リリースは1年以上前なのですが、今年3月にデビュー曲となるタ
イトル曲"Good Time"がビルボード・カントリーのエアプレイとシ
ングル両方で1位を獲得し、ホット100でも20位まで到達する(4月
3日付けでは49位)というスマッシュ・ヒットで注目を浴びている
ニコ・ムーンのEPです。この人、ザック・ブラウン・バンドのソン
グライターとして名前はよく見かけていましたが、満を持してアー
ティスト活動に乗り出したわけです。
プロフィールです。ザック・ブラウンの曲でのクレジットも最初
名乗っていた、Nicholas(Nic) Cowanが本名で、テキサスで生ま
れましたが、10才の頃にジョージア州に引っ越しています。お父
さんはトラック・ドライバーでしたが、ツアー・バンドのドラマ
ーに誘われるほどのミュージシャンでした。なので当然音楽には
早くからのめり込み、ジョン・プラインやパティ・グリフィンら
のフォーク~アメリカーナ系がお気に入りだったようです。高校
生の頃は花形ランナーで、そのおかげでアラバマ州のスタンフォ
ード大学に入学しますが、音楽への情熱がまさり退学・アトラン
タに向かうのです。
やがて、その地で活動していたザック・ブラウンと運命の出会いを
果たします。二人は曲を書き始め、ザック・ブラウン・バンドのセ
カンド「You Get What You Give」での"Colder Weather"や"Keep
Me in Mind"辺りからNic Cowanのクレジットが見られるようにな
ります。その後ザックは、エレクリックなダンス音楽に興味を持
ち始め、ニコらを誘って(悪名高き?) Sir Roseveltを結成、2017
年の暮れにアルバムをリリースします。ニコが自分の活動を始め
る時期だと判断したのは、その後でした。RCAナッシュビルと契
約を結び、2019年に"Drunk Over You"と"Good Time"を発表。 前
者は130万回、後者にいたっては210万回のストリーミング再生を
稼ぎ、幸先のよいスタートを切ったのでした。
ポップ・カントリーで最近当たり前に聴かれるデジタル・ビート
には、正直ビミョーな印象を持ってきたのですが、あろうことか
それをさらに前面に押し出し、ポップで流行りのサブベース(重
低音のベースのことらしいです)をウネらせて、そこにオーガニ
ックなカントリーの(サンプリングされた)生サウンドを乗せる
という音創りには、結構ハマってしまいました。"Good Time"を
含む5曲は心地いいミディアム・テンポで押し通され、永年ソング
ライターとして培った馴染みよいメロディーと相俟って、結構病
みつきになりました。まさにクールなカントリー。バンジョーも
しっかり鳴ってるので、トラディショナリストに文句は言わせな
い、と言ったところでしょうか。
EPには入ってない新曲です。ハードなギターが入ります
ザック・ブラウンがSir Roseveltの前後からエレクトリックなダン
ス・サウンドに浸りだした頃、この上記のようにニコの名前が語
られたことから、ザックを妙な方向に導いた張本人かしら、など
と思ったりしてましたが、こうしてニコ単独の、デジタルでカン
トリーの真髄を表現しようとした音楽を聴くと、あれはザック自
身が突っ走った結果だったのだろうと思えてきます。ニコのこの
画期的なEP、5曲のスペースで徹底してワン&オンリーのスタイル
を世に問いましたが、さらにこの後やアルバムとなった時、どの
ようにこのオリジナル性の幅を拡げていくのか。楽しみに見守り
たいと思います。
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