ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Justin Townes Earle 「The Good Life」

2008-06-08 | カントリー(男性)

 カントリー・ロックの大物シンガー・ソングライター、スティーブ・アール(Steve Earle)の息子、ジャスティン・タウンズ・アール(Justin Townes Earle)のデビュー・アルバムです。そのミドルネームは、スティーブの友人でフォーク・レジェンドの、タウンズ・バン・ザント(Townes Van Zandt、"Tecumseh Valley"など)から取ったと言うから、ミュージシャンになる事は最初から宿命付けられていたようなもの。父親の音楽や、その若々しくガレージ・ロック・アーティストのような風貌から想像するに、エッジの効いたハードなカントリー・ロックが展開するかと思いきや、これが徹底したクラシックなホンキー・トンク・カントリー・サウンドを基軸とした音になっているのが注目です。

 
 スティーブ・アール

 オープニングの2曲"Hard Livin'""The Good Life"で、早速ど真ん中のクラシック・カントリーを披露し、聴き手を呆気に取ります。その声や、特にツンチャカ・ピアノを隠し味にしたアルバム・タイトル曲"The Good Life"は、あのレフティ・フリゼルの初期50年代作品のイメージと重なるくらいのもの。実はJustinにとってのヒーローは、フォークの父とも言えるウディ・ガスリー(Woody Guthrie)を筆頭に、クラシック・カントリーのレジェンドであるジョージ・ジョーンズ(George Jones)とレイ・プライス(Ray Price)、そして名前の由来となったバン・ザントをあげています。つまりこの、ヴィンテージなフォーク&カントリー志向をそのままアルバムにしてしまたような肌触りなのです。一方、彼の声は、ラフな若さを伴いつつ、かつてのレフティのように甘くクリアーで、なかなかに魅力的です。プリ・ロカビリー的な"What Do You Do When You're Lonesome"もヴィンテージ感溢れる意気の良いナンバー。それは、決して古き良きあの時代の回顧などではなく、戦後期ゴールデン・エイジのカントリーが持っていたむせ返るような生気を、21世紀感覚で今に蘇らせようというパッションに溢れた音です。しかも、これらはJustin自身のペンによる作品なのですから、彼のクラシック・カントリーへの思いが分かろうと言うものです。Justinのフォーク・フレイバー溢れるメロディに、今回のサウンドはビッタシ合っています。CDの収録時間が30分そこそこと今時にしては超短いところもヴィンテージ感タップリです。

 

 一方、フォーク系作品も要所に配されて、オルタナ系ルーツ・ミュージック集として絶妙にバランスを取っています。弾き語りスタイルの簡素なスロー2曲が聴きもので、"Who Am I to Say"では少し荒削りでエモーショナルに、そしてチェロなど弦楽器も挿入されるロンサムな"Turn out My Lights"ではより感傷的に切々と歌いこむJustinが堪能できます。

 

 1982年生まれ、当然幼少期はほとんど父親と会えませんでした。1986年に父Steveはデビューし、ほとんどコンサート・ツアーに明け暮れていたからです。そしてドラッグにも・・・10代の頃のJustinは、ロック・バンドとブルーグラス・ベースのアコースティック・バンドを掛け持ちしており、若くしてロックとルーツ・ミュージックの融合の為のセンスを磨いていきます。さらに父のツアー・バンドにも参加し、Jusitin自ら父のコンサートで自作曲を歌うまでに。しかしそれもつかの間、父同様のドラッグ癖の為にツアー・バンドを解雇されてしまうのです。21歳で病院のお世話になる程でした。しかし、その甲斐あって回復後は音楽と作曲に集中、2007年の終盤に過激なカントリー・レーベルとして知られるBloodshotと契約、この見事にプリミディブなデビュー作をリリースしたのです。今年、グランド・オール・オープリーでもプレイしています。

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