なりますので、あのようなURLにアクセスする先生はいないと思いますし、それは仕方ないと思います。日常診療とはまったく次元の違う試験のことですし、しかも、現在進行形のものですから。先生がたが知り得るのは、試験が完了し、学会で発表されたり、専門誌に結果が論文として発表された時点というのが普通だと思います。しかも、日本の先生からみれば、ランダム割り付けの比較試験なんてたとえ実施してみたくてもこの日本では不可能な試験デザインですから、そんなことありえないだろうと思うのは当然だと思います。でも、そういう試験デザインでなければ、医学的エビデンスレベルが高いとはいえないのも事実です。いまは、米国の試験が無事に終えることを祈るばかりですね。
返信する
そうなのですか… (チビママ)
2008-11-30 12:18:06
教えて頂きありがとうございます。同時に、こちらのブログの内容がいかに先駆的であるかがわかりました。
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