
ポップ・フィールドの2人女性スーパー・スター、ジュエル(Jewel)とジェシカ・シンプソン(Jessica Simpson)が、カントリー・フィールドに接近した作品をリリースして話題です。二人は一昨日までナッシュビルで開催されていたCMAミュージック・フェスティバル(旧ファン・フェア)にも登場し、注目を集めたようです。こういう動きは、レイ・チャールズがドン・ギブソンの"愛さずにはいられない"を取り上げたというクラシック・カントリーの時代から今に到るまで、折に触れてカントリー曲がポップでカバーされてヒットしていますし、オリビア・ニュートン・ジョンのデビュー当初はポップだけでなくカントリー・チャートも賑わせていた事がありましたので、まあ、良くあるクロスオーバー現象と言えます。しかし、ポップでガッチリ人気を確立した後に、こうしてカントリー界に擦り寄ってくる事例は、昔はあまり無かったように思います。ボン・ジョビがそれっぽかったかな・・・・一つには、イーグルスのカントリー界での成功がキッカケになっていて~アーティストとして新たなスタイルにチャレンジしたいとの純粋な気持ちもあるとは思いますが~、魅力的なマーケットとしてカントリー・フィールドをターゲットにして来たのでしょう。移り気なポップ・ファンに比べて義理堅いカントリー・ファンを獲得して、セールスを安定させようと・・・・また、音楽的な垣根も低くなってきているし。ただ、こうした異ジャンルからの異邦人となると、どうしても違和感を感じてすんなり行かない部分があるのは仕方ないと思いますが、我が国のカントリー・フィールドに関する情報不足を考えると、是非ともこの二人のカントリーへの接近を好意的に迎えたいし、メディアにもそれを願います。なぜなら、この大物達が接近したカントリー・フィールドというものをちゃんと伝えないと、アメリカン・ミュージックの現状の説明がつかないはずです。
とは言いつつ、折角の素晴らしく興味深い出来事に対して、カントリー・サイドから感じた”垣根を越える事の難しさ”について、けして意地悪でなく、少し触れておこうと思います。いつの時代もその”違和感””難しさ”こそが、新しい音楽に繋がっていくからです。
Jewel
ジュエルは、アルバム「Perfectly Clear」のリリースと同時に、早くもCMTのアンプラグド・ライブに出演したパフォーマンンスが良いサンプルになると思います。"Stronger Woman"など、果敢にも自身によるアコースティック・ギターだけの弾き語り(一部、カウボーイ・ハットをかぶったサポート・ミュージシャンに任せて歌に専念)でパフォームしているところに彼女の気合が感じられます。その美しく洗練された容姿と可憐な歌声はさすがに魅力的です。前作ではアコースティックでアダルト・コンテンポラリーなサウンドを提供していた彼女ですから、このアンプラグド・ライブでは、ナチュラルなフォーキー・カントリー風でなかなか聴かせてくれます。ただ、声の線は、いつも親しんでるカントリー・シンガーに比べると、少し細く、エモーショナルに気合入れて力むところではチョッと不安定にもなります。これは、彼女はこれまでアーバンで洗練された音楽を歌ってきた人であり、この手の歌い方(南部的ド根性の)に不慣れな為でしょう。こうして見ると、「今のカントリーってポップスとどう違うの?」とよく言われていますが、やはり音楽的なスタイルの違いはシッカリあるのだと、改めて感じます。ここらは、チャート・ポップスを熱心にウォッチされている方は敏感に感じ取っているでしょう。
Jessica Simpson
ジェシカは、リード・シングル"Come On Over"がリリースされ、話題になっています。といっても、シャナイア・トゥエインの”アノ”曲とは同名異曲。タップリのアコースティック・ギターのストロークとペダル・スティールがフィーチャされ、ドップリとロッキン・カントリー・スタイルに浸っていますね。ただ、メロディがホントに単純・シンプル、歌声やサウンドにしても強烈な個性は感じられず、スカッとした印象です。これまで、ダンサブルなポップ・チューンで親しまれてきた人ですから、カントリーに行くといってもコレまでのファンを捨てるわけには行かない、その中庸を取ったってとこかな。マジョリティを相手にしているだけに、苦労が分かります。そのタイトルも含めて、カントリーのニュー・スターを演出しようという、チョッと戦略先行的な雰囲気が感じれられなくもない。カントリー・チャート初登場41位で、まずまずの好発進。秋に出ると言うアルバムは、どんな感じになりますやら・・・
この二人が、この先”カントリー・アーティスト”として活動をし続けるとは、チョッとイメージができません。一時的な特別企画として二人のキャリアに新鮮な色を添えたイベントという事になるのでしょう。或いは、あったとしても、シェリル・クロウのように”親密な仲間”くらいではないでしょうか。というか、その線を二人は望んでいるのでしょう。そしてこの出来事の顛末を見て、彼女達に何かを感じた新たな若者達が、今後カントリー・スターとして生まれて来るのでしょう。こうして音楽は交錯し、変化し、転がり続けていくのだと思いますし、それは昔も今も基本的に同じなのだろうと思うのです。
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