ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

エリック・チャーチ Eric Church -Heart- & -Soul- 【レビュー】

2021-04-27 | Eric Church エリック・チャーチ レビューまとめ

 

この2月7日に、アメリカNFLスーパーボウルのキックオフで、ジ

ャズミン・サリヴァンと共にアメリカ国歌を歌ったエリック・チャ

ーチ。わが国でも、瞬間風速的に大きな注目を集めたようですが、

その彼が待望の新作2枚を、1週間のインターバルを挟んでリリー

スしました。

 

 

先行してリリースされた「Heart」は、すでにシングル・ヒット済

みの"Stick That in Your Country Song"、"Crazyland"を含む9曲。2

月にアップした先行情報(下方に収録)によると、収録曲が多く

2枚組でも収まらないので、ファン・クラブ限定の「&」にも分け

て、3枚でリリースする事にしたとの説明でしたが、その「&」も

6曲程度なので、一般リリースの2枚に振り分けてくれたらよいのに、

と思ってしまいます。チョッと違和感を感じるリリース形態ではあ

りますね。

 

 

オープニングは、まさに彼らしいアメリカン・ロックの"Heart on

Fire"。この手が好きな身にはストレートにカッコイイと思える、大

人のロック・ナンバーです。続く、"Heart of the Night"は途中でテ

ンポが三拍子に変わる意欲的なナンバーですが、テンポ変速は"Mr.

Misunderstood"でもやってましたね。「Heart」を通じて感じるの

は、2枚前の「Mr. Misunderstood」ほどの濃密度はないけれど、

エリックのこれまでの音楽テクニックや近年取り入れているアメ

リカ南部ルーツのサウンドを、より余裕をもって自分の表現にし

ていることです。「Desperate Man」では一部粗削りな部分もあ

りましたが、ここでは全体的にこなれた感じで聴かせてくれます。

 

 

昨年、リード・シングルとしてリリースされた"Stick That in Your

Country Song"は、「Mr. Misunderstood」以前によく取り組んで

いたアメリカン・ハードとカントリーのミックス。自動車工業が

疲弊したデトロイトや治安の悪いボルチモア、そして帰還兵の苦

難に触れ、゛カントリーソングで取り上げろ/それをNo1にする

んだ/世界中で一緒に歌おう゛と、アメリカが抱える課題に目を

向けるべきと歌われる、アイロニカルなメッセージ・ソングです。

 

 

特に耳に残ったのが、R&B風のミディアム"Never Break Heart"で

す。「Desperate Man」では、結構肩に力が入っていたソウル・

スタイルを、ここではリラックスした感じで歌っています。その

一方で、トラディショナルなカントリー・ストンプ“Bunch Of

Nothing”もやったりで、マルチ・アルバムという空間を生かして、

さらに音楽的テリトリーを広げようとしているようです。

 

 

 

「Heart」と同じく9曲が収録された「Soul」。1枚目に続いてさら

にソウル路線を展開するかと思ったら、ここでキーとなるのは「フ

ァンク」なナンバーでした。オープニングはソフトでクールに幕を

開ける"Rock & Roll Found Me"。゛アンプのスイッチを入れたとた

ん、僕の視界が開けたんだ/ロックン・ロールが僕を見つけたんだよ゛

エリック自身と言うより、アダルトなカントリー・ファンの結構多

くが、ティーン時代にそんな体験をして音楽に目覚めた人が多いの

が現実。そんな人々の若かりし日へのノスタルジーに共鳴するナン

バーです。

 

さらに、「Soul」のハイライトと言えるのが、"Break It Kind of Guy"

と"Bad Mother Trucker"。骨太なビートがウネり、ほぼほぼ1コー

ドで押し通されジャム・セッションのようなファンキーなパフォー

マンスが展開されます。前者はスライ・ストーンとかKC&ザ・サン

シャイン・バンドにトワンギーなカントリー・ギターが絡んだ、っ

てな感じでしょうか。この辺りのバンドとの一体感に、エリックも

大いに充実感を感じたように思います。

 

 

"Bright Side Girl"、" Jenny"では一転、穏やかな生音でバラン

スを取ります。いずれもカントリーというよりフォーキーな雰囲気

で、前者のコード展開は、無難な循環コードが常のカントリーでは

意欲的に聴こえます。アルバムのラストを静かに締めくくる"Lynyrd

Skynyrd Jones"、こちらはカントリー調の弾き語りスタイルです。

”レイナード・スキナード・ジョーンズ/全部で4つのyがある/70年

代に生まれた/"Sweet Home (Alabama)"と"You Got That Right"の間

だ/レイナード・スキナード・ジョーンズ/アラバマのGadsden出身

/生まれてこのかたママがファンだった人達を背負い続けている/

゛私にもう聞かないで゛/゛あなたに嘘はつかないから゛/彼女が彼

に言い続けたことだ/彼女がなくなる日まで゛レイナード・スキナ

ードの曲名や歌詞を巧みに挟みながら、南部の白人層にとってこの

バンドの存在がいかに大きいかを、しみじみと感じさせます。

 

 

さすが、しっかりポップとしてのエンターテイメント性を確保しな

がら、一定以上のクオリティの音楽を提供してくれるエリック。

残念ながらまだ謹慎中のモーガン・ウォレンの大作の穴をしっかり

埋める、カントリー界随一のエンターテイナー渾身の意欲作だと思

います。

 

 

【以下は、2021年2月6日アップの、リリース情報紹介記事です】

 

 

2020年のCMAアワードで、遂にエンターテイナー賞受賞!という

頂点を極めたエリック・チャーチですが、「Desperate Man」

続く新作リリース予定を、先月ファンクラブChurch Choir向けに

発表しました。なんと、3枚連続リリースのビッグ・プロジェク

トの様です。ライブ・ツアーが出来ない分、アーティスト達は

スタジオ・レコ―ディングに力を注いでいるのです。

 

"Stick That In Your Country Song"

 

それぞれのタイトルは、「Heart」「&」「Soul」と、とてもシン

プルなもの。ただ、6曲入りの「&」だけは、ファンクラブ限定リ

リースになるのだそう。一般のファンにはチョッと複雑ですね。

リリース予定は以下の通りです。

 

「Heart」    4月16日

・「&」    4月20日

・「Soul」   4月23日

 

“Hell Of A View” 

 

エリックの弁によると、今回のアルバムは、ノース・カロライナの

山中に28日間籠った成果だとの事です。彼は言います。゛部屋の中

でマジックが起こって曲が生まれる時、僕はいつも陰謀を企ててい

るような気になったよ。毎日、朝に曲を書き、夜にレコーディング

するのさ、そうする事でソングライターはレコーディングのプロセ

スにのめり込み、ミュージシャン達を巻き込んでいくんだ。チョッ

と特別な事を秘密裏に進めているような気分だったよ。「世界が

れを知るまで、フ~ム、待っててくれ」てな感じさ゛

 

"Through My Ray-Bans"

 

さらに3枚に分けた事についても語っています。゛「神様、これは

本当にキツイよ。たくさんの曲がある。2枚組アルバムにする?そ

うだとすると、5、6曲をどうやってお蔵入りにするんだ?」僕は、

レコードに入れる曲を選定する時は最も厳しい批評家だよ。でも、

これは僕たちが最高の状態で、特別な、特別な時間を過ごした特別

な、特別なプロジェクトだったんだよ゛

 

"Doing Life With Me"

 

で、2枚半と言えるような変則スタイルになったんですね。エリッ

クの音楽への熱い気持ちが分かる、いい話です。あと、久しぶり

に、サングラスを掛けない姿を見せている事も、気になります。

彼ならではのシャープなキレのある音世界を展開してくれそう

で、いつもながら楽しみです。

 



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