●サード・アルバム「Kelsea」の記事をアップしました●
★急遽リリースされた、「Kelsea」の裏アルバム(!?)「Ballerini」を取り上げました★
この2019年4月に、カントリー・ミュージックを形作ったとい
っても過言ではない、歴史ある音楽番組”グランド・オール・オ
ープリー”の新レギュラー・メンバーとなったケルシー・バレリ
ーニ。2014年にデビューし、この2017年のセカンド・アルバム
「Unapologetically」で人気を不動のモノにして獲得した栄誉
でした。今年はそろそろ、3枚目が期待されますね。
チェインスモーカーズと共演
プロフィールですが、テネシー州ノックスヴィル育ち。お父さ
んは、カントリー・ラジオ局のセールス・マネージャーでした。
12才の時にお母さんの為に初めて曲を作り、14才でギターを始
め、そして15才でナッシュビルに移り、アーティストへの夢を
模索し始めました。学校は、ノックスビルのCentral高校、同じ
テネシー州フランクリンのCentennial高校、そしてナッシュビル
の Lipscomb大学に通っています。
音楽に目覚めたきっかけは、ブリトニー・スピアーズやクリステ
ィーナ・アギレラなどのポップ曲でしたが、キース・アーバンを
きっかけにテイラー・スウィフトやシュガーランドなどのカント
リーに傾倒するようになりました。中でも一番影響を受けたのは、
シャナイア・トゥェインだったようです。
トーマス・レットとCMAフェスティバルのホストを務めています
ナッシュビルに移って以降、4年間は作曲などの地道な活動が
続きましたが、19才の頃に突如、Black Riverとのソングライ
ティング契約、更にはアーティスト契約とトントン拍子に話が進
み、2014年にデビュー曲"Love Me Like You Mean It"をリリー
スするのです。これが結果、ビルボードのカントリー・エアプレ
イで1位(カントリー・シングルでは5位)を獲得して一躍注目
を浴びる事に。デビュー・アルバム「The First Time」はカント
リーで4位まで登り、そこからのシングル"Peter Pan"はカント
リー・シングルで1位を獲得、人気を決定付けます。
この2枚目は、そのジャケットのイメージ通り、スターらしい華
やぎの増した音創りで、プログラミング・サウンドも大幅に導入
され、最新シングル(7位)の”Miss Me More”のようなEDMス
タイルのきらびやかなダンス曲も有ります。その一方で、"High School"
などフォーキーなアコギを導入部にフィーチャーしたスロー曲も
多く配され、全体的に一定の穏やかさは保つ、やはりカントリー・
アルバムだと思います。私ら高齢リスナーには、レトロなR&B風の
”I Hate Love Songs”がなかなか染みますね。シングルにもなり、
中ヒットになっています。ちなみに、アルバムとしては最高3位、
リード・シングルの"Legends"は10位のチャート成績を記録し
ています。
ケルシーは、決して技巧派とかパワー唱法などではなく、若年層
リスナーと等身大の、幾分若さも感じさせる柔らかな歌声が個性だ
と思います。つまり、カントリー界でのテイラー・スウィフトの
穴をケルシーが埋めたと云う事なのでしょう。
【グランド・オール・オープリー】
1925年にスタートし、なんと現在も続いている、アメリカ最古
のラジオ番組”グランド・オール・オープリー”。ナッシュビルにあ
る放送局WSMが、毎週土曜日の夜にカントリーのライブを公開放
送している。番組のスタート直後は、スクウェア・ダンスの庶民版
”バーン・ダンス”のための音楽として、フィドル奏者などがほんの
数人で1時間ぶっ続けで演奏していた。その後、”カントリーの顔”
であるハンク・ウィリアムス他、アーネスト・タブやビル・モンロ
ーなどの大物が次々出演したことで、カントリー・ミュージシャン
の登竜門と言われるように。逆に言えば、ここに出演する事が一流
の証となった。多くのミュージシャンが幼少の頃この放送を聴き、
あこがれ、そして目指したのだ。
1939年に全米放送開始。1943年以降はライマン公会堂が会場に
使われた(現在はグランド・オール・オープリー・ハウス)。近年
は時々テレビ放送も行われる。
(ギター・マガジン2019年2月号「カントリー最高説」)
初期のオープリーはフィドルを中心としたダンス・ミュージック
の番組で、まだ歌謡ショウの形態はとっていなかった。(略)
アパラチアのフィドル・チューンからヒルビリー・ソングへ、と
いうオープリーの路線変更は、徐々に進行していたと思われるが、
象徴的だったのは、自身もフィドラーだったロイ・エイカフが、
’38年に「ワバッシュ・キャノンボール」「グレイト・スペックル
ド・バード」を歌って、オープリーの新しいスターとなった事だ。
これをきっかけに、ダンス・チューンはオープリーのステージから
消えていくことになる。(略)オープリーの変貌はこれで終わらな
かった。フィドルやバンジョーを隅に追いやるかのような形で導入
されたのが、およそ南部の伝統とは無縁に見えるペダル・スティー
ル・ギターやエレクトリック・ギターだった。このような楽器がオ
ープリーに持ち込まれた背景には、ウェスタン・スウィングの流行
があったようだ。
(奥和宏氏「アメリカン・ルーツ・ミュージック 楽器と音楽の旅」
なお、フィドルやバンジョーは、カントリー・ソングの伴奏楽器と
して、らしさを演出する重要な楽器であり続けている事は云うまで
も有りませんので、念のため)
グランド・オール・オープリ―のレギュラーメンバーは現在67人。
厳密な資格・条件は分からないですが、一度メンバーになったら、
亡くなるまで続くみたいです。ある程度以上のスターになったら選
ばれる、でもなくて、テイラー・スウィフトやシャナイア・トゥェ
インはメンバーになっていません。R&Bトレンドに乗って人気を得
ている2010年以降の若手スターも、まだほとんどメンバーになっ
ていませんね。一方、かつてロックの人だったダリアス・ラッカー
はメンバーです。ここら、”カントリー・アーティストらしい人柄”
とか、”カントリーミュージックの伝統に対する姿勢”とかの、業界
人の目線で判断されてるように思います。ダリアスについては、そ
の地道なファンとの交流活動でその人柄の魅力をカントリー・ファ
ンに浸透させていった話を、以前コチラで記事にしました。
ケルシーの"入会"セレモニーで、「オープリーはカントリーミュージ
ックの心であり魂です」とのメッセージと共に記念トロフィーを授け
たのは、キャリー・アンダーウッドでした。彼女もアメリカン・ア
イドルから鳴り物入りでカントリー界にデビューした時は、その異
質なキャリアに賛否が有ったものです。他のセレモニーで良く覚え
ているのが、1995年のマルティナ・マクブライドの時。そこでマル
ティナを迎えたのは、ロレッタ・リンでした。今の若手にとって、
キャリーはロレッタほどの存在になったと云えるのでしょう。
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