Tammy Cochran 「Where I Am」

　カントリー・フレーバー満ち溢れる貴重な実力派シンガーTammy Cochranが、今年マイナー・レーベルからニュー・アルバムを発表しました。プロデュースは自身もシンガーだったAnita Cochran。プロデュース業やってるのね。Tammyは、２００１年にデビューした当初は結構話題で、その年のFan Fairにおける"If You Can"の熱唱は「Martine McBrideの再来だ！」と、生で聴いた私のカントリーの師匠が熱っぽく語ってくれたのを思い出します。しかし、その素晴らしくダウン・トゥ・アースな南部ヴォイスが最近のカントリー界の空気に合わず、実力に見合わないキャリアをたどっているのが残念なところ。最新作でも、その難しさが感じられます。

　この新作「Where I Am」でのTammyの歌声は、デビュー時と変わらずのびのびとして、パワフルで、カントリー・フレイバーに溢れる美しいもの、一聴して素晴らしいカントリー・ボーカル・アルバムです。しかし贅沢を言ってしまいますと、彼女の実力と持ち味からすると楽曲やバックのサウンドがどこか平凡、予定調和に傾いてるようで、物足りなさを感じるところも。そうは言っても中には、重厚な曲調のスロー"Gone"や、バンジョーがバリバリ響く"The Ride of Your Life" などのTammyが持ち味を発揮している聴き物はちゃんとあります。また、モロ７０年代のファンキー・ソウル風"As Soon as I'm Over You"が意外にハマッテたり。いや、そのハスキーな声からしてTammyがソウル・ミュージックから大きな影響を受けているのは明らかと思います。これに続くカントリー・バラード"In Our House"もしんみりと抑えた曲調が彼女らしい雰囲気です。ただ、ココらの彼女の良さを引き出す作品作りに徹してしまうと、売れないって事になってしまうんでしょう。デビューアルバムが奇跡的に、開き直ってうまく生かしていたのに・・・

　

　２００１年のデビュー作「Tammy Cochran」。Dixie Chicksを手がけていたBlake Chanceyがプロデュース。時代は既にクロスオーバー・カントリーが業界を席捲、彼女のピックアップはChanceyにとっても挑戦で、それはDixie Chicksと共に守り抜いてきたエッジの効いたカントリー・サウンドへの彼のこだわりがあってこそでした。オープニングの、カントリー・シングル・チャートで１８位の中ヒット"I Cry"、コクのあるエレキ＆ドブロ・ギターのアンサンブルとユッタリ貫禄のあるリズム、そしてTammyのコーラスでの雄たけびにまず感激。そして、同様なミディアム曲でこれ以上無いと言う程ヘヴィーな"That Ain't Right"が、特にお気に入りでした。シングルであんまりヒットしなかった"So What"もカッコ良かった。よくぞメジャーなEpicから出したな～と（実際、数回発売が延期されているようです）。もちろんバラードも必殺の"If You Can"を始め充実していて、さすがメジャー・レーベル作だけあってサウンドも良く楽しめます。しかし、こういうアーティストがメジャー・レーベルで活躍し続けられないというのは、とても残念です。

　

　１９７１年、オハイオはAustinburg生まれ。町に住んでいる皆がお互いを知っているという田舎町で、皆いつも微笑んでいてお互い手を振り合うような良い町だったようです。２人の兄を持つ末娘で(従って、Anita Cochranとは姉妹ではございません）、この兄たちが二人とも深刻な病気(繊維症)を抱えていて若くして亡くなっています。この体験が、素晴らしいカントリー・バラード"Angels in Waiting."(唯一のトップ１０ヒット）などの自身の作風に現れていると言われています。子供の頃に親しんだのが、Barbara Mandrell や Loretta Lynn。教会や地元のコンペで歌い続けた後、１９９１年に両親と共にナッシュビルに。当然簡単にレコーディング契約など結べるはずも無く、そのうちに彼女も結婚をして一時夢をあきらめていましたが、しばらくして離婚。再び活動を開始した１９９８年に出版社とソングライターとして契約。その後はあれよあれよという間に、Epic/Sonyとの契約にこぎ付けたのでした。

TammyのMySpaceサイトはコチラ(残念ながら新作の曲はアップされてないようです)→　http://profile.myspace.com/index.cfm?fuseaction=user.viewprofile&friendid=67999082