今年、テキサスのローカル・シーンで興味深いと感じたアーティストをいくつか取り上げましたが、個人的に一番気に入ったシンガー・ソングライターがこのカーティス・グライムスです。今年前半に、本作にも収録された"Friends"がテキサスでナンバー1になり、そのウォーム&テンダーな歌声に惹きつけられました。器用さや艶やかさは控えめなものの、とても誠実なイメージで、正真正銘のカントリー・シンガーだと思います。最近も"Noah Built a Boat"をテキサス・チャートの上位に食い込ませています。
プロフィールです。1986年テキサス州 Gilmer生まれ。高校生の頃は野球でピッチャーとして活躍し、チームを州大会で優勝に導くほどでした。また、文武両道だった彼は、奨学金を得てルイジアナ州のセンテナリー・カレッジに進みますが、婚約者との別れがきっかけとなり、その心を落ち着ける過程の中でギターを手にするようになりました。テキサス州立大学サンマルコ校で勉学を再開した彼は地元のバーや学生パーティーで歌声を披露するようになります。そして、あるコンテストで優勝した事がきっかけとなり、ケニー・チェズニーのオープニング・アクトに抜擢された事で、いよいよ音楽で生きる道を選ぶのです。
2009年にファースト・アルバム「Lonely River」を自主制作した後に大きな転機が訪れます。2011年に全米の人気TV番組「The Voice」の出場権を獲得し、ブレイク・シェルトンのヒット曲「Hillbilly Bone」でオーディションを受けたのです。丁度、審査員だったブレイク・シェルトンはどういうわけか興味を示しませんでしたが、R&Bアーティストのシーロー・グリーンがカーティスの声に感銘を受け、コーチを買って出ました。そのおかげもあり、カーティスは準々決勝まで進み、全米で8週間の露出を経験できたのです。知名度を上げた彼は、同年にEP「Doin' My Time」をリリースし、ツアーを通じて着実に存在感を確かにしていきます。アルバムはその後、2014年の「Our Side of the Fence」、2016年「Undeniably Country」とリリースしてきました。
10曲収録の本作では、フィドルやスティール・ギターが要所で味わえる、いわゆるホンキー・トンク・スタイルを今流に仕立てたカントリーミュージックが堪能できます。ほとんどの曲でカーティスもライターとしてクレジットされる楽曲も、この手の音楽が好きな身には粒ぞろいに感じます。ライターには、2000年代にトラディショナルな個性でメインストリーム界で活躍したトレント・ウィルモン(Trent Willmon)の名も見られ、こういう人材が今もテキサスで活躍している事を心強く思います。曲想は、カーティスの声が映えるミディアムからスロー曲で占められ、結構今風の重厚なアンサンブルでじっくり聴かせてくれますが、"Cowboy Constitution"や"Ain't Worth The Heartache"のようなカントリー・バラードが特に素晴らしいです。
このアルバムがリリースされる前は、2020年にリリースされていたEP「Acoustic Collection」をよく聴いていました。上記の"Cowboy Constitution"や"Ain't Worth The Heartache"がアコースティックなアレンジで歌われていて、よりカーティスの声にフォーカスして聴くことができます。メインストリームで活躍する事はないでしょうが、今後もフォローしていきたいアーティストです。
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